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一か月ちょっとの願い  作者: FULLMOON
3/12

妻が急に優しくなった(3)

リビングへ行くと、明かりが灯っていた。

妻がリビングで何やらしている。

「まだ起きていたのか」

私は冷蔵庫を開けて水を取り出す。

冷蔵庫には先程の夕飯、二人分の料理が残っていた。

「夕飯の時はごめん」

私は妻の前に座って言った。

「いいよ、全然、気にしていないよ」

妻は返す。

妻は手元で毛糸を編んでいた。

「編み物なんてしたことあったっけ」

私は妻に言う。

「ないよ、でも、本買ってきたから、たぶん作れる」

まだ折れ目がついていない新品の本を両膝で挟んでいる。

「もう夜遅いから、早く寝なよ」

私は妻に言うと自室へ戻った。

ふと自室にタオルケットが畳んである。

妻が洗ってくれたのだろう。

私はタオルケットを持って、リビングに行き、妻に羽織らせる。

「ありがとう」

妻は微笑んで、頬でタオルケットの温もりを感じている。

「おやすみ」

私が言うと、妻も返した。

 朝目覚めると、妻はリビングで毛糸を持ちながら寝ていた。

妻の寝顔に朝日の白い光が当たっている。

その瞳には一滴の小さな涙がきらりと光っている。

「あ、おはよう」

私に気がついた妻は目を擦り、背を伸ばした。

「ここで寝たら風邪ひくぞ」

「うん、ありがとう、心配してくれて」

妻はちょこんと頭を下げる。

「やはり、昨日から何だか変だぞ?」

「ありがとうと思ったからありがとうなんだよ?」

妻はゆっくりと立ち上がると、私に近づいて抱擁してきた。

私は両腕を妻の腰に回して抱き合う。

妻は浮気しているのだろうか。

それを聞く間もなく、出勤時間が迫る。

準備をして自室から出ると、リビングに朝食が並んでいた。

朝食を作ってくれるのも今までなかった。

私は、昨晩からの妻の行動の変化が続き、不思議と驚かなくなっていた。

元々、妻は朝が苦手なので、私が出勤する寸前で目を覚ますのが日常だった。

普段は、起きてきた寝ぼけ眼の妻に玄関で「おはよう」と言うだけだった。

「ありがとう」

私は疑念を上手く隠せぬまま朝食をいただき、「行ってきます」と声をかけて玄関を出た。

ふぁ!?

車庫に私の車しかない。

慌てて私は家に入る。

「私の車しかないぞ!」

私は動揺している。

妻は静かな足音で玄関まで来る。

「うん、知っているよ、昨日、売ってきちゃった」

ふぁ!?

開いた口が塞がらないとはこういうことなのだろう。

沈黙が続く。

「これにはね、理由があるの、あなたが帰ってきたら話すね」

妻が視線を下げて言う。

「あ、ああ…。わかった、行ってきます」

「行ってらっしゃい」

私は通勤中の車内で何度も車を売却した理由を考えてみたが、検討もつかなかった。

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