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 入学式、オリエンテーリングと続いた行事ラッシュもひと段落、今日からは通常授業開始だ。


 通常授業があると言っても、桃香は朝練が始まるし、私は生徒会で朝のミーティングがあるのでほぼ毎日早起きしなければならない。母も仕事が忙しい人なので、必然的に家事は3人全員で当番制になっている。


「…よし。完璧」


 目の前には大きさの違う3つのお弁当箱。中のおかずは量は違えど同じ。ご飯は甘めのチキンライス、昨晩のうちに作って置いた一口サイズのクリームコロッケ、コールスローサラダにベーコンとほうれん草入りのオムレツ、ボイルした一口サイズのブロッコリーと人参。


 桃香ももかの好物がいっぱいだ。桃香は作る分には和食の方が得意なのだけれど、好物は洋食だったりする。対して私は和食が好きで、作るのは洋食が得意だ。どうもお互いの好物を作り続けた結果こうなってしまった。ちなみに母は好き嫌いなく何でも食べる。


 お弁当の合間に朝ごはんもできた。トーストにスープ、サラダとフルーツに牛乳。テーブルに並べ終わったところに桃香が入ってきた。


「わ! 美味しそう! お姉ちゃん、コロッケ味見したい」

「そういうと思って、ほら」


 別皿で取って置いたコロッケの残りを箸で差し出してやると桃香はそのままぱくりとかぶりついた。朝から「あーん」して食べさせることができるなんて、料理を頑張って覚えた甲斐があるなあ。おいしそうに口をもぐもぐさせている桃香は本当に愛らしくてついつい次の一口を差し出してしまう。餌付けってこういう気分なのだろうか。


「ほら、あともう一つだけよ」

「ん~~!! やっぱりお姉ちゃんのコロッケ最高に美味しい!! お姉ちゃんこそいいお嫁さんになるよ!!!」


 桃香がそんなに喜んでくれるなら桃香の嫁でもいい。毎日でも桃香の為にご飯を作ってあげることも喜んで引き受けよう。そうして毎日桃香にあーんしてあげるのだ。素晴らしく幸せだな、それ。


 嬉しそうにお弁当の包みを学校用のサブバッグに入れる桃香を見ながら朝から脳内にお花畑を巡らせる。


「あ、お姉ちゃん、今日の昼休みなんだけど、クラスの子と食べる約束しちゃって…」

「あら、そうなの。いいことじゃない」


 ちょっと残念だが、クラスに仲の良い友達ができるのは良いことだ。むしろいつまでも姉とばかりご飯を食べていたら、クラス内で孤立してしまうだろう。桃香の為にもそれは良くない。でも時々はお姉ちゃんとご飯食べてくれるとうれしい。そんな複雑な思いを胸に、桃香のクラスでの様子などを聞いてみる。


「仲良くできそう?」


 セレブなお嬢様お坊ちゃんがほとんどの学校だ。感覚的なズレや常識の違いはたくさん出てくるだろう。心配でもあるが、ここは様子を見なければ。


「うん、あのね、入学式の日にお姉ちゃんが連れてきた、倉田くらたいちごちゃんって子が、すごくいい子で、一緒にご飯食べようって言ってくれたの」


 桃香の言葉に入学式の日に上級生に絡まれていた小柄な少女を思い出す。あの子か。確かふわふわした色素の薄い髪と円らな目をした西洋人形みたいな子だったな。桃香と二人で並ぶとすごく目の保養になりそうだなあ…。

 ただ、ゲームにはそんな子は登場していなかったと思うのだけど、モブにしては可愛かったなあ。

 確かゲーム中で桃香と仲良くなるクラスメイトは…。


「それと、香川かがわ茱萸ぐみちゃん。真面目で、クラス委員長になった子なんだけど、すごく親切に学校のこと教えてくれたの。なんでも初等科からずっと桜花学園なんだって!」


