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ソナチネは無音  作者: 或田いち
私が時計になった日
2/6

喋る紙袋


 


 知らない人にはついていってはいけない。



 大人はいけないことは教えてくれるけれど、その理由がどうしてか、詳しいことはいつも濁してしまう気がする。ダメだと言われたらやりたくなる。



 赤信号の横断。非常時の押しボタン。この世にごまんと存在するルールを、馬鹿正直に守る人間がどれほどいるのか。


 だからいっそ痛い目を見た方が良い。人は馬鹿を見て賢くなるのだ。



 私は殺されるつもりだった。



「何やってたのあんなところで」



 私を紙袋から時計に鞍替えさせた男は、おいでと言うなりそれきり私の片手を掴んで歩いていた。目だけが開いた紙袋を被ったままの私を人は二度見して、それできっと変なプレイだとか誤解されても文句は言えない。朝の10時だというのに。



 男の隠れ家というか、秘密基地というか、要するに家は、潰れたダーツバーみたいな内装だった。暗がりの中には懐かしのサッカーゲームにビリヤードに実際ダーツもあって、その扉の前で佇む私に声をかけた男は、部屋の奥に進みながら問いかけてきたのだ。


 そして私の返事がないとわかると、黒のポールハンガーにロングコートを掛けながら、手を振る。



「もしもーし」


「…」


「無視かよ」


「紙袋は喋らない」


「喋ってんじゃん」


「あっ今のノーカン」


「喋ってんじゃん」



 ちがう、今のこれはちがう。つーか誘導尋問だ。


 紙袋を被ったまま佇む私に、男は大股で近寄ってくる。その歩幅、数歩。180はあるであろう長駆、その男の足のリーチは侮れない。


 視界が真っ暗になって、アッとした時には、私の頭部は真上に引き抜かれた。

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