高利貸しの幼馴染み
「お金貸しましょうか?」
そんな甘言に騙されて、高校の時に幼馴染みから借りた一万円。十日で一割という金利で明らかに高い利子。それでも返せるだろうと安易に考えていた俺は愚か者以外の何者でもない。
俺の名前は金無 満、俺はとにかく金を貯めるということが出来ない男。浪費することしか知らない。お金はいくらあっても足りないので、すぐに金欠になる。なのでお金を借りたくなる。そうすると高校生の俺からすると借りやすい奴から借りるわけでして。
そしたら高校生ながら金貸しをしている幼馴染みが近くに居るわけです。
あっ、こっから回想ね。
「利子。お金貸して。」
「良いですよ。」
ほら、すんなり。こいつの名前は高山 利子。長髪黒髪の切れ長のスレンダー美人だが、高校生ながら金貸しをしている女。金利が十日で一割という違法な金利で、同じ高校の生徒に金を貸している。そんなことしていたら教師から注意を受けそうだが、教師の中にも金を借りてる奴が居るらしく当時は黙認されていた。
「マジで?一万で良いからさ。」
「良いですよ。その代わり十日で一割ですからね。」
「分かってるって♪今度バイト代入るから、それで返すよ。」
安易あまりに安易な考え、バイト代が入れば使うに決まってるのに。
だが不思議なことに利子とは幼稚園からの付き合いなのに金を借りたのはコレが最初であった。やはり幼馴染みから金を借りるのは意識的に避けていたのかもしれない。しかし、一度金を借り始めたら、あとはズルズル芋づる式であった。
細かい金額100円単位から一万円単位まで、金が足りなくなれば利子から金を借りる生活を続けていた。自慢じゃないが、その間一度たりとも金を返したことは無い・・・本当に自慢出来ないな。
それでも高校卒業して社会人になれば、稼いだ金でいっぺんに返せると思い込んでいたが、あまりに甘い考え。俺には学が無く、大学受験に落ちてからはアルバイトして食い繋ぐ日々を送り、そうなると膨れ上がった利子を上乗せされた借金を返せるワケもなく、流石に罪悪感が生まれたので、他のとこから金を借り始めた。アルバイトだからといって俺の浪費癖は治るワケもなく、社会人になってますます金遣いが荒くなったのだ。
しかし、それがいけなかった。
だって闇金に手を出しちゃった♪・・・笑い事じゃなかった。
闇金は怖い。金利は利子と変わらないけど、取り立ては激しかった。
3ヶ月も金を返さないと、早朝、深夜も問わずにキツい取り立て、扉をドンドン!!と叩かれて「殺すぞコラッ!!」と言われたら生きた心地がしなかった。
こうなると頼る相手は一人であるが、こんな男を助けてくれる確率は極めて低い。その相手を喫茶店に呼び出して、早速お金を貸してくれるように頼んでみると。
「良いですよ。お金貸してあげます。」
「マジで!?」
頼った相手は、もちろん利子である。彼女は高校を卒業した後、有名大学に入り、銀行に就職したらしい。てっきり受付嬢みたいな仕事かと思ったら、俺と会う時にバリッとした黒いスーツを来てきたので、もしかすると偉い立場なのかもしれない。
と、そんなことより、利子がお金を貸してくれるなんてビックリだ。
「闇金から借りたんですよね?それなら違法取引で過払い金が相当ありそうなんで、その手続きも私に任せてください。」
た、頼もしい。なんて頼りになる幼馴染みなんだ。涙が出てきそうだ。
「あ、ありがとう。もう俺どうして良いか分からなくてさ。」
「大丈夫です。大丈夫ですから。その代わりこの書類にサインを。」
「わ、分かった。いくらでも書くよ。」
えーっと、何々?名前と住所と・・・あれ?
俺は渡された紙が何なのか分かって戦慄した。紙には婚姻届と書かれており、女性が書くところには利子の名前とその他もろもろ書かれていた。
「こ、これは何かな?」
震える指で俺が婚姻届を指差すと、利子は今まで見せたことの無い笑顔でこう言った。
「夫婦になれば借金は二人のものになりますから、私からの借金はチャラで良いですよ。あと結婚したら満君には専業主夫になってもらいますから、家事を覚えて、お料理教室に通ってもらいます。あっ、お金は自由に使えませんから、必ず私に用途と理由を申し出て下さいね。それから私がお金を出すか判断しますので。」
あーなるほどね。了解了解。これはあれだね。俺に反論の余地無しってワケだね。なんでこんな男と結婚しようと思ったのか、彼女の心情は分からんけど、もう俺は彼女の奴隷になる以外道は無さそうである。