 ああ、そうだ、ゲーム中で桃香の親友になる少女、香川茱萸だった。眼鏡のショートヘア、生真面目でちょっととっつきにくいけれど、ツンデレで桃香の事を何かと気にかけてくれる良い子だった。もし選べるものなら転生先は恋敵役な姉より公式親友のクラスメイトの方が良かったと、転生当初思ったこともある。

 まあ、その場合高等部に入るまで桃香には出会えなかったのだから、姉でよかったと今では思っているが。

 彼女も一緒ならまあ大丈夫だろう。

 ゲーム中のお昼休みの行動は香川茱萸とお昼を食べるか、校内のマップに従い、別の場所へ移動するというもの。彼女とご飯を食べるということはすなわち攻略キャラのところへは行かないということでもある。

 まあ今のところまともに知り合っている攻略キャラが少ないというのもあるが。


「帰りはどうする? 私の方は来週の生徒会主催の新入生歓迎パーティーの準備もあるから、多分同じくらいの時間に帰れると思うけど」

「帰りはお姉ちゃんと帰るよ。二人ともお嬢様だからお迎えが来るらしいし」


 私たちの家はたまたま学園の徒歩圏内なので、登下校は基本、徒歩だ。しかし、お金持ちのセレブ校では外部生と一部の寮生を除くほとんどの生徒は車での送り迎えが付いている。高校生らしく学校帰りに寄り道買い食いなどはお金持ちの世界には存在しないらしい。


「それじゃあ、登下校は遠慮なく桃香を一人占めできるのね」


 そう言って撫でると桃香はええ~っと言いながらも嬉しそうに笑ってくれた。うん、やっぱり姉でよかった。

 私は今の生活の幸せをかみしめながら、桃香と一緒に家を出た。



 校門を入ったところで、桃香は部室棟と武道場へ、私は生徒会室のある南校舎へと別れた。


「そういえば、執行部希望者の選別終わったのかな?」


 昨日生徒会長の篠谷しのやにお前のファンクラブ状態なんだから責任もって選別しろと押し付けて帰ってしまったので、朝一ブリザードスマイルで攻撃されそうだ。そう思っているところに、絶対零度の気配に背後を取られた。


「ええ、終わりましたよ。おかげさまで。菅原すがはら先輩が追加の書類も持って来てくださったので、閉門ギリギリまでかかりましたけどね」

「わ、わ~、さすが優秀な生徒会長さまですね~。今期の生徒会運営は会長さえいれば安泰ですね~」


 油断した。いつも先に生徒会室にいるから、後ろからくるなんて予想してなかった。剣道止めたせいで勘が鈍ってるのかな? 何気に菅原を生徒会室に誘導したのも恨まれてる。


「ご謙遜を。我が校の今期生徒会運営は副会長の手腕で持っていると言っても過言ではありません。さっそくその手腕を発揮していただきたいので、よろしくおねがいしますね?」

「……はい」


 ここは状況的に不利だ。おとなしく従おう。

 そんなわけで私は朝一篠谷が昨夜選別した執行部候補生の研修のためのスケジュール作成に追われることになった。くそう。粘着王子め。


「ああ、そう言えば昨日、葛城かつらぎさんに注意されていた、小林こばやしくんの書類もありますよ」

「え?! 推薦もらえたんですか??!」

「なんでもクラス内で立候補者が多すぎて揉めに揉めた挙句、あみだくじで決まったそうです」


 栗山くりやま先生らしいと言えばらしいが、どうしよう。ここは仕方なく受け入れる感じで乗って置いて、監視と行動制限に利用するか…。あとはできるだけ忙しくこき使って私に絡む時間が無いようにしよう。


「栗山先生の推薦じゃ仕方ないですね」


 大幅に着崩した服装だが、実際は校則違反にはなっていない。桜花の校則ではジャケットとパンツ、女子の場合はスカートが規定のものを身に着けていればインナーは自由となっている。かといってあそこまでオリジナルアレンジで来られると、問題にはなるのだが、その辺りは仕事への取り組みや素行でどうにかしてもらうよりない。


