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土地神だけど村から追い出されたので魔王に復帰します。  作者: キツネカレー
第3章 突入、カヌレ大ダンジョン
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第37話 魔王、出迎えを受ける

 リリアは最初に(たち)の悪い冗談ではないかと思った。

 そして、こんな冗談を言ってくる輩は、とても性根が曲がっているのだろうとも思った。


 丈の短い草が一面に広がる。

 生温かい風が通り抜け、青々とした細波を作る。

 天井から(、、、、)だらりと垂れ下がるロープがつられて揺れ動く。

 魔法の明かりは意味をなさず、足元を薄く照らすだけ。

 これは夢か現実か。

 リリアは辺りを見渡し、嘆息した。


「どうして地面の下に草原があるのじゃ?」


 ダンジョンの地盤を穿ってみれば、異様な空間へと迷い込んでしまった。

 一面に広がる草原は地平線が見えるほど。


「さっきまで洞窟めいたダンジョンじゃったはずじゃが」


 そうリリアは言うが、ここは紛れもなくカヌレ大ダンジョン地下2階。

 疑似的な太陽の光が降り注ぐ超自然的空間であった。

 そもそも大ダンジョンは混沌の神々が作り、古のダンジョンコアが支配する超空間だ。

 洞窟的なフロアの下に草原エリアがあったとして、何もおかしくはないのだ。


「ダンジョンは超時空地下要塞だ。常識で物事を考えてはいけない。差し詰めここは草原ゾーンだ」


 天井を貫く孔から最後に降りてきたレイダーが言う。周囲を警戒しつつ、彼の視線は鋭い。

 彼が警戒するのはモンスターだけではない。人も警戒対象だ。

 ダンジョン破壊は器物損壊罪に当たるからだ。


「うん。ここはこのままぐるぐると、らせんみたいに地下3階まで続いているの」


 一足先に降り立っていたショコラは、半ば諦めの表情を浮かべている。

 螺旋(らせん)状になっているとすれば、先ほどのように地面をくり抜くのはできまい。

 その分時間がかかるのは避けられない。

 リリアは鼻の頭にしわを寄せて地平線を睨んだ。

 そして、眉根を寄せた。

 ……何か見える。


 突如として咆哮が聞こえた。

 リリアたちに緊張が走る。

 いったい何事か⁉


 真っ先にショコラが咆哮の主を視界に捉えた。

 こちらへ向かって巨大な影が、土煙を上げて猛然と突進してくるのだ。

 速い! 馬並みの速度だ。

 近づく影は3つ。

 牛ほどもある体躯(たいく)。巨大な二対の牙。短い脚に寸胴の体型。

 それは巨大なイノシシのモンスター!


魔猪(ワイルドボア)だ!」


 すぐさまショコラは短弓に矢をつがえた。

 大きいけれど所詮は浅い階層のモンスターだ。

 矢で射れば死ぬ。

 そして、矢の射程に入るよりも早く、リリアが重力球を放った。

 魔法陣をくぐり抜けて加速した重力球は、狙い違わず魔猪(ワイルドボア)に着弾。

 破砕音と共に首が180度上を向いて魔猪(ワイルドボア)は死亡する。


 巨体が横倒しになった。

 それで終わりではない。

 なんと重力球が2つに弾けたではないか!

 分裂、跳弾した重力球はそれぞれ左右の魔猪(ワイルドボア)に直撃。

 その首を360度ねじ切って即死させる。


 呆気なく襲撃は終わった。

 ショコラはつがえた矢を矢筒へと戻した。

 そして、得意げな顔で胸を張るリリアに向かって言う。


「インチキ魔法だ!」



◆◆◆


 1時間が過ぎた。

 後ろには草原。前には石造りの迷宮が待ち構えていた。


「差がありすぎじゃな……」


 いくら常識が通用しないとはいえ、リリアは肩をすくめた。

 うすら寒い冷気が石畳の床を這う。

 今度は地面をくり抜くことなく進んだリリアたちは、ダンジョン地下3階と4階の境目に達していた。


「じゃが、ダンジョンらしいと言えばダンジョンらしい様相じゃな」


 リリアは石造りの迷宮へ足を踏み入れる。

 横に3人並ぶのが精一杯な幅の通路は、あからさまに人の手が加わっている。

 壁には一定の間隔で燭台(しょくだい)があり、さらに見える範囲だけでも扉がいくつかある。


「うん。上の階は正直あんまりおいしくない。ここからが一番お金になるよ」


 リリアが生み出した魔力の明かりを伴い、脇を抜けてショコラがパーティーの先頭に立つ。

 ここは斥候冒険者として本領発揮するエリアなのだ。


「たまーに、たまーにだけどまだ漁られていない部屋を見つけることがあるの。誰も手を付けていないからお宝いっぱい」

「ほぅ。財宝かや。意地汚い神々のことじゃ。さぞ、溜め込んでいるに違いないのぅ」

「うん。あたしも1回見つけたことあるけど、魔石がいっぱいあったよ!」


 その時を思い返しているのか、声のトーンが上がった。

 ちなみに魔石とは魔法の触媒である。高い。


「だからそのインチキ魔法は禁止ね! 扉を壊すと中のお宝まで壊れちゃう」

「ショコラ、さすがに姫様に向かってインチキ魔法とは如何なものか」


 すかさずレイダーが割って入る。

 だが、リリアは気にする素振りも無く手で制する。


「インチキ魔法とはよく言ったものじゃ。安心せい、扉を重力球で砕いたりせん」

「ほんとぉ?」


 ショコラはジト目である。

 この獣人、疑い深い。


「ほんとじゃほんと」


 リリアは苦笑。そして、


「じゃが、もちろん時間短縮のために地面は砕くぞ」


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