表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウリッジ  作者: 愛摘姫
9/56

第三章 〈三〉 山の禁

『山ノ禁』



デルマたちが、集まっていた場所は、巨石群に程近い大岩の前だった。

遠く東の空をみると、少し薄紫色に変化しているようだった。


風の音なのか、それとも、男たちの囁き続ける声なのか、黒い男の人影は誰も微動だにしないまま、囁き続けるような音だけがなっていた。


声の主は、デルマだった。



「では、それをお前たちは、里のものに禁じたまま、山で仕事をしていたというのか」


うなだれるような声とともに、責め立てている声が地面に落ちた。


誰も、返事をしようとしない。それが、帰って真実だと告げていた。


「では、私たちは、いったい何を信じていたというのか。お前たちが、行ってきたことは、山ノ神を愚弄することではないか」


中年の男たちは、うなだれていた。

年長者たちは、そのことに対して、だまったままだった。


「私は、村長に何と申し開きをしたらいいのだ。このことを判断するには、とても」


自分が幼すぎるというのを、ぐっとこらえた。


ダリは、なぐさめるように、デルマの肩をたたくと、こういった。



「誰のせいでもないんですよ。これは。わたしら、山に入る男たちには、これが当たり前のことなのです。あなたは、みたままのことを報告するしかないでしょうな」



悪びれる様子もなくそう語った。デルマは肩をおとしたまま見やった。

村長になれば、この村の全部が見渡せるものだと思っていたが、自分はそんなことにも気づかないほど幼かったということか。


山には、山の世界があり、里には里の世界があると考えてきたが、自分はなんと甘かったことだろう。

村にやってきた誰もが、そのことに気づかずに、生活をして、また山へと入っていく。では、里で待っている女たちは、どうだというのだ?

何も知らず、何も知らされずに、一生を男を待ち続けて終えるというのか?


腹立たしさを感じたが、それを誰に向けたらいいかわからなかった。


デルマは深く息をすうと、絞るように放った。



「もう一度聞く、ここの山の主は、女なのだな?」


長老ダリは、黙ってうなづいた。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