「…代議会辺りがうるさそうですね」


 篠谷のため息交じりの言葉に、生徒会の天敵ともいうべき代議会のツートップの顔が浮かんだ。

 代議会とは各クラスのクラス委員による生徒議会と部活動の部長たちによる部長会で構成された生徒たちの代表者組織の事だ。予算編成や校則改正などについて議題を提示したり、生徒総会の招集なども行う。行事などの実際の運営を行う生徒会と執行部に対して、生徒側の立場で意見する組織だ。

 その代表である代議会議長、一之宮いちのみや石榴ざくろは何かと生徒会に因縁を吹っかけてくる厄介な相手だ。副議長の吉嶺よしみね橘平きっぺいと共に、3年の双璧と呼ばれている。ちなみにこいつらも桃香の攻略対象だった男達だ。


「一之宮先輩は制服のブランドを勝手にお気に入りの別のブランドにオーダーで作らせたりしてますから服装のことで文句は言えないでしょう」


 同じデザインの制服を、別のブランドにオーダーで作らせる意味あるのか?その話を聞いたときに思ったのは金持ちの思考は理解できないということだった。


「だといいんですけど」


 代議会のことになると、篠谷とうっかり意気投合してしまいそうになる。それくらい、代議会の3年生は生徒会にとっては面倒くさい存在なのだ。




 昼休みは教室で食べることにした。桃香は一緒じゃないし、外を歩けば何かと用事を頼まれる。望んで得た立場とはいえ、多少煩わしい。


「それでね、その時の桃香の顔がもう可愛くて可愛くて…。抱きしめたい衝動を抑えるのが大変だったのよ」

「はいはいはい、いい加減耳にタコだよ。確かにあんたの妹さんは可愛かったけどさ」

「でしょう? 可愛いうえに性格も素直で優しくて、家族思いの良い子なの」


 妹と過ごせない昼休み、私はクラスメイトの柿崎かきざき由紀ゆきとお弁当を食べながら、妹萌え話を聞いてもらっていた。彼女とは桜花に入学してすぐに仲良くなった。お嬢様なのに気取ったところのない、ボーイッシュな由紀は女生徒からも人気がある。彼女は歳の離れた弟がいるらしく、私が妹萌え話を聞いてもらう代わり、私は彼女の弟萌え話を聞く。実に良くできた親友だ。


「うちもさあ、こないだ帰ったら幼稚園で作ったっていう折紙を、『おねーちゃ、あげうー。』って渡してくれるの。いやあ、うちの弟は地上に降りた天使だね。思わず鼻血が出るかと思ったよ」

「確かにこの前見せてもらった写メは可愛かったわね。横でとろけた顔してる由紀はとてもファンには見せられた姿ではなかったけれど」

「そういう真梨香だって、妹さんの話してるときは時々視点がエロおやじみたいになってるから気を付けた方がいいよ」


 そんな風に、お互いに語り合う様は内容を冷静に聞くとドン引きかもしれないが、半径3メートル離れた定点カメラなら、仲良し女子高生のガールズトークに見えなくもないだろう。多分。


「そういや、来週の新入生歓迎パーティー、真梨香は誰とパートナー組むの?」

「生徒会の2年生はホスト役だからパートナーなしでも構わないことになってるの。…というのは篠谷会長が女の子の誘いを断る口実なんだけどね」


 この学校はセレブの通う学校なので、パーティーと名の付く行事は基本的に男女ペアとなる。とはいえ、新入生は中等部からの持ち上がり組以外はパートナーを組めるほどお互いを知らないので、この新入生歓迎パーティーに関してのみ、1年生は総合名簿順でパートナーを組む。総合名簿順というのは全クラス合わせての名簿順で、クラスの枠を越えたパートナーを作ることで、今後のクラス同士の連携を取りやすくする目的らしい。

 クラス同士の連携の前にクラス内で結束を固める方が先なんじゃないかと思ったが、伝統という名の良くわからない慣習で、そうなっているらしい。

 桃香の相手は1年B組の、加賀谷かがたにそう、初等部から桜花に通っている生粋の桜花生だ。ついでに生徒会会計でもある。彼は中等部でも生徒会長をしており、その手腕を買われて高等部進学前から生徒会会計就任の打診がされた優等生である。

