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第4章ー2

 その一方、満州国内の鉱山等の探査、開発にも蒋介石は力を注がざるを得なかった。

 特に油田が重視された。

 これには、満州国の最大の支持国である日本の国内事情も絡んでいた。

「何としても油田が近くに欲しい」

 1930年代初頭当時、日本の軍民を問わない悲願に、このことはなっていた。

 ちなみに、当時の日本は石油に関しては、米国に完全依存していると言われても過言ではない状況に置かれていた。


 まず、言うまでもなく、1930年代、海軍の艦艇を動かす燃料は、一部、石炭もあるとはいえ、基本的には石油を原料とする重油である。

 日本海軍、特にその中の艦隊派にとって、海軍の燃料を事実上、米国に頼るというのは、首根っこを米国に押さえつけられているようなもので、居心地のいい話では無かった。

 更に日本海軍以外の軍隊、陸軍や空軍、海兵隊も、石油を原料とするガソリン等が、戦争を行う上で必要不可欠な存在になりつつあった。


 まず、この当時の空軍にガソリンが必要なのは、当然な話であった。

 そして、第一次世界大戦の経験から、陸軍や海兵隊も、機械化、自動車化を積極的に推進する以上、その燃料として、ガソリン等の確保が必要不可欠になりつつあったのである。

 当時の陸軍は、少しでも燃料代を節約しようと、ガソリンの代わりに軽油を使うディーゼルエンジンの導入を積極的に検討する有様だった。

(ちなみに海兵隊は、ディーゼルエンジン導入に消極的だった。第一次世界大戦の記憶等から、英米の海兵隊や陸軍の車両と燃料は共通使用できるのが妥当だとして、ガソリンエンジンを好んだのである。このことが少し後で、とあるトラブルを引き起こす。)

 そのため、日本の軍部は一丸となって、ガソリン等の元になる石油の確保を重視するようになっていた。


 また、民需面でも、日本は石油を必要とするようになっていた。

 鉄道改軌を進めた代償として、いわゆる地方への鉄道敷設が進まなかったために、地方ではそれを穴埋めするために、道路を整備してのバスやトラックの運行が進められた。

 また、第一次世界大戦後、陸軍等の思惑、後援もあって、国内産業振興の最大の柱として、自動車産業が重視された。

 それにより、日本国内の需要、供給の両面も合致したことから、車が富裕層のみのものから、いわゆる中産階級でも、少し無理をすれば手が届くものへとなり、そうしたことから、個人、法人での自動車保有も少しずつだが、進んでいたのである。

 だが、こうして日本国内に自動車が増えれば、必然的にガソリン等も必要になってくる。

 少しでも安く、石油を確保したい。

 日本の民間からも、そう言った声が高まるのは、当然だった。


 この当時、日本に最も近く、それなりに規模の大きい油田は、北樺太の油田だったが、ここは日本の最大の仮想敵国、ソ連の領内であり、ある意味、日本から遠いところにある油田に過ぎなかった。

 既に日本国内、台湾、更に朝鮮半島まで、油田の有無については、日本は調べつくしたと言っても過言では無かった。

 こうしたことから、まだ調査が十分にはなされていない満州が、日本の軍民にとって、油田の有無が重大な関心事となっており、斎藤實首相自ら親書で蒋介石に満州国内の油田調査を要請する事態に至っていた。


 日本政府の意向を受けて、蒋介石は満州国内の油田探査を鉱山調査の中でも最優先事項として取り扱うことになった。

 だが、実際に油田を探査するとなると、満州国の有する技術や日本の有する技術では、どうにもなりそうにないのが現実だった。

 そして、それを見透かしていた国があった。


 いうまでもなく米国である。

 満州の油田探査に、大恐慌に苦しむ米国政府自らが乗り出す事態となった。 

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