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第3章ー29

 岡村徳長少佐が率いる第1戦車大隊は、先陣を切って張学良軍の防御陣地に突入した。

 日本の第4海兵師団から選抜された1個海兵大隊が、岡村少佐率いる戦車隊と巧みな連携を行う。


「痛い」

 戦車の中は意外と狭い。

 不整地を走行するため、激しく戦車は振動してしまい、それによって、体をそこかしこにぶつける乗員が続出してしまう。

(第一次)世界大戦の教訓から、90式鉄帽を戦車兵は被っていたが、頭以外は無防備なため、そこかしこに振動により体をぶつけた乗員から痛みを訴えられる羽目に岡村少佐はなった。

 岡村少佐自身も、張学長軍の陣地に乗り込むまでに、体の何か所かにあざを作ったような痛みを覚えていた。

 だが、戦車を前面に繰り出した効果は絶大だった。

 張学良軍の兵士の多くが逃げ腰になっている。


「停まったら撃ち、撃ったらすぐに動け」

 という岡村少佐の指示に、忠実に部下達は動いていた。

 そのために、張学良軍の射撃(砲撃)は、中々、岡村少佐が率いる戦車隊の戦車には当たらなかった。

 仮に当たったとしても、小銃や機関銃の弾では、89式戦車の装甲を貫通できない。

 南京事件の際の戦訓等から、野砲の直接射撃で89式戦車の撃破を図ろうと張学良軍は策していたが、野砲とはいえ、その口径は75ミリ級である。

 89式戦車の傾斜した80ミリの厚さの砲塔正面に、野砲弾が直撃しても、跳ね返されるだけだった。

 さすがにそれ以外の所に直撃したら、野砲弾は89式戦車を破壊可能だったが、野砲の弾道性能等から、中々そう都合の良い直撃は生じなかった。


「よし、張学良軍の陣地を蹂躙したな。速やかに鴨緑江の鉄道橋を抑えるぞ」

 戦闘に突入してから、3時間余りが経ち、岡村少佐は次なる号令を下した。

 ほんの僅か、針の孔ほどしか、張学良軍の陣地を突破できたに過ぎないし、損害がそれなりに出ている。

 だが、残敵掃討は、他の部隊に任せるしかない、この突破口を生かして、鴨緑江の鉄道橋を目指さないでいたために、鉄道橋を爆破されては、この作戦の意味が無い。

 岡村少佐は、タンクデサントという非常手段まで使って、随伴している海兵隊員と共に鴨緑江の鉄道橋へと急進した。


 それから更に4時間後、岡村少佐は煙草を吸いながら、後方の第4海兵師団司令部に無線で報告した。

「鴨緑江の鉄道橋を完全確保しました。ところどころ傷があり、補修が必要ですが、使用可能です」

 その報告を受けた第4海兵師団司令部、更に満州派遣総軍司令部等は歓声に包まれた。


 岡村少佐率いる戦車隊等の急進撃により、張学良軍が鴨緑江の鉄道橋を爆破する余裕は無くなり、日米韓の連合軍は、鴨緑江の鉄道橋を確保できた。

 これにより、鴨緑江以南に展開していた張学良軍の退路は事実上断たれると共に、日米韓三国連合軍の朝鮮半島から満州への進撃に対する最大の障害も、また事実上は無くなったのだ。


 この事実は、営口上陸作戦の最大の支援となった。

 鴨緑江以南に展開していた張学良軍の半数以上が、撤退が不可能になったと自己判断して、日米韓三国連合軍に投降し、また、彼らの多くが蒋介石軍の兵士として参加した(彼らにしてみれば、兵士しか、自分が食べる術を知らない以上、当然の行動に過ぎなかった。)。

 そして、そこかしこの浅瀬等を利用して、鴨緑江を渡河して満州を目指した張学良軍の兵士もいたが、彼らの多くも重装備を持っていなかったことから、日米韓三国連合軍の追撃の好餌となってしまった。


 そして、張学良軍の兵の半数近くが一撃で崩壊してしまったことは、日米韓に蒋介石軍も加わる営口方面、旅順方面、朝鮮半島方面という三正面からの攻勢阻止を、張学良に断念させ、自死を決意させるものでもあった。 

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