 そして、桃香の攻略対象だ。まだ幼さの抜けきらない、線の細い美少年で、サラサラの栗色の髪をぱっつん気味のショートレイヤーにしており、私は心の中でひそかにマッシュルームと呼んでいる。クールで表情に乏しく、口数も少ないが、仕事はきっちりこなしてくれる。

 攻略キャラ達の中では比較的まともな部類だとは思うんだけど、桃香を任せられるかっていうとちょっと頼りないし、こいつのルートも色々厄介な困難が桃香に降りかかってくるので、できれば回避したい。その為にも、パーティーで発生する、 こいつと桃香の花の絆フラグをどうにか叩き折らなくちゃなあ。


 その他にもこのパーティーで残りの攻略キャラとの初対面イベントが連続して発生する。正直生徒会の仕事どころじゃないのだが、なってしまったものは仕方がない。仕事は仕事できっちりこなしつつ、桃香の身辺に気を配るしかない。


「いっそのこと桃香とパートナーになれればいいのに」

「それは…一部のマニアには受けそうな光景だね」

「あ、そうだ、由紀、パーティーの間中桃香のボディーガードしてくれない? あんなにかわいい子、男どもが放っておかないと思うのよね」

「う~ん、まあ、構わないよ。オネエチャンは心配性だね」

「ありがとう。やっぱり由紀は頼りになるわ」


 由紀がそばにいてくれれば私も多少は安心できる。いざイベントが発生してしまったら、邪魔ができるのはおそらく私だけなんだけど。攻略対象きけんじんぶつが桃香に近付いたら教えてもらうように頼んでおこう。


「パーティーといえば今年は真梨香はどうするの? 去年のあれも面白かったけど。今年からは校内行事の宴席パーティーでは定められた一定以上のドレスコードを守ることって規則ができちゃっただろう?」

「さすがに用意するしかなかったわよ。まさか規則を作ってくるなんて思わなかったもの。」


 桜花学園内でのパーティーでは、基本的に盛装することが暗黙のルールになっている。元のゲーム中で、姉からそのことを教えられた桃香は、一張羅のワンピースを着て出席するのだが、華やかな高級ブランドのドレスに身を包んだお嬢様たちに囲まれ、悪目立ちしてしまうのだ。

 その姿を3年代議会議長、一之宮石榴に見とがめられ、『貧乏くさい出で立ちで恥ずかしくないのか』と嘲笑される。その上で、一之宮は『あまりにも哀れだからこれでも身に着けていろ』とスーツの胸に挿していたカトレアの花を桃香の髪に挿して立ち去るのだ。これが一之宮と桃香の花の絆イベントになる。

 私のかわいい桃香を侮辱するとは許しがたい暴挙だ。このイベントは全力で阻止させてもらう。


 このイベント回避には桃香が周囲から浮かない程度に着飾ることが必須だ。着飾ったら着飾ったで可愛いから目を引いてしまうかもしれないが、その時はその時で策を練ろう。何より私が桃香を着飾らせたい。


 とはいえ、我が葛城家は庶民であるので、桜花のセレブお嬢様と同レベルのドレスとなると、負担が大きい。そこで去年の私の新歓パーティーの時に、桜花出身である母に相談してみたところ、母の時代はそこまでドレスアップの傾向が強くなく、特待生は制服での出席も多かったと言われた。

 言われてみれば桜花には私や桃香の他にも特待生がいる。中には私たちと生活レベルがそう変わらない子もいるはずで、真梨香だって桃香に忠告したとしてもドレスは持っていなかったはずだ。ゲームではその辺りの描写がなかった。


