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妖防第六分団  作者: 山梨瑞木
7/12

マジマミホ

 屯所への挨拶に持っていく手土産のクッキーをコンビニで買い、お店を出たところ見覚えのある男達がいた。

 市役所で入団手続きをしてた男達だ。 


 そしてヤクザ風の男が一緒に行かないかと声をかけてきた。

 断る理由はない。


 「ああ、姉さん手土産買ってたのか。そうか、忘れてたな。金出すからさ俺たちも乗っけてくんない?」


 これも断る理由はない。二人から500円ずつ貰う。


 「姉さん、しっかりしてるよね。一緒にやってくことになるだろうからさ、頼りにしてるわ。」


 そして向こうから自己紹介をしてくる。話を聞いた感じ、

 アダチヨウスケ

  半分会社の給料泥棒扱い。会社が税金の一部免除を受けるために入団を勧め、それを受け入れた。

 ナガヤマトキナリ

  便利屋と自称しているが、ただの底辺労働者


 こう解釈した。


 私は別にそうしっかりした人間ではないと思うが、この二人から見たらしっかり者に見えるのだろう。

 とは言っても今の私はこの二人とたいして変わらない状況だ。特にアダチと状況は似ている。


 数ヶ月前に人事担当者に言われたことを思い出す。

 

 「あのさ、マジマさん。いま希望退職すれば退職金に割増がつくしどうかな。

 ほら、今の航空業界の状況わかるでしょ。

 君は優秀だから残ってもらいたいんだけど、どうしても総合職の人員減らさないとさ。

 君には他に良い業界があるだろうし、引く手数多だと思うんだよね」


 私が勤務していた航空業界は、未曾有の大不況に襲われていた。

 謎の磁気嵐による通信障害や機体故障で、旅客機が墜落するという事件が散発したのだ。

 あくまで散発なのだが、世界中の人間の旅行熱を冷やすには充分すぎた。

 さらに併せての妖獣騒動。東欧某国では妖獣に占拠されてしまった街もあるらしい。

 旅行どころじゃないよね。

 しかもとにかく情報がない。国内インターネットを海外から遮断する国が激増中だ。

 本当に海外旅行どころじゃない。減便に次ぐ減便だ。


 まぁそんなところで業界には見切りを付けていたから会社を退職した。あれだけ会社に貢献した自分がリストラ対象になっているとは思わなかったけど。冗談じゃなく、あと10年勤務していたら初の女性CEOになっていたと思う。


 まっ、今はただの無職だ。

 今まで働き詰めだったから一年くらいダラダラ休もうと考えてたのだが、失業手当ての申請に職安へ行ったところ、職員に妖防団員の採用試験に受けてみないかと誘われた。

 普通なら無視するところだが、採用リーフレットをよく見てみると、実績次第では幹部登用の常勤公務員として採用もありえると書いてあった。

 今後、世界は妖獣に振り回されるだろう。妖獣絡みの仕事は、のし上がるための良いステップになるかもしれない。

 やってみるか。

 妖防団員なんてろくな人材は来ないだろう。簡単にトップを取れる。鶏口となるも牛後となるなかれとも言うし。


 こんな話はこの二人にはとてもできない。

 やりがいが有りそうだから志願したと適当に話す。


 屯所は城址公園のお堀沿いにある。春の陽気で足取りは軽く、桜に目を奪われる。


 「貴様と俺とは同期の桜だ。三人仲良くやってこう」


 ナガヤマが爺臭いセリフを言う。


 私とあんた達とは同じ同期でも身分が違うんだよと思ったが、まぁ良いや。

 仲良くやろう。

 私は出世するから、あんたらを拾い上げてやるよ。


 しばらく歩くとプレハブの屯所が見えてきた。40歳くらいの髪の長い色気のある女性がワゴン車を洗車している。


 「お疲れ様です。今度入団することになったので挨拶に伺わせてもらいました」


 と私は声をかけた。


 「あっ、そうですか。私も先週入団したばかりなんですよ。今度の妖防学校に一緒に行くんですね。

 よろしくお願いします。分団長は中にいますので案内します」


 どことなく品のある女性に案内されてプレハブの中へ入った。

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