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第3章ー48

「承徳は、明らかに無防備都市では無く、北京政府軍が立て籠もっていました。また、北京政府軍は、承徳市民を保護しませんでした」

「我が国は、孫文以来、三民主義を唱え、国民を大事にしてきました。その我が国が、承徳市民を保護しようとしなかった等、邪推にも程があります」

「いや、我が国の爆撃機が、承徳市街から対空射撃を受けたと、日本本国から連絡を受けました。どう考えても、承徳には、北京政府軍の兵士がいたとしか思えません」

「我が国は、事前に承徳市を完全無防備都市にすると宣言し、日本政府にも通告しています」

「その通告は、明らかに嘘としか、思えません。また、東京からは、そのような通告は無かった、という連絡を受けています。」

「真実は一つです。承徳には、一兵たりとも、北京政府軍の兵士は居ませんでしたし、東京にも事前通告がなされていました」


 日本の松岡洋右代表の主張に対して、北京政府の代表は、声高にそう反論して主張した。

 嘘も百回言うと本当になるという。

 これまでの経緯から、日本に好感を抱いていなかったいわゆる中立の小国群は、度重なる北京政府の主張が本当だとして、北京政府にすり寄り出した。


 この当時、本音としては、北京政府は、上海方面でも事を起こして、列強の注目を更に集めることを計画していたという説がある。

 満州という、ある意味では辺境の紛争等、列強をはじめとする世界中の多くの国にとっては、どうでもいいことだったからである。

 だが、上海となると、列強の利害が複雑に絡み合っており、世界中の多くの国の関心を招くのは必須だった。

 しかし、日本が、海兵隊2個師団を本国に引き揚げ、米国も海兵師団を満州から比島へと引き揚げさせてしまっていた。

 この為に、北京政府は、上海で事を起こしたら、この日米3個師団が駆け付けることになり、却って自国に不利になるとして、上海方面で事を起こさなかったというのである。

 真実は完全に闇の中だが、国際連盟における北京政府代表の振舞いを見る限り、その可能性が否定できない話ではある。


 国際連盟事務総長で、英国出身のドラモンド氏にとって、この満州事変の処理は厄介極まりないもの、と完全に化していた。

「国際連盟等、作るべきでは無かった。利害関係を有しない、といえば聞こえはいいが、実際には利害関係を有しないので、気ままで無責任な主張が横行している」

 ドラモンド事務総長は、とある事務局員に、そこまで言ったという。


 ドラモンド事務総長は、出身国の英国政府の意向もあり、次のような案を基本とする解決案を、日本をはじめとする連盟各国に対して、まずは打診していたという。

1、中国政府については、北京政府が唯一の正統政府であると、加盟国は認める。

2、満州については、蒋介石政権を(事実上の)政権として、加盟国が認めるのを黙認する。

3、満州の日米の利権が、蒋介石政権によって、事実上保護される代償として、蒋介石政権は、北京政府の存在を認める。


 だが、北京政府も、日本政府もこれを全く呑もうとしなかった。

 それ故、ドラモンド事務総長は、第二案を提示した。


 それは、満州問題について、国際連盟から、満州の実情を細かく調査する調査団を派遣し、その調査報告の内容を受けて、満州問題の解決を図ろうとするものだった。

 さすがに、この提案についてまでは、日本も北京政府も反対できなかった(蒋介石政権は、そもそも国際連盟に加盟していないので、全く発言権が無かった。)。

 そして、日本政府が受け入れた以上、米韓もこれを呑んだ。

 それ故、この調査団派遣は、国際連盟で承認された。

 ここに、いわゆるリットン調査団が、満州に派遣されることになったのである。 

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