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第1章ー2

 だが、ロンドンに到着してみると、林忠崇侯爵とそのバックに就いた勢力が、自分、土方勇志伯爵をロンドンに送り出した理由が、よく自分にも分かったのも事実だった。


「あなたが、土方提督ですか。あの際は、本当に申し訳ありませんでした」

 英米の海軍軍人が、自分に敬礼して、お詫びの言葉を述べ、頭を下げてくる。


 約3年前の南京事件をきっかけに起こった、日(英米)中(限定)戦争の際に、日英米連合軍の陸海空部隊の総司令官を、土方伯爵は務めた。

 その際に、日英米連合軍は、航空支援の不足に苦慮する羽目になった。


 何しろ、英米海軍の空母部隊は、極東に駆け付ける余裕はなく(米海軍に至っては、ラングレーしか稼働空母が無い惨状で、日英からレキシントン級空母はどうした?と疑問を呈された。レキシントン級空母は2隻とも、ワシントン条約締結時から5年以上も経つのに、予算不足から改装、竣工が未成という有様だったのである。)、更に「日向」が改装(修理)中だったこともあり、日本海軍の「伊勢」1隻が一時は日英米連合軍の航空支援を一手に引き受ける有様だったのだ。

「鳳翔」を投入するという案も、かなり真剣に検討されたが、「鳳翔」は、日本海軍航空隊の錬成に必要不可欠と言う当時の現状から見送られた。


 最終的に、倉庫の奥でほこりを被っていた第一次世界大戦時の遺物まで日本空軍が引っ張り出し、更に上海近郊に野戦飛行場を人海戦術で急造するという荒業により、日英米連合軍の航空支援は何とか確保されることになったが、それ以来、日本政府は、

「我が国に4隻目の空母保有を認められないと、対中戦争時の英米支援は困難である」

 と主張するようになった。

 しかも、実際にそうであったから、尚更、英米両政府は苦慮する羽目になった。


 実際、同年に開催されたジュネーブ海軍軍縮会議は、主に英米の対立もあったが、この日本の主張を認めるべきだが、認めては軍拡会議になって軍縮会議では無くなるという矛盾から、最終的に崩壊してしまったようなものだった。


 英米は、1万トン以下の空母は軍縮条約における空母の保有枠外とするという案を、ロンドン海軍軍縮会議開催の際に、最初に提示したが、日本は拒否した。

「鳳翔」の使い勝手の悪さから、空母は最低でも1万トン超えは必須と日本は考えたのだ。

 更に、南京事件後も、山東出兵、張作霖爆殺等と、対中関係は日英米にとっては基本的に悪化の一途をたどっていると言っても過言では無かった。

 こういった状況から、英米は日本の要求を最終的には呑まざるを得ないという観測も、日本を強気にさせている一因だった。


 こうした前提状況から、土方伯爵は、ロンドンに赴き、英米に対して無言の圧力を加える一助を務める羽目になっていたのである。


 そして、英米等が、ロンドン海軍軍縮会議の成功にもう一つ、励みたくなる理由があった。

 それは、日本海軍の質的向上である。

 夕張型軽巡洋艦、古鷹型(青葉型)重巡洋艦、妙高型重巡洋艦、吹雪型駆逐艦が、日本海軍では建造されていた。

 何れも、ジェーン海軍年鑑に、特記されるだけの性能の軍艦だったのである。


 土方伯爵に言わせれば、

「悪い師匠(英海軍)の悪い面を見習って、ワシントン軍縮条約の制限内で、どれだけの軍艦が建造できるのか、暴走して日本が建造した」

 代物だったが、英米等、各国海軍軍人を何れも瞠目させる性能なのは事実だった。

(英海軍は、ド級戦艦を建造する等、世界の海軍の先導的役割を果たしているのも事実だが、とんでもない軍艦等を建造したことでも有名なのである。)


 そうしたことから、英米等は日本海軍の暴走を食い止めるために、この会議を成功させようとしていたのである。

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