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プロローグ

鬱蒼とした森の中。樹々の開けたその場所に、少年は立っていた。


右腕から肉の焦げる嫌な臭気と白い煙を立ち昇らせ、左手は自身のものではない返り血に濡れている。


見れば周囲には四人の紳士服姿の男たちが、顔じゅうを腫らし、血まみれになって倒れている。


そんな惨状を特に気にも留めない風で少年は見渡す。


よくよく見ると煙を上げている右手は拳からヒジにかけて赤黒く焼け、ひどい火傷やけどを負っていたが、そのようなことにも少年は特に興味も無いらしくただ、気だるそうにその場に立っていた。


転瞬、少し離れた位置にいた二人の少女のうち一人が天を仰いで顔を押さえ、恨めしそうな声を漏らす。


「まったく……何てことしてくれたんだ、この野郎は……」


苦々しく絞り出すような、そんな声を上げたものだが、変わってもう一人の少女は蒼白となった顔から伝わる精神的ショックを力尽くで押さえつけながら少年のもとに歩み寄ってゆく。


「治療を、早く……」


そう、まるでうわごとのように口から零しながら、少年のもとへ身に着けたローブを引きずるよう、おぼつかない足取りで迫るや、彼の焼けた朽ち木のようになった右手を両手で優しく包む。


刹那、その両の手のひらから鈍い光が溢れだし、見る間に少年の焦げ付いた右手がまるで時を逆戻しするようにして正常な肌の色へと戻り始めると、ようやくその段になって少年は自分のそばに寄り添いつつ、泣き出しそうな顔をして彼の手を包む少女に気づくや、


「あらら、またなんか手間かけさせちゃってすんませんね。ま、とりあえずは邪魔っけな奴らは片づけたことだし……さて、こういうことになったからにゃ、とりあえずその場を離れるのが定石でしょ? なら、さっさとずらかりましょうや」


すっかり治ったらしき右の手指を開け閉めし、まだ鈍い光を放つ手をかざし続けている少女へ向かい、少年は屈託の無い笑顔を見せた。

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