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第3章ー2

 話は変わるが、1931年当時、いわゆる在満州の米国人や日本人、朝鮮人の間では不満が高まる一方になりつつあった。

 1928年末に張作霖爆殺事件が起きた後、息子の張学良は中国国民党左派と共産党からなる中国政府に自らの勢力を合流させた。

 これにより中国政府は満州を勢力下に置いたのだが、張学良は自らの勢力を温存し、半独立の存在であり続けようとしたことから、実際には中国政府の威令が完全に満州に及んでいるとは言えなかった。


 だが、これまで張作霖率いる奉天派の庇護によって、満州で利益を得てきていた米国人や日本人、朝鮮人にしてみれば、張学良が中国政府に合流したことにより、これまで南京事件等を引き起こしてきた中国政府の支配下に自分達がいるというのは、身の危険を覚えるものだった。

 張学良自身も、中国政府に迎合し、満州にいる米国人や日本人、朝鮮人は本国に帰るべきだと公言するようになっていた。


 従前から全くなかったわけではないが、1928年末の張学良の中国政府への合流以来、満州の民衆、特に漢民族の排米、排日、排韓運動は激しさを増す一方となっていった。

 張学良自身も後押しする中国国産品愛用運動から、米国産や韓国産、日本産の物が市場から姿を消してしまい、さっぱり満州ではそういった物が売れないという事態が引き起こされるようになっていた。

 時には暴徒と化した民衆により、米国人や日本人、朝鮮人が経営する店が襲撃される事態さえ散発するようになったが、事実上は張学良の支配下にある在満の現地警察は、それを熱心に取り締まろうとせず、黙認する事例さえ起こるようになった。


 こういった事態に、米国や日本、韓国、それぞれの本国政府が、何もしなかったわけではない。

 北京に移転した中国政府や、張学良に対し、正式な抗議等の行動を行っている。

 だが、在満州の米国人等にしてみれば、南京事件の時等のように、海兵隊を派遣する等、軍事力による最終的解決を本国は図るべきとの意見は強まる一方だった。

「満蒙は、米国にとって大事な生命線だ」

「韓国にとっても、同様だ」

「日本もそうだ」

 彼らは口々に叫び、その声は本国の世論を少しずつ動かすようになった。


 更に折悪しくというか、1929年秋に世界大恐慌が起きてしまった。

 これは一時的なもので、すぐに持ち直すと世界の多くの人が考えたが、1930年夏以降、世界大恐慌は深刻化する一方だった。

 不景気になると、一般的に世論は好戦的になり、不満をぶつける矛先を探すようになる。

 米韓日の本国世論も同様の傾向を示しだした。


 だが、皮肉なことに日本は大戦後の反動不況以降、震災不況、昭和金融恐慌と、ある意味、不景気慣れをしていたことから、(あくまでも比較的にだが)余り世論は過激な方向に向かわなかった。

 むしろ、米韓の方が世論の過激化が酷かった。


 米国民にしてみれば、これまで「狂騒の二十年代」とも謳われる好景気を謳歌していたところに、世界大恐慌の襲来である。

 満州にいる自国民を護れ、との声は少しずつ高まる一方になった。


 韓国民にしてみれば、事態はもっと深刻だった。

 間島問題等から、前々から、中華民族主義による中国政府により、将来的な韓国併合が企まれているのではないか、という疑念がくすぶっていたところである。

 そして、1930年の自国の米価保護政策に伴う日本の高関税障壁設定による、韓国内の米価大暴落は、韓国の多くの農民に大打撃を与え、娘の身売り相談請け負います、等の看板を農村部に林立させた。

 その恨みも相まって、日本を頼らず、米国を頼り、間島問題等の満州との関係について、「最終的解決」を図るべき、と韓国の政府、軍の一部は行動を計画した。

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