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第3章ー31

 1月7日の朝に、鴨緑江方面で日米韓三国連合軍の大攻勢が発動されたとの第一報が奉天の張学良軍の総司令部に届いた後、張学良軍の戦況は、急な坂を転げ落ちるように悪化していた。

 1月8日夕刻、営口が完全に日本軍の占領下に入り、営口の港湾設備も(戦闘による損害から、それなりの修理等が必要だが、とりあえずは)使用可能な状況で、日本軍に確保された模様、という情報が、張学良軍の総司令部に入ったのが、悪い情報の総仕上げと言ったところだった。


 厳寒の1月に上陸作戦を含む大攻勢を行うというのが、張学良軍にとって最大の予想外だった。

 日米韓三国連合軍の大攻勢が1月に行われるのではないか、という情報が張学良軍に全く入っていなかったわけではない。


 兵士の移動等、大攻勢前の人、物の流れは大きな物になる以上、そういった日本国内等の情報は、隠そうとして隠しきれるものではない。

 それなりの情報はどうしても流れるし、その流れた情報を全て管制できるわけもない。

 従って、張学良軍の下には、1月に日米韓三国連合軍の大攻勢が行われる公算がそれなりに高い、という情報は入っていた。

 だが、その情報は欺瞞の可能性が高い、本当の攻勢は3月に行われる可能性が高い、というのが、張学良軍の判断だったし、北京政府も、表立っては何も言わないものの、それに(内心では)同意していた。


 何故なら、1月の満州は余りにも寒いからだ。

 最高気温が氷点下にしかならない戦場、兵士にとっては悪夢としか言いようのない戦場である。

 凍傷患者は続出するし、機械の故障も多発する。

 実際、岡村少佐率いる第1戦車大隊が装備している最新鋭の89式中戦車でさえ、厳寒から来る機械故障に苦しめられ、戦訓から、改良を至急に要望する事項の一つとして挙げられているくらいだ。

 世界大戦の遺物といわれても仕方ないルノー戦車やホイペット戦車の稼働率に至っては、目も当てられない惨状を示している。


 実際、これまでの行きがかりから、逸りに逸っている韓国軍はともかく、気象上の条件から、米軍は1月の大攻勢発動にかなり反対した。

 だが、満州派遣総軍(実際は、石原莞爾中佐が動き回った)が、1月の大攻勢に固執した。

 事実上の開戦から4か月が経とうとしている以上、これ以上、消極的な行動を執ることは、日本の国内世論の動向が気にかかるところだった。

 余りにも満州派遣総軍は消極的だという非難を、国内世論から浴びる危険性があるとまで考えられた。


 それに、日本軍はソ連を第一の仮想敵として想定、整備されてきた軍隊である。

 冬季戦には当然、それなりの備えがあり、日清、日露における満州の戦訓も蓄積されていた。

 そういったことから、日米韓三国連合軍は、1月に大攻勢を発動することになったのである。

 後、もう一つ、表立っては口出ししにくい事情もあった。


「何で、こんなところで、我々は訓練をしているのです。北海道とかでやるべきでは?」

「仕方なかろう。外国の軍隊の訓練を黙って受け入れてくれるところが、ここしかなかったし、さっさと満州に出て行け、とここでさえ、暗に言われているのだ」

 蒋介石は、部下の愚痴をたしなめた。


 蒋介石率いる新生中国国民党軍は、台湾の日本陸軍駐屯地で、急きょ編制、訓練を行っていた。

 元々の軍人も多々おり、速やかに軍隊の態をなしてはいったが、何しろ中国軍は中国軍である。

 本来の日本国内では、彼らの訓練を行う駐屯地の受け入れ先が無く、台湾で行うことになったのだが、台湾の住民も、過去の行きがかりから、彼らを白眼視した。

 こういったことから、新生中国国民党軍を満州に速やかに送り込むために、日米韓は大攻勢を行わざるを得なかったのである。

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