表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/93

第91話 魔王、本気をだす

切り裂かれた重力球は、重力崩壊をしながら消滅した。

リリアの片眉がピクリと跳ねた。


「カカッ! なんじゃ。やるではないか」


リリアの目前に小ぶりの重力球がいくつも生まれる。

小型重力球36連発砲マイクログラヴィティキャノン』必殺の重力制御魔法が火を噴いた!

小型重力球1発がトロール10体のタックルに等しい衝撃力を持つ。

それが36連発である!


『我は魔王ォォォォォォ!』


魔王は目にも止まらぬ速さで長剣をぐるりと振るい、全ての重力球を弾き飛ばした。

360体のトロールを同時に斬り捨てるに等しい。

なんというバケモノじみた業前か。


しかし、見よ!

その白銀の輝きを放つ長剣の刃を。

飛び散る光の欠片を。


刃こぼれである!


ニヤリととびっきり邪悪な笑顔を浮かべ、


「なまくらでワシの重力球を斬るとは、褒めてやろう」


リリアは一直線に距離を詰める。

滅紫色の魔力の光が右手に収束していく。

魔法陣が4枚。

先ほどと変わらず、長剣を狙って(、、、、、、)重力球を放った。


「じゃが、ワシに勝てると本気で思っておるのか? じゃとすれば、思い上がりも甚だしいぞ。使い魔(オランジェット)!」


リリアは魔王の間合いに飛び込んだ。

右手には漆黒の刃。

ダンジョンすら切り崩せる、重力球で生み出した虚無の剣。


『我が排除する! 魔王失格のおぬしをGRRRRRR!』


吠える魔王。

刃がぶつかり合い、魔力同士の干渉で閃光が生まれた。

そして、長剣が砕けた。


『AGH!』


魔王はよろめき、無防備な胴をリリアの前にさらしたのだ!

なんと大きな隙か!

そして、リリアはその隙を逃すわけがない。


「笑止! 魔王に向かって魔王を排除するなどと!」


リリアは重力球を叩き込む。

爆音と共に黄金鎧が円形に陥没!

しかし、ぶくぶくと表面が泡立ち、すぐに元通りとなる。

魔王は後ろへと滑るかのように大きく下がると、


『滅びよ! リリアーヌ!』


魔王の髑髏めいた兜の、顎部分が上下にスライド!

覗く深淵から、赤い魔力の奔流が迸る。


超濃縮魔力変換熱線砲ビィィィィィィィィィィィィィィィム!』


リリアは右手に残していた虚無の剣を握りつぶした。

重力崩壊の衝撃波が伝播!

赤光の軌道が大きくずれ、雲を消し、空を焼いた。

空が赤く光る。

雨あられと赤光が降り注ぐ!


リリアは重力障壁を頭上に展開し、全てを超重力の闇で飲み込んで防ぎきる。


『我はおぬしを滅ぼして、新しき真の魔王となるのだ! 勇者にも勝てるほどに!』


再び魔王の髑髏めいた兜がスライドし、赤い魔力の光線を放つ。


「なぜそこで勇者が出てくる?」


眉を寄せつつ、リリアは腰を落とすと重力障壁を生成した!

普段よりもなお強力な障壁を!

しかし、その重力障壁が力を発揮することはなかった。

熱線は直前で軌道を変えて、重力障壁を躱したのだ!

リリアは舌打ち。


――どうする?


思考は一瞬。

距離を詰めるのではなく、大きく迂回するようにリリアは駆けた。

なんと恐るべきことに、追尾する熱線が突如として数十に分かれたのだ。

そして、それら全てが幾何学的動きをしながらリリアを追う。


「厄介じゃ!」


両手に重力球を生み出したリリアは、重力制御魔法によりさらに加速する!

まるで金色のつむじ風!

瞬き1回分の合間に、再びリリアは魔王の懐に飛び込んだ。

超至近距離から、またもや重力球が黄金鎧を打った。


『AGRHHHHHHHH!』


今度は陥没だけではなく全身にヒビが走る。

兜の天辺から足の先までだ。


リリアは地面を蹴って跳躍。

ボルトめいた速度で魔王から離脱する。

そこへ数十もの熱線が着弾し――


BTOOOOM!!!


土煙と白煙がもうもうと巻き起こる。


「けほっ、けほっ。我ながら無茶したのぅ」


土埃を払い、リリアは目を細めた。

煙の向こうに影が浮かんだのだ。

魔王は健在。しかし、身体が崩れている。

腕はもげ、各部の装飾がぼろぼろと剥がれ落ちている。


「元は不定形の貴様とはいえ、そのダメージではつらかろう」


だが、まだ魔王は倒れぬ。

両の眼孔に赤い光が灯った。


『AGRHHHHHHHH!』


獣めいた咆哮!

魔王の体内で魔力の異常循環が始まる。

体細胞が増殖し、崩れた箇所が元に戻ってゆく。


「なんじゃ?」


さすがのリリアも超自然的現象を前に訝しむ。

さらにゴーレムの残骸が次々と発光、魔王の下へと光が飛んでいく。


「この光……ゴーレムの魔力、ワシの魔力を吸い取るつもりか!」


魔王はゴーレムの残骸から魔力を吸収していく。

200年前に注入したリリアの魔力を、その一滴まで啜り取っているのだ。

リリアは舌打ちする。


魔力吸収(ギガドレイン)じゃと。どうりで言動がワシに近いものになっておるわけじゃ。貴様、ワシの魔力を循環させて自分のものにしたな?」


リリアの使い魔は、元はアメーバやスライムのような不定形の生き物である。

増減する己の体細胞内で魔力を循環させることにより、無限にも近い魔力上昇能力を得たのだ。

そして元本はリリアの魔力である。

使い魔という性質もあって、自分の意思を塗りつぶしてしまうほどに影響されていったのだ。

それこそ、自分が魔王にならねばと妄信し、狂うほどに!


『コワイコワイコワイ! 勇者……我が魔王なら! 魔王ナラ!』


黄金鎧の身体が崩れていき、どんどん大きな泡立ちが生まれていく。

魔王が、本来の使い魔(オランジェット)の姿に戻ろうとしているのだ。

リリアは腰を落とし、ファイティングポーズをとった。


「魔力狂いの使い魔(オランジェット)め。勇者に怯え、恐れ、そして恐怖に飲まれて逃げた結果――堕ちるところまで堕ちたようじゃのっ!」


リリアが重力球を生み出す間もなく、魔王は本来の不定形たる姿へと戻った。

髑髏めいた兜が、表面に浮かび上がる。


『我ハ魔王なり』


世界が震えたような、違和感。

急激に魔力が膨れ上がる。

リリアが重力障壁を展開するよりも早く――



閃光が弾けた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