 そこで、私は去年試しに制服で新歓パーティーに出席したのだ。

 結果、制服姿は私一人という素晴らしく悪目立ちする結果となり、案の定一之宮石榴と吉嶺橘平に絡まれた。そこで、制服は本来冠婚葬祭にも通用するフォーマルな衣装であり、また桜花の制服を着るということは学園の伝統への敬意と誇りを示す行為なので、それを馬鹿にすることこそ母校への冒涜だと言い返し、もちろん花も受け取らなかったら、後日奴は生徒議会を招集し、学園行事のパーティーのドレスコードを規則にしてきやがったのである。

 誰だよ、バカ殿に権力持たせてるの。


 仕方なく、特待生仲間やその頃いくつか繋ぎを作っていた人脈を頼りに学園理事会に掛け合って、特待生の負担軽減の為、パーティーでの盛装を学園行事への参加のための学用品として学園が特待生に付与する奨学金での経費購入を認めさせた。あの時は本当に大変だった。


 そんな経緯もあって、今年の桃香のドレス購入については母に負担をかけることなく済みそうだ。ある意味怪我の功名である。


「まあ、レンタルだけどね」


 さすがに桜花のお嬢様のように一回のパーティーの為だけにオーダーでドレスを作るなんてことはしない。桃香が桜花に合格してから、母の休みに合わせてドレスを選びに行き、レンタル予約も終了している。試着の時は本当に楽しかった。恥ずかしそうに試着室から出てくる桃香が可愛くて、あれもこれもと着せて楽しませてもらった。

 写真もいっぱい撮って、私の桃香フォルダにしまってある。

 攻略キャラの男どもが見るのはせいぜい可愛い桃香のごく一部だけだ。ざまあみろ。


「桃香のドレス、名前に合わせて桃色にしたの。最近ネットで見つけた西陣織の和服をリメイクしたドレスで、とても華やかなの。丈は短めで桃香のひざ下の綺麗なラインが出るデザインで…。上着はシフォン生地でふんわりしていて桃香の優しい雰囲気に良く似合っているのよ」

「妹さんのドレスにかまけて自分のドレス忘れてないだろうね?」


 もちろん忘れてはいない。というか、自分のは適当でいいと思っていたら、今度は妹が俄然張り切りだして、母と二人して私を着せ替え人形にしたのだ。多少疲れはしたが、桃香が喜んでくれたのでよしとする。

 ちなみに私のドレスは名前に関係なく、鮮やかなオレンジと紅色のグラデーションのアフタヌーンドレスだ。個人的にはもう少しタイトなラインのスカートの方が良かったのだが、桃香がどうしてもこっちがいいと言ったので、膝上丈で裾がふわりと広がったデザインのものになった。脚が出るデザインなので多少恥ずかしかったが、桃香にさんざん私の好みの衣装を着させた後なので文句も言えなかった。上着は柔らかなオーガンジーの袖が付いたボレロだ。オフホワイトで清楚なデザインだ。


「正直私にあまり可愛い系は似合わないと思うんだけどね~」

「そんなことはないだろ。妹さんの見る目は確かだね。真梨香、これはパーティーで覚悟した方がいいよ」


 桃香同様に私の着せ替えもばっちり写真を撮られまくった。最終的に決まったドレスの試着写真を由紀に見せると、驚いたように目を瞠ってそんなことを言った。覚悟って何?似合ってなくて笑われる覚悟だろうか?


「こりゃ、篠谷君も気が気じゃなくなるね」

「会長か…改めて桃香に近付いてくるようなら確かに覚悟がいるわね。絶対に桃香は渡さないんだから」


 由紀の言葉に決意も新たにしていると、なぜか可哀想なものを見る目で見られた。同じシスコンブラコン仲間なんだからそこはがんばれお姉ちゃんって応援してよ。


「……本当、可哀想だなあ」

「すごく失礼なことを真顔で言うのやめてよ~」

「いや、あんたの事じゃなくてあっちの話だよ」

「???」


 由紀は時々よくわからない。

 その後も由紀はやれやれと溜息をつきながら、真梨香は自覚がなさすぎるとか、妹の心配をしてる場合じゃないとか散々に言われた。いったいなんだっていうのだ。

ドレスなどの知識は適当です。


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