閑話休題 ~アラビア文字攻略~
たまに誤記があるので地道に直しています。(いないかもしれないけど)真面目に勉強してる人ごめんね。
前々回のアラビア文字講座があまりにも「ね、簡単でしょ?」という感じでテキトーすぎたので、もう少しレベルを下げてもっと簡単なアラビア文字の練習をしたい。
そもそも普通のアラビア語の文にはシャクルが一切ふってないので、katabaだろうがkutubだろうが両方ともكتبになってしまう。こういうものを読めるようになるのにはかなり時間がかかるので、全部シャクルつきにしよう。
ぶっちゃけ中原もそんなにすらすら読めるわけではない。いまだにターとヤーを読み間違えるレベル(本音)
●シャクル実践編
①タンウィーン
タンウィーンって何ぞwwwwって感じだと思うので、ものすごく簡単に説明しよう:タンウィーン=英語のa/an、つまり不定冠詞である。アラビア語の場合、複数形にタンウィーンがつく場合があるので気をつけたい。
ファトハ、カスラに関しては元の記号を二つ重ねて、ダンマに関しては尻尾を上にはねる。
بَيْتٌ
bayt(un) 一軒の家が 男性名詞・単数・主格・不定冠 ダンマのタンウィーン
بَيْتٍ
bayt(in) 一軒の家の 男・単・属格・不定冠 カスラのタンウィーン
بَيْتاً
bayt(an) 一軒の家を 男・単・対格・不定冠 ファトハのタンウィーン
※ة ء أ ىで終わっていない単語にファトハのタンウィーンをつける場合、後ろにアリフをつける。
不定冠の名詞(単数・複数など)はこのようにタンウィーンがついて-nで終わる。
アラビア語の名詞の格はたった三種類。主語、動作主になれば主格、前置詞の後ろに来れば属格、目的語になれば対格である。しかもそれはこういう感じで規則的に語尾が変化するだけなので非常に楽だ。
そしてこのタンウィーンは定冠詞اَلْ alとつくと落ち、母音だけになる。
ُاَلَْبَيْت
al-bayt(u) その一軒の家が 男・単・主・定冠 ダンマ
اَلْبَيْتِ
al-bayt(i) その一軒の家の 男・単・属・定冠 カスラ
اَلْبَيْتَ
al-bayt(a) その一軒の家を 男・単・対・定冠 ファトハ
女性名詞の場合、(大半は)以前紹介したターマルブータةが語尾につく。ターマルブータの上にタンウィーンがつくと、発音としてはtun/tin/tanになる。が、会話ではやはり読まない。そしてさきほどと同様に、定冠詞がつけばタンウィーンが落ちる。
سَيَّارَةٌ
sayyaara(tun) 一台の車が 女・単・主・不定冠 ダンマのタンウィーン
السَيَّارَةُ
as-sayyaara(tu) その一台の車が 女・単・主・定冠 ダンマ
②スクーンとワスラ ْ ٱ
スクーンは形のまま、母音がゼロという意味である。
أَنْتَ
'anta あなた(男性)
アラビア語であなたが「アンタ」であるのはただの偶然である。実際、あなた(女性)はアンティになる。男性に対して呼びかけるときと女性に対して呼びかけるときで人称代名詞の性が違うのはまるで日本語のようだが、それも偶然である。アラビア語の名詞が性・格・数で屈折しているに過ぎない。
ワスラは母音が落ちているという意味で使うのだが、普通表記しない。例えばアラビア語で「the big book」と言おうとするとالكِتَابُ الكَبِيرُ al-kitaab(u) al-kabiir(u)になるのだが(アラビア語だと形容詞にも定冠詞がつく!)、こういう時真ん中のuとalがくっついてしまってaが落ちてしまう。この後ろのalのアリフの上にワスラを書くわけである。
ワスラに関しては、アラビア語学習が進むと自然に覚えるのではと思う。
③シャッダ ّ
なんだこのWの出来損ないみたいな字はと思うかもしれないが、これは日本語でいう「っ」である。子音を重ねる役割を果たす。
سِتَّةٌ
sitta(tun) 数字の6
まあ同じ子音を繰り返すだけなので、ヌーンنにシャッダをつけると「مِنِّي minnii 私から」になって「っ」ではなく「ん」になるけど。さっきも「車」でなんでヤーيが一つしか出てきてないのに、سَيَّارَةٌ sayyaara「サイヤーラ」になってyが二つ重なっていたたのはそういう理由。
ちょっと気をつけなくちゃいけないのは、ダンマとファトハはシャッダがついてもそのままだけどカスラの時だけはシャッダのすぐ下にカスラを書かなければならないことだろう。
●太陽文字と月文字
