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第3章ー11

 もうすぐ、9月17日から18日に日付が変わる。

 そして、我が韓国と中国との関係も、完全に変わることになる。

 大韓王国(略称名、「韓国」)総艦隊旗艦、「乙支文徳」の艦上で、韓国総艦隊長官の李提督は、そう考えながら、時計を眺めていた。


 何故に、韓国と中国の関係が完全に変わるのか、それを承知しているのは、この「乙支文徳」の中にいる者の中では、「乙支文徳」の艦長である姜大佐だけの筈だった。


「乙支文徳」は、韓国が誇りを持って保有する最新鋭巡洋艦だった。

 日本海軍が保有する「夕張」型巡洋艦の準同型艦といえる存在である。

 隣国にして同盟国である日本が、「夕張」型巡洋艦を保有した時、世界各国が驚嘆したが、実際にもっとも注目したのは、いわゆる列強では無く、中小国の海軍だった。

 いわゆる駆逐艦の部隊、駆逐隊、水雷戦隊の旗艦としては、巡洋艦が欲しい(これは艦長職が、より上級職になるという海軍の人事(給料)上の問題も多少絡む。)。

 だが、海軍の予算は限られている。


 そうした中で、「夕張」型巡洋艦は、建造費が安価な割に(実際、ある程度の改設計と量産化をすれば、嚮導駆逐艦より少し多めの建造予算で済むにも関わらず、立派な軽巡洋艦になる(航続距離が短いとか、深く検討すれば、いろいろ問題はあるが、パッと見の外見上は、の話である。)と、当の日本海軍の中でさえ主張する海軍軍人がいた。)、立派な最新鋭巡洋艦だとして、中小国海軍軍人の注目を集めたのである。


 日本の同盟国である韓国が、まず、「夕張」型巡洋艦を、自国海軍総艦隊の旗艦として、日本に対して、建造、購入を打診した。

 更に、韓国の動きを見て、他の国もうごめいた。


 最終的に、各国の(自国の事情に合わせた)建造、購入要望に対応して、日本が改設計を行った結果、皮肉なことに、最初に「夕張」型巡洋艦の準同型艦を保有したのは、韓国では無く、第一次世界大戦において日本の敵国となったトルコだった。

 アタチュルクことムスタファ・ケマル・パシャは、ガリポリ作戦の際に敵国として、直接、いわゆる刃を交えた間柄とはいえ、対ソ関係で共闘を結ぶ必要から、日本との修交を積極的に望んでおり、その象徴として、「夕張」型巡洋艦の準同型艦を日本から購入したのだった。


 日本との関係から「エルトゥールル」と名付けられて、トルコに赴いた「夕張」型巡洋艦の準同型艦は、トルコの国民から大歓迎を受けると共に、あらためて世界各国の注目を集めた。

 タイやポーランドも「夕張」型巡洋艦の準同型艦の購入を決めるとともに、当の日本海軍でさえ(「南京事件」の影響から、中国沿岸部で行動可能な軽巡洋艦の保有を、主に海兵隊が求めたことから)、「夕張」型巡洋艦の準同型艦を、「湧別」として追加保有することになり、更に他の国からも引き合いがある有様になったのだった。


 このために煽りを食ったのが、韓国だった。

「乙支文徳」を購入後、「姜邯賛」を同型艦、2番艦として、日本から建造、購入して保有する筈が、いわゆる競り負けを他国との間で起こしてしまい、未だに「姜邯賛」の建造、購入の目途が立たないのだった。

 日本政府に対して、同盟国たる韓国へ優先購入を認めるように働きかけるものの、日本も長引く不況の中で造艦業界救済の一環として、「夕張」型巡洋艦の準同型艦の輸出を進めていることから、韓国に対してはいい顔をしていなかった。


 だが、それも変わる。

 同盟国、韓国が中国との戦争に突入すれば、同盟国支援が当然の事となるし、日本も戦争に突入することになる。

 日本は、違約金を払ってでも、韓国のために「姜邯賛」を建造、輸出してくれるはずだ。

 李提督は、そんなふうに考えた。 

かつて、活動報告で述べていた艦が出てきますが、どうか、お手柔らかにお願いします。


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