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ウリッジ  作者: 愛摘姫
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第一章 〈三〉 空族

〈三〉 『空族』




空族の掟は、男は、15歳になると、山に入ることが許され、山ノ神と仕事をする。


そして、女は、同じ頃になると、伝達者としての仕事や、所作を覚えさせられる。

その中で、力が目覚めたものや、力があるものが、ツムギとなり、その後も村の繁栄の儀や、祭りなどの行事を司る。

それが叶わなかったものも、女たちの園である、オオゼの谷に移り住みツムギや、そこで暮らす女たちの生活全般を支えていた。

オオゼの谷はそれ一つが木に囲まれた大きな集落になっており、家が数軒存在したが、中でも、中央に一番大きな大門と呼ばれる家では、代々空族のもっとも力の大きいツムギが住んでいた。


すべて、女たちで賄われる、女の園オオゼでは、緊急の場合以外男子禁制となり、婚姻するときに谷を出て行くしきたりであった。谷の中で、女たちによって執り行われる行事も、他言無用であり、村で行う祭りの行事のみ、彼女たちの姿を拝むことができた。






村へと帰った彼女たちの中から、あるとき、生まれた女の子がいた。

青い目をして、白い肌、そして銀色の羽根を生やしていた。

名前を昔あったという旧世界の中で、天使という意味の、ミッシェルから、ミゼルという名前をつけた。


ミゼルは、5歳のときに、すでにその才覚を表していた。

そして、10歳になる前に、村のものが、谷へとやってきてこういった。



「このたび、生まれた10歳の子に、その力を使わせてやってほしい」


そのとき、大門に住んでいたツムギの中の最高権力であるサナリは、その話をきくと、

すぐに顔が青ざめて、こういった。



「わたしよりも力の強いツムギがやってくる」


そして、村のものたちが、ミゼルをつれてやってくると、サナリは、それをみて、敵意をむき出しに怒った。


「このものは、大きな力を持っているが、邪悪なものの力ともなってしまうだろう。わたしが鎮めよう」


そういって、飛び掛ろうとしたので、村のものたちがおさえた。


そのとき、ミゼルは、10歳。

この光景を静かに見つめると、こういった。



「あなたは、もう行きなさい。自由になってもいいのです」


すると、サナリは、何枚も重ねた着物のまま、その場にしなだれた。

そして、急に、その着物が重く感じたようだった。


まだ若かりし、バアが、着物を脱がせてあげると、ほっとしたようになって、うなだれた。


そして、村人たちの助けを借りて、家の外へと出て行き、こちらを向いて一礼し、そのまま村への道を降りていった。


ミゼルは、自分の役目を知っているかのように、バアに、自分にあう着物を新調するようにと伝えた。


村人たちは、ミゼルの所作が、誰にも教わることなくすべて流れるようだったために、村に命が吹き返したのを感じた。




ミゼルは、村のものたちに言った。


「あなたたちは、村に戻り、すぐにこのことを伝えなさい。

新しい始まりなのです」



それから、30年もの間、オオゼはミゼルの祝詞のもと、いっさいの聖域となり、村の繁栄を守った。





ミゼルは、言った。


「わたしたちが住むこの星は、わたしたちの自由な意思によって守られている。

この自由な翼は、すべての民との調和を測るためのもの。

そして、それをなすことができるのは、わたしたちのこれからの子孫なのです。

わたしたち種族は、愛を語らい、子をうみ育て、そして、民を超えて尊敬の威厳の調和した種族となってゆくのです」



民は、自分たちにある翼を思い出した。

ミゼルの説く調和は、すべての民、この星のすべてとの融合を意味していた。


ミゼルは、すべての命が、神と同等であると言った。

そして、山ノ神とは、自分たちの祖先であるとも言った。



民は、ミゼルの言葉をよく聞き、彼女を尊敬し、愛した。

ミゼルの言葉は、誰にでもよく届き、そして、人々を愛と平安な心へと導くようだった。


すべての民が、調和のもとへと一つとなるならば、彼女に与えられた力の大きさは融合するために必要なものであった。


山ノ神も、自然も、すべての動植物にも愛されたミゼル。




愛の名のもとへと、民が集結するのは、それからまだ遠い先のことだった。






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