لَنْ اَدَعَكِ تَنَامِي اللّيلة
真面目なアラビア語講座ばっかりだと疲れちゃうので息抜きを。
アブクール「最近流行ってるアラビア語のポップスを紹介するよ」
Saad Lamjarred - LM3ALLEM ( Exclusive Music Video) | (سعد لمجرد - لمعلم (فيديو كليب حصري
https://www.youtube.com/watch?v=_Fwf45pIAtM
中原「なかなか面白いPVだな。モロッコ行ってみたい」
アブクール「歌詞聞き取れる?」
中原「enta m3llemってたぶんフスハーでいうanta mu3allimって意味だろうから、あなたは先生だ、かな」
アブクール「正解! 僕のおかげで多少はアラビア語できるようになったんじゃない?」
中原「いや、アラビア文字には慣れたけどまだ全然分からんな」
アラビア語のポップスなんてパッション屋良と間違えて検索した結果出てきたYaraぐらいしか知らない。アブクール君の謎のレバント方言押しのせいで、多少アーンミーヤにも興味が出てきた。
中原「アラビア語は難しいよやっぱ」
アブクール「確かにフスハーの文法は難しい。でもアーンミーヤは簡単になってるから、フスハーやった後だと楽すぎてビックリするかもよ」
アラビア語と日本語を比較すると、アラビア語の様々な文法要素が日本語にないことに気づかされる。
・定冠詞(定冠・不定冠という概念)
・性 男性・女性
・数 単数・双数・複数・少数・集合名詞
・格 主格・属格・対格
・性・格・数による名詞、動詞、形容詞の屈折
・人称活用 一人称単数・一人称複数・二人称単数男性・二人称単数女性・二人称双数・二人称複数男性・二人称複数女性・三人称単数男性・三人称単数女性・三人称双数男性・三人称双数女性・三人称複数男性・三人称複数女性
・時制 現在・過去(その他の時制は他の文法要素との組み合わせで表現する)
・法 直説法・接続法・要求形など
中原「アブクール君は日本語難しいと思わないの?」
アブクール「僕は感覚で日本語を覚えたから、あんまりそういうことを考えたことないな」
中原「それはすごいな。でもアブクール君の日本語上手いよ。今まで結構いろんな日本語勉強してる外国人に出会ったけど、トップクラスだわ」
アブクール「どうだ、すごいだろ(ワハハ」
中原「日本語は屈折はないからその点簡単だけど、日本語の文法は難しさのベクトルが印欧語族の言語とは違う気がするな」
アブクール「例えば?」
中原「まー色々。特に自動詞と他動詞とかは上級者でも割と間違ってるよ。『日本語の勉強を始まる』の類の間違いはよく聞くね。
『分かる』『できる』は『が分かる』『ができる』で自動詞扱いだけど、ヨーロッパの言語じゃ『分かる』も『できる』も目的語がとれる動詞になるから『を分かる』と言ってしまったりするしね。文脈によってはOKになるけど、『日本語をできる人』はやっぱりちょっとおかしい」
日本語には『格』はない。だが格助詞を動詞に応じて使い分けている。「私は魚が食べたい」と言った時、「魚を食べる」が「魚が食べたい」になるのはただ単に後続するものの性質による。「私は魚が食べる」がやはり許されないのは、他動詞が「を」を要求するからではないか。後続するものが形容詞や自動詞なら「が」を使い自己説明的になるのだ。「私は日本語が好きだ」と言えば、I like JapaneseというよりはAs for me, Japanese is likableという文構造なわけだ。この最初の「私は」という部分は「私」を話題化しているだけであって、後続する用言に何ら影響を与えないポジションにある。「は」は格助詞ではなく、文に情報を付加する役割を果たすわけだ。「私は胃を手術した」という文の主語が「私」ではないのも「私」が主題であると考えれば納得がいく。
アブクール「日本語の敬語はある意味で人称活用みたいなものだな。『参ります』と言えば『私が行きます』だと分かるし、『いらっしゃいます』って言ったら自分より偉い誰かだからね」
中原「くれる・あげる・もらうとかも『買ってあげるよ』って言えば明らかに主語が誰なのか類推できる。
ね・よ・わみたいな終助詞(間投助詞)も同じような役割を果たすな。『今行くよ』って言ったら明らかに『(俺が)行く』んだし、『食べるよね?』って聞いたら誰か別の人のことだ。中国語にも語気助詞というのがあるし、アジアの言語はこの辺のモダリティが発達してるな」
さきほどとは逆に、アラビア語にも日本語の文法の中にある様々な要素が存在しない。
・「は」と「が」など助詞の使い分け
・自動詞・他動詞による動作の主体性の表現
・「た」や「いる」などのアスペクト寄りの時制
・助数詞 一個、一本、一台など
・な形容詞とい形容詞 きれいな人 かわいい人
・終助詞(間投助詞) よ・ね・わ・ぜ・ぞなど
・授受動詞 くれる・あげる・もらう・やる・いただく
・敬語 尊敬語・謙譲語・丁寧語など
・「よう」「そう」など うれしそうだ かなしいようだ
中原「そういや前に、『日本語は教科書通り喋ろうとすれば難しくないが、日本人のように喋ろうとすると難しい』って言った人がいたな。日本語文法は分析しようとするとどつぼにはまりそう」
アブクール「お互いの言語の特徴を理解して、うまく言語学習に役立てればいいのさ」
外国語というのは母語から離れていればいるほど、習得しにくい文法要素が増えていくのだろう。
もっとふざけた感じにしようと思ってたんだけど段々ガチのアラビア語講座になってるような……