戦いの後、しばしの平穏
「へえ、じゃあレティシアさんらは魔導士とやらの仲間たちから追い出された身の上だったんですか?」
平然とレティシアの隣に立って歩みつつ、コランから貰った水筒の水をグイッと飲み、頭の片隅で、(これって、冷静に考えたら完全にコランさんとの間接キスだよな……)という破廉恥な妄想をパンパンに膨らませつつ、エイヤは言う。
「ええ……少し前まで、主に二等級程度の魔導士たちだけで組んでいた高ランクパーティーに身を置いていたのですが、どうもパーティーのリーダーだったアラフェスという魔導士が突然、『我々のような誇り高い魔導士パーティーにマナレスのような汚れた存在は必要無い』と言い出して口論になり、仕方なく私がコランを引き取ってパーティーを抜けたという顛末でして……」
「なるほど。苦労性だねえ、レティシアさんは」
そう気も無く答え、エイヤはカラになった水筒を振りながら、ふと横を歩くレティシアを見つめる。
「苦労性だなんて……私はただ、魔法が使えようが使えまいが、人間は等しくあるべきと考えているだけで……それにしても、あの魔導士たちは本当にあのままにしてきて良かったのでしょうか?」
「平気ですよ、多分あの程度のケガじゃあ人間、なかなか死んだりはしないと思いますからね」
「多分て……」
なんとも不安そうに疑問を投げかけるレティシアに、だがエイヤは微笑むばかりでまともに取り合わない。
すると。
「ご心配無く、レティシアさま。なんかムカつきますが、こいつの言う通りですよ。こいつが相手したのは四等級程度の火炎魔法使いが四人。同じ四等級とはいえ、希少な治癒魔法使いのレティシアさまのほうがお立場は明らかに上です。加えて、四等級ほどだったとはいえ、腐っても魔導士を名乗る者が四人がかりでこんな痩せこけたガキの、しかも丸腰のマナレス一人に負けたなんて、汚名もいいところですからね。むしろ積極的にこの事実は隠そうとするでしょうから、改めてまた絡まれでもしない限りは放っておくのが一番です」
言ってレティシアを安心させようとするコランの声が背後から響く。
「ほら、コランさんもこう言ってるんだから……と、それよりコランさん? 頼むから後ろで思いっきり俺へ向かって殺気をたぎらせないでもらえません? すごい怖いんですけど……」
「殺気のひとつぐらい向けて当然だろ? お前のせいでレティシアさまが要らぬ心労を抱えているのだから」
「へいへい……それはまことに俺が悪うございましたよ……」
そうおどけて答え、エイヤはひとつ大きな溜め息をついた。
それから。
「んで、さっきからずっと森の中を歩いてますけど、一体どこに向かってるんです? レティシアさん」
「そうですね……一応、またパーティーを組み直さないことには始まりませんので……」
そこまで言ったところで、ふと一気に樹々の集まった景色が消え、目の前が開ける。
見れば高台の遠くに白く高い塔が立ち、その周辺に人家のようなものがいくつも並んだ町が見えた。
「あそこ……この国で二番目の都市、カムヤクの魔導士ギルドに行ってみようかと思っています」
言いながら町の中心に立つ塔を指さすレティシアを見てすぐさま、また遠方でたたずむ都市の外観にエイヤは視線を伸ばした。