幸運の黒ネコ
「ある黒ネコの写真をSNSに投稿すると、幸運が訪れる」
ある国ではその噂で持ちきりだ。
ある男性は宝くじが当たり、ある女性はプロポーズされ、中には不治の病が治った人もいる。その噂は瞬く間に国中に広まり、各テレビ局でその黒ネコを探す番組もできた程だ。
しかし幸運の黒ネコには特徴がなく、黒ネコの写真を投稿しても幸運が訪れるまでは本当にその黒ネコだったかは分からない。ついにある日、王様は痺れを切らし「幸運の黒ネコを捕まえた者には賞金を支払う」と言い出した。
国民全員が血眼になり、あらゆる手段を用いて黒ネコを探し始めた。十匹、二十匹と、次々に黒ネコは国から減っていった。
集められた黒ネコたちは一匹ずつSNSに投稿され、不幸な黒ネコたちは次々と処分されていった。そしてとうとう、国の黒ネコは最後の一匹に。
「幸運の黒ネコ」の写真がSNSに投稿されたその翌日。隣の国はある噂で持ちきりになった。
「隣国から人が消えた」