第十一章 〈3〉 閃光の中で
ルウアが、その光に到着したときには、辺りは、すでに暗がりが広がっていた。
光が見えなくなるギリギリで、降下したので、感覚で覚えているだけの場所を頼りに飛来した。
森が広がるその場所は、すでに暗くなっていたが、さっきまで光をほとばしらせていたような、わずかな熱を感じた。
それから、燃えるような匂いがかすかにしている。
しずかな森だったが、閃光によってあたりの動物たちが逃げたのだろう。
今は何も、生き物の気配がしなかった。
暗くなってしまった森の中で、ルウアは、燃える匂いを追った。
大きなブナの一角の、根元に、小さな焚き火をした後があるのをみつけた。
小さな焚き火だったので、それは、容易に一人だったと想像がつく。
しかし、野営していたであろう焚き火の主と、人知をこえた閃光とが結びつかないように思えた。
(ここで何かがあったのだろうか)
焚き火の燃える香りも、閃光が起きた熱の感覚も、時間とともに薄れていっていた。もうここにいても、何も起こりそうにない。
ルウアは、急に寒さで身体が震えてきた。
森の中を抜けていく風は、温かさを帯びていたが、心のどこかに冷えが残っている。まるで、自分の中にある片割れが奪われたような気がした。
(寒い)
ルウアは、宿営地の方の空をみつめ、とびあがった。
空は、星がちりばめられていたが、やがてすぐそこまで陽がやってきていた。
陽の出る前が一番冷える、とルウアは思った。
飛び立つ前に、焚き火の方を一度振り向いたが、人の気配ももうそこにはない。
ぐんぐん空へあがってゆくルウアの目にはみることができなかった、焚き火の横に落ちていたフレアの髪留めが、主の戻らぬまま、朝日のくる風に吹かれていた。
※※※
ルウアが、宿場についたときには、星が交代をつげようとしている頃だった。
一晩中飛んでいたため、背中がだるく、二階へあがる足も重かった。
部屋につくなり、ベッドに倒れこむと、そのまま寝入った。
隣りでは、アデルがその様子をみていたが、だまってそっとしておいた。
朝の集合をつげる合図の鐘がなるまで、ルウアは深い眠りについた。
朝日が宿場を赤くそめあげていく中、新しい山の一日が始まろうとしていた。




