#3
暫くはウダウダと続きます。
挨拶を交わしている間に俺が住む部屋の準備は終わったようで案内される。
修練は明日から開始すると言われた。
宛がわれた部屋に入り、中を物色する。
ベッドと机、小さなクローゼットがあるだけの部屋。
まぁ、寝るだけだから何も問題はない。
強いて言えば、もう少し柔らかいのが好みな事だろうか。
ベッドに腰掛け、一気に通り過ぎていった事態を思い返す。
自室で異世界に召還され『勇者』として『魔王』を倒す為に働くという事。
もちろん、拒否権はない。
拒否したら殺されるだけだろう。
で、異世界からの勇者は潜在的な能力があるようで修練をする事によりその力を発揮できるという。
恐らく『チート』の類いだとは思うが、実際に俺がそんな力があるとは現時点で思ってない。
いや、意外と最初から『俺tueeee状態』かも知れんがやった事がないものに関してはさっぱり判らん。
と、そんな事を考えていたらドアがノックされた。
「はいはい、どちらさんでしょかね?」
「トオル様、お部屋は狭くありませんでしたか?」
ノックをしたのはクリスだった。
「あ、いや。元々の自分の部屋も似たようなモンだったから特には。で、クリス。こんな所にどうしたのさ?」
「こんな所って、城の住人である私が何処に居てもおかしくはありませんわ。まぁ、牢屋や宝物庫は別ですが。部屋の居心地を聞くのは建前として」
やっぱり建前かよ。
「今夜はトオル様の歓迎する宴を開きますので、ご参加下さいませという事を伝えに参りましたの」
「……歓迎、ねぇ」
言葉通りな歓迎だとは思ってないし、思うつもりもない。
出来る事なら今すぐ帰りたい。
理解はしたが、納得はしていない。
「あまり乗り気ではなさそうですわね?」
「そりゃ貴族との宴なんぞ初めての事だから、硬っ苦しいモノなんじゃないかってイメージが…ね」
「それでしたら、最低限のマナーで宜しくてよ。我々王族はあまり細かい事は気にしませんわ」
「そうか。それなら助かる」
どちらにしても宴には強制参加させられるんだけどな。
あ~めんどくさいなぁ。
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