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一か月ちょっとの願い  作者: FULLMOON
4/12

妻が急に優しくなった(4)

仕事中も、事ある毎に時計を見ては、今、妻は何をしている頃かと考えている。



ここまで妻を考えることがあっただろうか。



妻が浮気しているかもしれない。



妻が離れてしまうかもしれないと思った瞬間に不安がよぎって時計を見てしまう。



休憩に入ると、集中していた仕事から離れるためか、尚の事、不安ばかりが頭によぎる。



何度、家に電話をしようかと悩んだが、妻への詮索になるのではないかと理性が抑制する。



もし、電話に出なかったら、もし電話から男性の声が聞こえたらと思うと電話を躊躇った。



ようやく仕事が終わって、家へ飛んで帰る。



今まで、何の気なしに家に帰っていた帰路も心が落ち着かなかった。



暗くなっていく景色に苛立ちさえ覚える。



視界が良く見えないと早く帰れないからだ。



こういう時に限って、信号に多く掴まる。



車庫に着いた私は家の玄関に急いだ。



すでに玄関の明かりが灯っている。



扉を開けて家の中に入ると、妻がタオルを持って立っていた。



「おかえり、今日も雨降っていなかった?」



妻が私にタオルを渡す。



「いや、降っていなかったよ」



私は返す。



「そっか、降らないんだね」



妻は視線を下げて、声を曇らせる。



妻の曇った表情に一度は気になったが、もう我慢ならなかった。



「それよりも、今日、どこか行った?」



我慢ならない勢いのまま、妻に詮索した。



「え? どこにも行っていないよ。あ、お買い物には行ったよ」



妻は言う。



「車が無いのに、どうやって荷物を持ってきたの?」



私は疑う。



「あのスーパーは歩いても行かれるから歩いて行ってきたよ。重かったー」



妻はにこーっと笑みを見せる。



「頼むから、嘘はつかないでくれ」



私は妻の笑みすら信じることはできなかった。



「嘘なんてつかないよ。だって、あなた、凄く嘘が嫌いじゃない、冗談でも起こるくらいなんだから、言えるはずないよ」



「でも嘘ついているような素振りするじゃないか、昨日から」



「そんなことしていないよ。…ねえ、早くリビングに着て」



私は妻に腕を掴まれて、誘われるまま、リビングに座った。



「車を売った理由はね」



唐突に切り出した妻の表情はとてもにこやかな表情を浮かべている。



私は、どのような妻の言葉がくるのかと不安に駆られて、頬に板が入ったように硬い。



「あたし…」



私は、妻の次の言葉が怖かった。



別れを切り出されるのか、他の男の存在を告白されるのか。



妻は、顔を下に向けて、言うのを躊躇っているように見える。



その妻の姿を見て、もう覚悟を決めていた。



妻の次の言葉がくるまでの時間が遠く感じる。



そして、妻は僅かに口を開いた。

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