表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/93

第78話 魔王、同業者と会う

「ワシがこの時代に作る、新しき魔王軍に入らぬか?」


リリアが本題を切り出したその時であった!


「殿にお客ですワン」


コボルト(ポメラニアン)が三度応接間へと入ってきたのだ。

その後ろには黒い板金鎧を着こみ、さながら重戦車めいた戦士が立っていた。

顔の半分を覆う改造兜を付け、自身の背丈よりも長大なメイスを背負っている。

なんと物騒な装いか。


「また客か! だから通す前に通していいか確認をしろとあれほど」

「すまないが、私が通すよう強引に頼んだのだ」


重戦車めいた戦士が静かに言う。

威圧感のある不吉な声だ。

リリアは眉根を寄せ、レイダーと視線を交えた。

なぜならこの不穏な戦士からもまた、混沌の神々の気配を感じたからだ。


(まさかこやつも魔族?)


リリアは口には出さず、様子を覗う。

戦士はバヤリスを上から下まで観察するかのように見た後、ずかずかと彼の目前まで進み出る。

未だリリアと会話中だというのに割り込みをし、決断的に無視したのだ。

実に失礼だ。


「私は魔王八卦衆が1人、名をヌガーと申す。魔王陛下の命により、お前を我らの傘下に加えに来た。なお、これは要請ではなく命令だ。拒否は認めん」

「魔王の傘下……だと?」


バヤリスは困惑する。

なぜなら、つい先ほど同じような内容の話を聞いたからだ。


「姫様、少しよろしいですか?」


蚊帳の外状態のレイダーが小声で言う。


「なんじゃ?」


リリアは、スナックめいた茶菓子へ伸ばした手を止めた。


「いつの間に魔王八卦衆などというものを組織したのですか?」

「ワシが知りたい。おぬしのほうこそ、ワシの名を使って勝手に組織したのでは?」

「姫様がいるのに、わざわざ俺が出ることもない」

「じゃろうな」


皆までは言うまい。

リリアとレイダーが小声で言葉を交わす合間にも、魔王八卦衆ヌガーはバヤリスに詰める。


「さあ返答は如何に?」


有無を言わせぬ圧迫具合だ。

だが、バヤリスも魔族である。多少の圧で怯むような男ではなかった。


「そもそも魔王八卦衆ってなんだよ。俺、そんなもの知らないぞ?」


聞き慣れない単語にバヤリスは訝しむ。

悪質なキャッチセールではないかと思ったのだ。

ヌガーは露骨なまでに、馬鹿にしたような表情を浮かべる。


「なんと無礼な! いいか、甦った魔王陛下のもと、魔王軍は再組織されたのだ!」


リリアはスナックめいた茶菓子へと伸ばした手を止めた。

初耳である。

再組織の最中だと思っていたら、もう完成していたらしい。


「姫様、知らぬ間におめでとうございます」

「ありがとう。じゃが、軍と呼べるほど戦力はないぞ」

「でしょうね」


この状況をどこか楽しんでいる節さえある。

一方で口調とは裏腹に、レイダーは内心憤慨していた。

リリア以外の者が軍を興すなどあってはならない。

それが魔王を騙るならばなおさらだ。


――どこの馬の骨とも知らぬ輩に、俺の計画を狂わせてなるものか!


ボロ布の先端が、レイダーの感情に合わせて薄く光り始めた。

そんなことは知らず、ヌガーは両手を広げ、大仰な態度で言う。


「だが、陛下はまだ万全ではない。よって陛下を補佐するのが、我ら最高幹部たる八卦衆なのだ!」

「ご高説アリガトウゴザイマス」

「うむ。お前も魔族ならば、魔王陛下のもとに集うのは当然の話! コボルトどもを率いて我らが戦列に加われッ!」


終始威圧的な話し方である。

とてもじゃないが、勧誘しに来た者のそれではない。

バヤリスは無言で椅子から立ち上がった。

そして、机をぐるりと回って、魔王八卦衆ヌガーの前にわざわざ立つ。


見よ! その鍛えられた肉体を!

バヤリスはウサギマスクと下着以外、何も身に着けていないのだ!

レイダーはリリアの顔を両手で挟むと、強制的に別の方向へ背けた。


「姫様。教育上よろしくないので、コボルトの方を向いていてください」

「ワシ、そんなのを気にする歳じゃないんじゃが……」


バヤリスは正面からヌガーを見据える。

雰囲気で自ずと、彼が何を言おうとしているのかが読めてしまう。


「やだよ。俺はここでスローライフするんだし。悪いがお姫様、貴女の誘いも断らせてもらう」


リリアはワザとらしく肩をすくめてみせた。

去る者は追わずというのが、リリアの魔王軍勧誘のモットーなのだ。

だが、魔王八卦衆ヌガーはそうはいかない。


「我らが軍門に下らぬと?」

「お断りだね」

「そうか」


突如としてヌガーは背負っていたメイスを抜き、振るう!

一振るいしただけで暴風めいた風圧が応接間に吹き荒れ、石造りの壁が粉砕された。

外の湿った空気が流れ込む。

スナックめいた茶菓子が盛大にひっくり返る。


「な、なにィ⁉」


バヤリスはメイスの一撃を、ブリッジして紙一重で躱した。

並みの人間あるいは魔族なら直撃し、凄惨な結果となっていただろう。

今の回避は、バヤリスが全裸に近い状態だからできた芸当なのだ。

さすがのリリアとレイダーも突然の出来事に驚いたようだ。

2人してコップを掴んで、腰をやや浮かせている。


「待て! いきなり襲い掛かるとはどういう了見だ⁉」


回避したバヤリス本人はもっと驚愕していた。

ヌガーはメイスを構え直す。そこに油断は見受けられない。


「不確定要素は排除する。これも魔王陛下のご命令だ。悪く思うな!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