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第2章ー1 世界大恐慌と日本の金解禁

 第2章の始まりです。

 この世界では、世界大恐慌とそれに対する日本をはじめとする各国の対策も、史実とは微妙に異なることになります。

 1929年10月24日、木曜日。

 後の世界大恐慌の始まりを告げる最初の角笛が吹かれた。

 ニューヨーク証券取引所の大暴落が始まったのだ。

 そして、1929年10月29日、火曜日までその大暴落は続いた。


 この大暴落が如何に酷いものであったか。

 いろいろと半ば逸話じみた嘘と本当が入り混じった話まで併せるならば、この酷さを物語る話は幾らでも出てくるが。


 10月24日からの1週間で、300億ドルもの大損害がニューヨーク証券取引所で出た。

 これは当時の10年分の米国の国家予算(なお、当時の米国は小さな政府を標榜しており、単純には現代の米国の国家予算と比較できない点に注意)より多いし、世界大戦で米国が世界各国から集めた金(ここでいう金は、文字通りの金である)全てが消し飛ぶほどだったという話一つだけで充分だろう。

 

 だが、この時点では、ニューヨーク証券取引所の大暴落が、世界大恐慌にまで至ると推測できた者は、世界中を探しても、ほとんどいなかった。


 だからこそ、1929年末に日本は、金本位制への復帰、いわゆる金解禁を推し進めることになった。

 それが、地獄へ続く道だということに気づいていた者は、この時の日本国内には、誰もいなかった。


 そもそも、日本が金本位制を採用したのは、1871年の新貨条例によるものだった。

 金本位制とは自国の通貨価値を金に裏付けられた形で定める制度の事である。

 つまり、この時、日本の通貨である円は、金幾らの価値であると定められた。

 具体的に言うならば、1円は金1.5グラムと定められた。

 つまり、1円通貨を、日本政府は金1.5グラムといつでも両替しますよ、と宣言した。

(細かいことを言うと違うのですが、説明のしやすさ優先で、以下、書いていきます。)

 だが、うまく行かなかった。


 日本の通貨には、まだまだ信用が無かったからである。

 日本の通貨よりも、金の方が信用があるので、日本の通貨を手に入れた人は、金に替えようとする。

 それが国内の日本人なら、金の国外流出という事態にならず、影響は少ないが、外国人が金への両替を行いだすと、金が国外に流出するという大問題を引き起こす。


 現代の感覚なら、金が国外に流出しても別に構わないと考える人が多々いるだろうが、前述したように金と通貨の両替を日本政府が保証している状況で、金が国外に流出しては、日本政府は金と通貨の両替が不可能になってしまい、金本位制が崩壊、日本の通貨制度崩壊と言う事態を最悪の場合、招いてしまう。

 こういった事態が生じてしまったので、日本政府は四苦八苦する羽目になった。


 金銀複本位制の事実上の導入、それでも間に合わないので、更に銀本位制に事実上移行(なお、当時のアジア諸国の社会では、清国をはじめとして銀本位制が主流だったので現実的対応だった)と、日本政府は対応に追われる羽目になった。

 最終的に、日本が金本位制を何とか確立できたのは、日清戦争の勝利により、大量の賠償金を清国から獲得できたことによるもので、1897年のことだった。

 だが、金がそれまでに大量に流出していたこと等から、1円は金0.75グラムと定められた。

 つまり、1871年当時と比べて、1円の価値は半減してしまったのである。


 そして、日本が金本位制を維持していた1914年、世界大戦が勃発する。

 この世界大戦に、世界各国の通貨制度は翻弄され、相次いで世界各国は金本位制からの離脱を宣言することになった。

 そうしないと、戦争の為に増大した外国への支払いに際し、政府が充分な資金を確保できなくなったからである。

 相次いで世界各国は、金本位制から離脱して管理通貨制度を導入した。

 その中には、当然、日本の姿もあった。

 あれ、何で、第一次世界大戦で、日本が金本位制から離脱しなければいけないの?

 という疑問と突っ込みが、多くの読者から巻き起こりそうですが。

 この世界では、日本が陸海空の諸部隊を欧州、それも主に西部戦線に本格派遣した余波、ということで、ある程度はご了承ください。


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