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第3章ー3

 更に問題だったのは、中国新政府に、張学良が味方して以降、張学良率いる勢力、旧奉天派軍閥の中にも、張学良に不満を持つ部下が少しずつ増えつつあることだった。

 まず、彼らにしてみれば、中国新政府の中にいる共産党員達は、信用しかねる存在だった。


 ソ連と張作霖率いる奉天派軍閥との関係だが、張作霖のバックに米日韓がおり、特に米韓はシベリア出兵をしたことから、非好意的中立的な関係が永らく続いていた。

 ソ連を率いるのが共産党である以上、中国共産党も同じではないか、と感覚的に共産党員を嫌う張学良の部下は何人もいた。

 そして、彼らを増やす要因が他にもあった。


 長年にわたって行われた安徽派、直隷派等の軍閥間の抗争や、いわゆる「北伐」により、中国本土は戦乱でかなり荒廃していた。

 また、南京事件や山東出兵による中国国民の被害もそれなりにあった。

 こうした中で、長年、張作霖率いる奉天派軍閥によって平和を謳歌していた満州は、中国新政府にとって安定した財源、税収を見込める宝の山だった。


 そうしたことから、張学良に対して、中国新政府は、満州からかなりの税金を納めるように指示した。

 張学良が満州の実態を詳細に把握していれば、中国新政府との折衝を、もう少しするなりして、その税金の軽減を図ったろうが、張学良自身も、張作霖爆殺事件に伴い、父の張作霖から急きょ権力基盤を受け継いだばかりで、そのあたりの満州事情に、そう詳しくは無かった。

 そのため、満州にいる張学良の部下の間で、中国新政府は苛酷な税を我々に納めるように指示しているという不満が膨らむようになったのである。


 しかも、折悪しく、張学良が張作霖から引き継いだ旧奉天派軍閥の内部対立も深刻になっていた。

 そもそも、旧奉天派軍閥において、張作霖の側近を務めていた部下と、息子、張学良の側近を務めている部下の折り合いがいいとは、必ずしも言えなかった。

 そうした中で、張作霖の側近を務めていた部下、楊宇霆が、1929年1月に張学良によって、逮捕されて即決裁判で処刑されたことは、張作霖の側近系の部下に激震を走らせていた。

 張作霖の側近系の部下の間には、楊と同じ運命が張学良によって、いずれは自分にももたらされるのではないか、という疑心暗鬼が起きていたのである。


 満州で事を起こそうとした米韓の工作員たちは、張学良と、その部下の間に、このような溝が生まれつつあることに着目した。

 そういった中で、張学良自身が北京に赴くという情報が流れて、実際に張学良は北京に1931年7月に赴いてしまった。

 米韓の工作員達は、そういった状況から、まずは張学良に不満を持つ張作霖の元側近達に接触を試みた。


「米韓が、満州問題の「最終的解決」を図ろうとしているですと」

 その中の一人、張宗昌は、この接触を受けて考え込んだ。


 自分の将来はどう見ても明るいとは言い難い。

 かつて、中国新政府が行った「北伐」の際に、自分はその前に立ち塞がっている。

 そして、今では張学良から疎んじられつつある。

 このまま行くと、楊宇霆のように逮捕、即決裁判で処刑と言う運命がいつ訪れてもおかしくない。

 それならば、米韓の企てに乗った方が。


 張宗昌は、米韓に味方することを決断した。

 他にも張景恵らが、この動きに同心した。


 米韓の工作員達は、こうして布石を打った。

 後は、実際に行動に移すだけだ。

 どのように行動すれば、米韓の本国政府、更には日本を巻き込むことが出来るのか。

 彼らは思案を重ねた。


 そう、彼らは米韓の本国政府の正式な指示で動いていたわけでは無かった。

 本国政府や現地の一部による暴走だったのである。

 このことが、満州事変勃発後、一時的に迷走を引き起こす要因となる。

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