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第3章ー36

 張学良が自死を選択し、奉天を巡る戦闘が終わったとはいえ、それで満州事変が終結というわけにはいかなかった。

 北京の中国政府は、尚も戦争を続ける道を選んで、張学良の旧部下に対して、自らに味方して、日米韓三国連合軍への徹底抗戦を続けるように呼び掛けた。

 更に、事態をある意味で混迷させる事も(予定通りとはいえ)起こった。


「ここに中華民国正統政府の首都を置くことを宣言します」

 奉天が日米韓三国連合軍の手に入ったことを受け、蒋介石は、意気揚々と奉天にたどり着いて、あらためて奉天を中華民国正統政府の臨時首都として宣言した。

 それを受けて、実際、張学良の旧部下等には、蒋介石を頼りとして、帰順する者が少なくなかった。


 蒋介石は、南京事件で自らと共に国外亡命の路を選んだ者を中核として、日米からの武器等の援助を受けることで、中国国民党軍を再建しようともしていた。

 実際、実戦に耐えられるのか、日米の軍人からは疑問視される現状ではあったが、(日本陸軍の倉庫の中でほこりを被っていた旧式兵器を装備した)表向きは2個師団を編制の上で、自らに帯同させて、蒋介石は満州へと赴くことに成功していた。

 更に、張学良軍の旧部下の帰順や、日英米等の領内に住んでいた華僑からも、(半強制的に)志願者を募ることで、蒋介石は満州において、政治的な基盤のみならず、軍事的な基盤を固めることにも成功する。

(日英米等の領内に住む華僑は、蒋介石軍への志願をすることで、共産主義者であり、自分が在住する外国政府の反政府主義者という、周囲の者からのレッテル貼りを避けようとせざるを得ない者が多数いた。彼らは、自らの血を流すことで、故郷にいる家族を護らざるを得なかったのである。)


 そして、(狡猾にも)米韓両国は、北京政府を、そのまま認めて、蒋介石政府と事実上は並列させようとしたが、日本は公然と北京政府を否定して、蒋介石政府を中国全土を代表する正統政府だと認めた。

 更に、日本政府は、蒋介石政府の要請を受けて、満州に派兵したことにし、南京事件以来の日中戦争について、蒋介石政府との間で休戦、講和条約まで結んだ。

 つまり、満州等の中国大陸で日本が行う戦闘行為は、蒋介石率いる中国政府の要請を受けた、反政府勢力鎮圧のための戦闘に過ぎず、戦争ではない、という小理屈を日本は唱えたのである。


 ふざけるな、こちらが日本にあらためて宣戦を布告する、と北京政府が怒りそうな話ではあるが、北京政府にも弱みがあったので、日本と事実上の戦争状態にはあるものの、北京政府からの日本政府への(あらためての)宣戦布告は、結局はなされないままになった。


 何故なら、北京政府は、独ソからの武器等の援助が無いと、蒋介石政権や日米韓に対して戦争を継続することが出来なかったからである。

 公式には中国と日米英との外交関係は、南京事件の後に締結された停戦協定等により、停戦状態のままということにしておくことが、独ソからの武器等の援助を受けるうえで、北京政府にとっては望ましかった。


 そういった思惑が絡み合ったことから、やや先走った説明になるが、満州事変は、北京政府からの宣戦布告は、一切なされないという奇妙な戦争になり、国際法を厳密に言えば、日本に至っては、日中間の戦争と言えるのか(日本にとっては、中国政府から要請を受けて反政府勢力鎮圧のお手伝いをしているだけ、)?という代物になった。


 だが、実態としては、大規模な戦争状態に、この当時の満州があったことは間違いなく、奉天での蒋介石政権樹立という事態を受けて、北京政府は、こういった現状を外交的に打開するために、国際連盟の場で訴えることを決断することになる。 

 作者が戦時国際法にうといので、思い切り間違った理解をしているかも。

 でも、日中戦争でも、ベトナム戦争でも宣戦布告は無かったのですし、こういう形の事実上の戦争と言うのはアリだと思うのですが。

 日本としては、蒋介石率いる政府が中国全土を支配すべき正統政府なので、蒋介石率いる正統政府の要請を受けて、中国の反政府勢力(共産党等)の武装抵抗を鎮圧しているだけであり、相手が国家で無い以上は宣戦布告は不要という理屈になります。


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