夜空の下で姫と
ーラクトー
「……あっっんもぉ!!!」
長い髪を震わす。乱れた髪から涙のにじんだ目が物言いたげに俺を睨む。
「……どーした、ミュリア……」
焼きたての俺の小指ほどしかない魚を貪る。小さくて身も小さく、骨ばかりだ。
「わたくしっ!こんな魚よりA5ランクの牛肉をナイフとフォークで少しずつたべたいですわぁぁあっ!!!!」
ジタバタと足をふるわせ、小さな魚を下品に口に放り込む。
「ないものねだりはやめろよ、、、」
呆れてる声でいい捨てる。ミュリアは小さく体を震わせ、うるさいですわっと指をさしてくる。
「まったくもぉ……わたくしを早く見つけないかしらね、あのバカ共……」
満天の星空を眺め、目がキラキラと星光を反射して輝く。その表情は、捕らわれた姫を連想させた。
「俺についてきたのはミュリアのほうだろ?」
「えぇえぇっ!知っていますわっ!そりゃわたくしは、自分の意志できましたわよっ!?……でもっっ!」
ばっと立ち上がって寝袋に指をさす
「外で寝させますっ!?!?ふつう!!!!」
ドンっと片足を踏む。顔にシワがよっている。続いて川を指さす。
「お風呂は川!?!?!?」
泣きそうな目をこすって俺を強く睨む
「ありえませんわっ!ありえちゃいけませんのっ!一国の姫ですわよっ!?おーひーめーさーまっっ!川?冗談じゃありませんわっ!!!!!」
高音が響く。
「……戻る?」
はぁとため息混じりに言ってみる
「…わ、わるかったですわ……わたくしの今の兵は意識が低いですわ…このままじゃ、ダメって気づいたのですわ……わたくしはこの紋を守らないといけませんの。それには、わたくしが強くなるまで、守られていませんと。今は静かにする時。ですわ。」
そう言って真剣に俺を見つめてくる。
「え、なに?俺って盾役だったの??」
ふっと笑い混じりに真剣な雰囲気を壊す
「?えぇ……。わたくしを、守る。」
まんざらでもないのか、と笑いそうになる。
「まぁ、わたくしの力はまだまだですわ。」
ふっと薄く笑い、手を空に近づける。
「見ててくださる?」
右手のひらを指さし、俺に目配せをする。俺は小さく頷き、白い右手を見る
「~~~」
ボソボソと何かを呟くと、最後に大きく息を吐く。
『ボファっ!!』
大きな炎が手の中で転がる。
「…こ、れは、驚いたな……。」
炎をこっちに向けられる。赤と黄色が混じった溶岩のようなそれは、絶対当たったら死ぬと思わせた
「えちょあ、!?!」
思わずびっくりとその場に座り込む。炎の塊が近くて暑い。
「クスクスっやるわけないでしょ?ばかねっ」
そう言って炎を消す。こんな力あるのなら、自分一人くらい守ることなんて容易そうなのに。