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第75話 魔王、仕方なく応戦する

これまでのあらすじ。

小都市セムラ付近の森を根城にし、魔族を首領とする暗黒殺戮盗賊集団『キルズヘルドッグ』。

彼らが次なるターゲットに選んだのは金髪の少女であった。


そう――フードマントを羽織った金髪の少女であった。


「身代金。そしてファックだ。貰うもん貰って飽きたら殺す。最高にクールだと思わねえか?」


首領は戦利品の女の1人を強引に引き寄せる。

大胆に胸を揉みしだきながら首領の口から出てきたのは、なんと下品かつ極悪な考えか。

まともな精神性を持つ人間では到底考えられないことだ。


「オラァ! お前ら、仕事の時間だ! ガキ臭ぇが上玉の女だ、殺すなよ! 無傷で捕まえろ!」


盗賊たちは我先にと茂みから飛び出ていく。

そしてあっという間に少女を囲んでしまった。


逃げ道はない!


このまま少女も戦利品めいた慰め物として、アジトへ連れて帰られてしまうのだろうか。


「なんじゃ、三下どもか。驚かせるでないわ」


少女はあからさまに鬱陶しそうに言う。

今の言葉に一切の恐怖は存在しない!


「嬢ちゃん、口の利き方に気を付けたほうがいいぜ」

「つれないなァ。可愛がってあげようか?」

「エェ?」


これ見よがしに剣やこん棒を見せながら、盗賊たちは卑しく笑う。

そして舐めるように少女を上から下まで品定めだ。


「ワシはおぬしらの頭目に用がある。怪我をしたくなければ、三下はさっさと失せるがよい」


重ねて少女は要求する。

さすがに首領は訝しんだ。

少女の周辺には妙な魔力の揺らぎがある。

どうやら、ただの旅の少女というわけではなさそうだ。

グレートヘルムの下で唇が歪んだ。


「左手に魔法の発動体らしき指輪……おそらく魔法使い。大方、自分の腕を勘違いしてやって来た阿呆か……それとも」


首領は残った手下に女を預けると、魔法攻撃ができる位置へと移動する。

今、少女を囲む手下は捨て駒だ。

減ろうがどうなろうが痛くもかゆくもない。

手下を倒すなりなんなりして、気が緩んだところに本命の一撃だ。

すなわち麻痺毒を矢尻に塗った手下との一斉攻撃。


だが、その前に少し遊んでもいいだろう。


「我が領地に踏み入るとは勇敢な小娘だな」


少女の眉がピクリと跳ねた。

姿の見えない首領の声に警戒しているようにも見える。


「おぬしが自分を魔族と思い込んだ首領かや。隠れてないで出てきたらどうじゃ?」

「バカか? 手下を仕掛けたくせに、ハイそーですかとでてくるやつがいるか」

「怖くて出て来れんか。情けない奴め」

「大将は座して動かんものよ」

「猿山の大将がそれを言うかや?」


少女の言動は実に偉そうである。

露骨に馬鹿にされた手下たちが包囲の輪を縮めた。

額に青筋が浮かんでいる。


「ワッザファック!」

「メスガキが……威勢だけは良いな。だが、その態度、いつまで続くかなあ?」

「うちのボスは魔族なんだぜ」


手下たちは口々に威圧的な言葉を吐く。

しかし、少女の表情は依然変わらず。

むしろ若干呆れたような様相まで伺える。


「はぁ……だいたいわかった。おぬしらの口ぶりでだいたいわかった」


その時であった!


少女の小さな手のひらに、超自然的漆黒の球体が生まれた。

手下たちは不審そうにそれを見る。

一方で首領はグレートヘルムの下で目を見開いていた。

魔法使いだからこそ、魔力の扱いに長けたものだからこそわかる。


少女の周りに渦巻く尋常ではないほど濃密な魔力を――


「お、お前ら!」


首領は慌てて声を上げるも、手下たちはそれを号令と勘違いする。


「かかれぇい!」

「うおおおおおッ!」


一斉に飛び掛かる盗賊たち。


「もう一度言う。おぬしらに用はないのじゃ。ワシの言葉が理解できるかや?」


しかし、少女は動じることなく漆黒の球体を、高密度の重力球を地面に叩きつけた。



瞬間、世界が白黒に反転した。



重力崩壊による衝撃波が荒れ狂い、盗賊たちが吹き飛ばされ、木々が根元から抉れ、地面が割れた。

遅れて超自然的炸裂音が生じる。



BOOOOOOM!!!



少女のフードが風に煽られ、めくれ上がる。

押し込んでいた金色の髪が流れる。


少女は挑発めいた笑みを浮かべて辺りを見渡した。

天地がひっくり返り、緑が失せ、露出した地面。

そして、手足をあらぬ方向に曲げてぴくりとも動かぬ盗賊たち。

全滅である。


「カカッ! 口ほどにもない。自称魔族の手勢とはこの程度か」


涼しい顔をして少女は快活に笑う。

一体何が起こったのか首領には理解できなかった。

恐るべき量の魔力が一瞬現れ、消滅した。

次の瞬間には森が更地になっていた。


「な……何がどうなってやがる……」


首領は気付いていない。

自分の手が小刻みに震えていることを。


「射れ! 射れ!」


首領は慌てて命令を飛ばす。

生き残った弓兵が姿を現し、弓を引き絞る。

矢が放たれるよりも早く、少女は小さな重力球を四方に放った。

弓兵は全滅!

一連の戦闘はまるでライオンに弄ばれるウサギのよう。

話にならない。


少女が、視線をゆっくりと動かす。


首領は、息を呑んだ。


――目が合った。


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