表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
59/120

第3章ー19

「そうやって、中国軍を韓国領内に引きつけるのは分かった。だが、その後、海兵隊等の日本軍主力は営口周辺に上陸作戦を展開するだと。正気か?」

 陸軍出身の兵站参謀が、石原莞爾中佐を難詰するような声を上げた。

 実際、兵站面から考えれば、石原中佐の作戦は放胆極まりないとしか言いようが無かった。

 石原中佐は、確かに港湾設備があるとはいえ、4個師団以上を揚陸させて、補給を維持するには小さい港湾設備しかない営口周辺を、反攻作戦の足場として作戦を立案していた。


 石原中佐の作戦案を、順に列挙して行けば、次のようなものになる。

1、舞鶴海兵隊(動員により、第4海兵師団に改編される)と米国海兵師団を韓国に送り、韓国軍を督戦する。最大動員が完結すれば、韓国軍は8個師団規模になり、増援も併せれば10個師団となるので、反攻が可能になるが、じりじりと押すに止める。

2、旅順近辺に展開している関東軍(予め駐箚していた第2師団が主力で、1個師団半程度の規模)は、遼陽、奉天方面への反攻を示しているかのような姿勢を示す。

3、1,2の両作戦により、中国軍を前のめりにさせる一方、海空軍は、中国軍の補給線を徹底的に叩く。

4、冬季装備を整え、更に上陸作戦準備を整えたうえで、来年の1月を期して、営口周辺に日本軍4個師団(第1から第3の海兵師団と陸軍の第12師団)と蒋介石率いる中国国民党軍を上陸させて、旅順方面と韓国方面からの両方面軍と共同作戦を展開して、補給線攻撃により衰弱した南満州の中国軍を包囲殲滅し、大勝利を収める。


「確かに、かつて日露戦争時に、旅順艦隊の脅威が無ければ、営口に奥元帥率いる第2軍は上陸作戦をいきなり展開して、補給が維持できていただろう。しかし、今は違う。自動車化が進んだ結果、大量の燃料や修理資材もまた必要になっているのだ。営口では、十分な港湾設備があるとはいえない」

 陸軍出身の兵站参謀は、石原中佐を難詰した。

 だが、石原中佐は自信満々だった。


「確かにおっしゃる通りです。ですが、ほんの少しの間しか、営口には頼りません。営口に上陸した部隊は、速やかに旅順方面の部隊と連結させ、旅順や大連港を補給の主な基盤にします。更に韓国方面の部隊とも連結させれば、補給は万全です。何のために複数の鉄道連隊を、秘密裡に陸軍は維持してきたのですか」

 石原中佐は、笑みを浮かべながら言った。

 陸軍出身の兵站参謀は、全くの事実とはいえ、痛いところを衝かれたことから、憮然とした表情を浮かべてしまった。


 大正の山梨(田中)軍縮により、陸軍は保有していた2個鉄道連隊を表向きは廃止していたが、実際は異なっていた。

 鉄道連隊の人員は、全員が予備役編入の上で、鉄道省の人員に異動しており、給料も鉄道省の予算から全て支払われてはいたが、いつでも復活可能な状態に置かれていた。

 表向きは、鉄道省の指揮下にある外局の第一、第二鉄道改軌担当部という名称になっていたが、全員が予備役軍人であり、すぐに鉄道連隊に戻すことが出来た。


 石原中佐の立てた作戦は単純と言えば、単純だった。

 営口近辺に上陸した主力部隊は扇状に展開して中国軍を叩く。

 扇の要となる営口周辺は遼河を主な防衛線として、蒋介石軍に基本は任せる。

 南満州を制圧して、韓国からと旅順、大連からの補給線を完全に確立し、日米韓中の4国軍が連携して動けるようになったら、その後、北満州を制圧するも良し、熱河省を目指すも良し、という作戦である。


 この作戦で、東北三省から熱河省を制圧、万里の長城以北に蒋介石政権を樹立して、満州を共産主義から解放してやる。

 石原中佐は、内心ではそう固く決意して、その成功を自らは確信していた。


 ご意見、ご感想をお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