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第2章ー2

 世界大戦が終結した後、世界各国は相次いで金本位制に復帰していった。

 何故なら、この頃は管理通貨制度(国の信用により通貨の価値を保証する)よりも、金本位制の方が妥当であると各国政府は考えていたからである。

 また、国際的にも金本位制の採用が求められており、世界大戦後の世界各国の貨幣経済の調整を行なうために、日本も参加した1922年のジェノヴァ会議では、参加各国の早期の金本位制復帰を求める決議が採択されている。

 金本位制に復帰すると、いわゆる金の輸出が認められることになる。

 これを金解禁と呼ぶのだが、世界大戦後、世界各国は相次いで、金本位制に復帰し、金解禁を果たしているという現状が当時はあった。


 例えば、米国は1919年に金本位制に復帰し、金解禁を果たしている。

 世界大戦後に経済が大混乱した独でさえ、1924年に金解禁を果たした。

 1928年に仏が金解禁を果たすと、最早、当時のいわゆる世界の大国の中では、日本しか金解禁を果たしていない国は存在しなくなっていた。

 事ここに至っては、日本の国内において、日本の金解禁を求める声が噴出するようになった。


 ある者は、金解禁による為替相場の安定を求めた(金解禁を行えば、金1グラムが、自国の通貨幾らと固定されるため、為替相場が安定し、為替において、事実上の固定相場が実現することになる(細かいことを言いだすと違うそうですが。)。)。

 当時の日本と外国通貨の為替相場は、金解禁を行っていなかったために安定していなかったのだ。

 ある者は、日本以外の大国が金解禁を果たした以上、大国の面子から言っても、日本も金解禁をすべきだという感情論から、金解禁を叫んだ。


 更に1929年にパリで開かれた世界大戦におけるドイツの賠償金の支払い方法を定める委員会(通称は委員長の名を取って、ヤング委員会と呼ばれていた)は、ドイツの賠償金の支払いの為に、1930年に国際決済銀行を創設することを決めたが、国際決済銀行の出資国になるためには、その国が金解禁を果たさねばならないことになった。


 また、国際連盟の財政委員会の構成国の要件として、現在、金解禁を行っていることという要件が加えられる事態にも至った。

 その際に、日本は常任理事国として拒否権の発動も検討したが、実際に発動しては、日本経済の信用を大幅に毀損するという懸念から、拒否権を発動できなかった。


 事ここに至っては、日本政府は、国内外の事情から、至急、金解禁を断行せざるを得ない、と判断した。

 だが、それは極めて困難な話でもあった。


 そもそも、日本で金解禁ができなかったのは、世界大戦後の反動不況から回復しつつある頃に、他国と違って、関東大震災という天災に見舞われたのが発端だった。

 このために震災不況に陥り、これに当時の山本権兵衛内閣は対処したのだが、その対処方法として、帝都東京の大復興計画をぶち上げる等の積極財政を展開した。

 それによって、日本経済は回復したものの、今度は日本の国家財政が大赤字になったのである。

 それでも、順調に日本経済が好転を続けていけば、何とかなったのだが、次に襲い掛かってきたのが、昭和金融恐慌である。

 三井銀行が米国資本に買収される等、またも日本経済は大打撃を受けた。


 そして、1929年の日本経済は、病み上がりの状態にあるといっても過言ではない、やっと回復しつつある状況にあった。

 更に言うならば、日本経済をいざという際に支える筈の日本の国家財政は大赤字を計上しており、速やかな緊縮財政を国内外から要望される惨状にあった。

 こんな状況下で、金解禁を断行して、日本経済に悪影響が出ないのか。

 心ある人の一部は憂えるようになっていた。

 

 


 


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