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第3章ー32

 朝鮮半島方面からは鴨緑江を日米韓の三国連合軍が続々と渡り、旅順、大連方面からも金州を出撃拠点として、日本陸軍の大攻勢が始まった。

 北京方面からの攻撃に備え、遼河を基本的な防衛線として第12師団を一時、残置した営口上陸軍は2個海兵師団を奉天方面に向けるとともに、1個海兵師団を旅順、大連方面の部隊と連携させるために向かわせた。

 

 1月12日、営口上陸軍と旅順、大連方面の軍は合流、ここに営口上陸軍は、旅順、大連港からの補給線を(一応は)確立することに成功した。

(なお、実際には、鉄道の補修の必要等もあり、完全に確立できたと、満州派遣総軍司令部が判断できたのは、2月に入ってからで、その際には、朝鮮方面からの補給線も完全に確立できていた。)

 合流した部隊は、直ちに奉天方面へと急進した。


 さすがに2個師団ではカバーする範囲が広すぎ、奉天方面に向かっていた海兵隊は、張学良軍のゲリラ的な抵抗に、やや苦戦を強いられていたからである。

 だが、そこへ合流を果たした旅順、大連方面から2個師団余りの増援が駆け付けたことで、戦況は大幅に好転した。


 更に朝鮮半島方面からは、着実に日米両国の海兵隊2個師団を先鋒に、後方を韓国軍6個師団が固めながら、順調に進撃を開始した。

 韓国軍も、本音としては、先鋒の一翼を担いたかった。

 だが、自動車化が日米よりも遅れていることが足かせとなった。


「やれやれ、金陸相から、私に電話を掛けて督励されても、無理なものは無理だ」

 韓国近衛師団の師団長、朴将軍は、師団の参謀長に愚痴っていた。

「参謀総長の頭越しに、実戦部隊の師団長に電話をしてくるとは、余程、金陸相はイラつかれていますな」

 参謀長は、朴将軍を半ば慰め、金陸相を半ば揶揄するような口調で言った。

 その口調が、朴将軍の琴線に触れ、朴将軍を苦笑させた。


「我々は徒歩の部隊なのですから、日米両軍の後をついていくしかありません、と言ったら、朝鮮民族の精神力で何とかついていけ、と金陸相から怒鳴られたよ。わしらは、日露戦争の時に、1日40キロ、数日にわたって軍夫として荷物を担いで歩いたことがあるぞ。お前らもできるとな」

「軍夫として歩くのと、実戦部隊の進撃とは違うのに、無茶苦茶を言いますな」

 朴将軍と参謀長の会話は続いた。


 韓国近衛師団は、自他ともに認める韓国陸軍の精華である。

 だが、その部隊でさえ、まだまだ自動車は普及していない。

 補給は馬に完全に頼るしか無く、自動車化が進んでいる日米両海兵隊に付いていくのが、やっとだった。


 日米両海兵隊が、1日平均30キロという急進軍を行っているのに、韓国軍は、韓国近衛師団と言えども1日平均20キロ進軍するのが、やっとである。

 もちろん、実際は、極寒により、日米両海兵隊共に、車両故障が相次ぎ、車両修理に当たる部隊は大苦戦を強いられているのだが、そんな詳細は、同盟国とはいえ、韓国軍には今のところは掴めていない。


「ともかく、1月18日朝を期して、日米両軍は、奉天を攻撃して、奉天を攻め落とす。それによって、朝鮮半島の部隊と営口上陸部隊、旅順や大連の部隊を完全に連携させる予定とのことだ。韓国軍も、その攻撃に加われるように、進撃を急げ、と金陸相に怒鳴りあげられたよ」

「無理ですよ。我が近衛師団でも、奉天に近づけるのは、1月20日にはなります。到着して、すぐに攻撃に加われるはずも無し、21日朝に奉天を攻撃するのが精一杯です」

「日米両軍の総攻撃の前に、それ以前に奉天は落ちているだろうな」

 朴将軍と参謀長は、現実を見据えた会話をしながら、共に思った。


 結局、満州には蒋介石率いる政権が樹立されることになるだろう。

 韓国は使い捨てか。

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