アラビア文字には太陽文字と呼ばれる文字があり、これらの文字の前に定冠詞が来るとalのlが落ち、代わりに後ろに来る子音を繰り返す。これは太陽الشَمْسُ shams(un) という単語がal-shams(u)ではなくash-shams(u) アッシャムスになることに由来している。(القَمَرُ al-qamar(u)『月』のlはlのままである)
~太陽文字一覧~
ت taa'
ث thaa'
د daal
ذ dhaal
ر raa'
ز zaay
س siin
ش shiin
ص Saad
ض Daad
ط Taa'
ظ Zaa'
ل laam
ن nuun
つまりテレビ تِيلِفِزِيُونٌ tiilifiziyuun(un)(正しいアラビア語ではتِلْفَاز tilfaaz(un))などの単語は、alがつくとاَلْتِيلِفِزِيُونُ at-tiliifiziyuun(u)になる。さっきの سَيَّارَةٌ sayyaara(tun)も定冠詞がつくとالسَيَّارَةُas-sayyaara(tu)になっている。
●独・頭・中・尾で形が変わるシリーズ
◎غとع
→中字は逆三角形
المَغْرِب
al-maghrib(u) モロッコ
このガインとアインは中字になると見た目逆三角形になる。
◎ي
→頭・中字形はターと他人のそら似
يَدٌ
yad(un) 手 単・女・主・不定冠 身体の語彙を表す単語はターマルブータがつかないのに女性名詞であることが多い。
تَكَلَّمَ
takallama 話す
この二つは点が上に来ているか下に来ているかで大分違うので気をつけたい。アラビア文字は慣れるまでجとخを読み間違ったりするので、点の位置をきちんと覚えよう。「taa'は点がtopに来てるからt」みたいな覚え方するといいかもbyアブクール
●後ろの字とくっつかない字
アリフ「やだよぉー。僕、後ろのバーとなんてくっつきたくないよぉー」
バー「お前いつもそうじゃん。後ろがラームの時もアインの時もくっつきたくないって言ってたよね?」
ラー「俺も嫌だ」
ザーイ「あたしも嫌だわ」
ダール・ザール・ワーウ「私も無理」
バー「しょうがねえなお前ら。分かった、お前らは特別に頭字、中字の時はくっつかなくていいから! それで我慢して!」
以上のような理由(大嘘)で、ا د ذ ر ز و は後続する文字と繋がらないため、例えば『baab(un) ドア』という単語を書こうとすると、بَابٌになってアリフの後ろにバーが来てもつながらない。対してラームは語頭・語中・語尾で接続するので『لِمَاذَا limaadhaa なぜ』『كَلْبٌ kalb(un) 犬』『ْهَل hal ~か』になり、アリフと混乱しやすいかもしれない。(アリフは尾字形だとただ上に上がるのに対し、ラームは下にもぐってから上にはねる)
これらの文字が並んでしまうと全部単独形で書くことになってしまう。اَوْ aw あるいは
●アクセントについて
アラビア語には一応アクセントがあるのだが、ある単語のどこに強勢を置いても意味が変わらない。つまり英語でいうPREsent(名詞)→preSENT(動詞)みたいなものはない。
アラビア語のアクセントは後ろから二番目か三番目の音節に来る。
例
هُوَ
húwa 彼、それ 「フ」ワ
شَجَرَة
shájara(tun) 木 単・女・主・不定冠 「シャ」ジャラ
مَدْرَسَة
mádrasa(tun) 学校 単・女・主・不定冠 「マ」ドラサ
كِتَابٌ
kitáab(un) 本 単・男・主・不定冠 キ「ター」ブ 長母音がある場合、そこにアクセントが来る。
***
さて、ここまで覚えたのだから自分の名前をアラビア文字で書いてみたいものだ。しかしアラビア語と日本語では発音がかなり違うので表記も変わってくる。
まず、アラビア語だとなぜか外国人の名前は母音をのばして書かないといけない決まりがあり、ヤマダとかはヤーマーダーになってしまう。
山田 → ヤーマーダー
يَامَادَا
yaamaadaa
さらに「お」や「え」といった母音もないので、「う」「い」に置き換わる。
太郎 → タールー
تَارُو
taaruu
上記の理由で、私の名前を書くと「ناكاهارا naakaahaaraa ナーカーハーラー」になる。実に言いづらい。アラビア語版ドラえもんだとのび太はْعَامِر アーミル 3aamirなのでそれでもいいかなと思ってしまう。
アラビア語で「私は~です」は「..أنَا 'anaa...」になる。最後の部分に名前を入れれば完成である。
'anaaは「私」の意味である。そしてアラビア語にはなんとbe動詞がないので、現在形の場合ABと書けば「AはBです」の意味になる。この辺はちょっと楽である。