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第68話 魔王、新たな依頼を受ける

焚き木がパチパチと爆ぜる。

食い散らかした鼠の骨を炎の中に放り込みながら、アマンは薄ら笑いを浮かべた。


「悪くない取引だと思うけどなァ」


過去の採掘者が使っていたと思しき、べこべこに凹んだ鉄のコップ。

ピッケルの端に引っかけると火にかけた。

じゃぷじゃぷと水が揺れる音がする。


「大モグラ……大モグラごときをかや?」


大モグラとは全高1メートルくらいのモグラのモンスターだ。

手製のピッケルやスコップを武器に、洞窟やこういった坑道跡によく出没する。

混沌の神々の祝福を受けていないため、魔族の言うことは聞かない困ったやつらだ。

リリアは痛めつけることで坑道を掘らせたのだが……今それは関係ない。


逆に困惑したようにリリアはプラムを見た。

女ドワーフは話を振るなと言わんばかりに、レイダーの背に隠れる。

リリアは眉間にしわを寄せた。


「おい、依頼主よ。隠れるでない。場合によってはおぬしの依頼より優先せねばならんのだぞ」

「いやー……そないなこと言われても……」


プラムは一瞬だけ悩むようなそぶりを見せると、


「ええんとちゃう? 別にあたしとしちゃ、この魔族がいなくなればええし……」

「ドワーフにしては話が分かるねェ……ニシシ。ありがたい」


アマンは白い湯気を上げているコップを取った。

口を付けるとうまそうに喉を鳴らしている。


「じゃあ、取引成立ってことでOKかい?」


リリアの頭の奥がちりちりと痛む。

なんだかアマンの手中で転がされているかのような違和感を覚えたのだ。

何かある。

しかし、それを明かしていない。危険だ。


「レイダー、おぬしはどう思う?」


話を振られたレイダーは淡々と述べた。


「別に構わないぞ。所詮、害獣駆除だろう?」


意外。まさかレイダーが頷くとは。


――考えすぎだったか?


リリアは再びアマンのことを見た。

彼はへらへらと笑っている。中身を飲み干したコップをその場に置くと、立ち上がる。


「ま、詳しい話は道中で話そうや」

「道中?」

「そ。善は急げってあるだろ? ニシシ……早速モグラ退治と行こうじゃないの」


アマンは手際よく焚火を消すと、食器類を1ヶ所に固めた。

洗うという発想はどうやらないらしい。

それを眺めるリリアの表情は険しい。

急に肩を叩かれた。


「姫様、ご安心を」


レイダーだ。


「あいつからは特に悪意や邪悪な気配を感じない。安心はできんが……積極的に危害を加えるタイプじゃない」


ハッとしてすれ違うレイダーの背を見止めた。

ようやく気が付いた。

サージェントのせいだろうか。

魔族の王であるはずの自分が、魔族に対して疑り深くなっているということに。



◆◆◆



穴倉のアマンを加えて、リリア一行はさらに奥深くへと潜った。

奥に行けば行くほど、坑道の環境はさらに悪くなる。

先ほどまでは最低限、天井は木枠により補強されていた。

しかし、今リリアが見上げればそこには土の天井。

時折ぱらぱらと土が落ちる。


「こんな適当な掘り方はしとらんぞ」


土を払うリリアの声音は固い。


「ニシシ……ここは昔、町から来た鉱夫が掘った穴だねェ。大丈夫、そうそうくずれないって」


対照的にアマンは軽薄な口調だ。

4人に増えたパーティーで、先頭を行くのはリリアとアマン。その後ろにレイダーとプラムが続く。

アマンが先頭なのは道案内という意味が大きい。

そして隣にリリアがいるのは、何かあったときにこの魔族を手早く始末するためである。


「そう怖がらなくていいって。何年ここで暮らしてると思ってるんだい?」


バカにされた気がして、リリアはムスッとした顔をする。

言動がいちいち鼻につく男だ。

話すときに手遊びも多く、口数の割にはうるさく思える。


「で、おぬしはなぜ大モグラごときで助けを求める。魔族ならばモグラの1匹や2匹、容易いじゃろうて」


アマンを道化めいて首をすぼめた。

両手を限界まで広げると(ポンチョの下はあからさまに何も着ていないのである)


「ここに住み着いた大モグラのボスがねェ、とにかくデカいんだ」

「はっ⁉」

「立てばたぶん3メートルくらいかなァ」


今いる坑道の天井よりも巨大である。

大モグラのレベルを優に超えている。


「子分もたくさん引き連れていてねェ。とにかく厄介なんだ」

「聞いとらんぞ」


リリアはジト目で見た。アマンは気にする素振りもない。


「だから言っただろ。道中で話すって」


故意犯である。


「さっきのピッケルはもしや」

「そ。そのボス大モグラから奪い取ったピッケルさ。おかげで俺はここら辺の大モグラから病的なまでに狙われていてね」


アマンは不意に言葉を切った。その歩みも止まる。

リリアもそれにならい、坑道の奥へと目を凝らす。

前方数メートル先の地面が、不自然に盛り上がっている。


「おっと出迎えかなァ」


瞬間、地面が爆ぜた!

飛び出す黒い影あり。

突如として現れたのは全高1メートルほどのモグラだ。

二足歩行し、手には手製のピッケルを装備している。

大モグラである!


「ええい、話をすればなんとやらか!」


リリアの指先に超自然的な漆黒の重力球が生まれる。

その大きさは小石ほど。

それでもモグラを殺すには十分すぎる威力が出せる。

が、

さらに地面が爆ぜる音!

なんと後ろにも大モグラの一団が現れたのである!


「挟まれたねェ……ニシシ」


まったく緊張感の無いアマンの薄笑いが響いた。


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