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今回もちょっと短めです~。

 とりあえず、生徒会の仕事に向かわなくてはならないのだが、この状態で桃香ももかシェリムの前に置いて行く訳にはいかない。


菅原すがはら先輩、申し訳ないんですが、ジャムシード君を男子剣道部の部室に案内していただけませんか?」


 通りすがりに巻き込まれてしまった先輩は不運だと思うけど、この際頼ってしまうことにした。幸い、先輩は急ぎの用事がないからと快く引き受けてくれた。


「ああ、まかせろ。こいつを津南見つなみに引き渡せばいいんだな?」

「私は彼女と一緒に行きマス! ちょ…離してくだサイ!!」


 菅原先輩がシェリムの襟首を掴んで引き摺っていく。普段から寮を抜け出したり問題を起こす生徒を引き摺り回しているという噂は本当らしく、手慣れている。二人が充分に遠ざかってから桃香に向き直った。


「桃香、とりあえず部活にはいつも通り行きなさい。もし練習中に彼がちょっかいを出してくるようならすぐ女子部の主将の雪柳ゆきやなぎ先輩に言いなさい」


 雪柳先輩は明るく元気の良い女子部の主将だ。堅物の津南見とは馬が合わないらしく、ほとんど会話らしい会話をしているところは見たことがないが、男子部の部員が練習の邪魔をしてきたとなればちゃんと対処してくれるはずだ。

 それに一応入部はまだ初日、ゲームの通りならば入部初日はシェリムの言動に津南見は怒りはするものの、二人の睨み合いのみで終わり、桃香の『これからこんな状態で大丈夫かな?』というモノローグで終了する筈だ。

 問題となる、堪忍袋の緒が切れた津南見とお小言にうんざりしたシェリムの試合イベントはまだもう少し日数がたってからだから、今日のところは桃香にいつも通り部活に行かせて大丈夫だろう。


「桃香がジャムシード君を怒るのも分かるけれど、ああいう手合いは相手にしないことよ」

「…わかった。本当はお姉ちゃんにちゃんと謝ってもらいたかったんだけど…」

「それについては一応謝っては貰ってるから気にしないで。さ、部活頑張ってらっしゃい」


 そう言って送り出すように肩を叩くと、大きな丸い目がじっとこちらを見上げてきた。…桃香、そんな可愛い表情、男の子相手とかにしたら絶対襲われるからやめた方がいいよ。上目遣いのマイ嫁の表情に抱きしめそうになる衝動を抑えつつ、首を傾げて見せる。


「どうしたの? 何か心配事?」

「お姉ちゃん、もう剣道やらないのかなって…」


 もともと桃香は姉の私が習っていた剣道を後を追うようにして習い始めた。そこで才能が開花した。

 私としては桃香の剣道の才能も知っていたし、小学校、中学校を通して剣道に打ち込む桃香が本当に楽しそうなので、そこだけはゲームの設定を守って良かったと思っている。真梨香わたしにもそれなりの剣道の才能はあったようだが、桃香のそれとは天地の差だし、元々『私』はどちらかというとインドア文系なのだ。前世と違って運動神経の良いこの身体はありがたいし、一時期は調子に乗ってやんちゃもしたが、やっぱり室内で本を読んだりしている方が性に合っている。


「お姉ちゃん強くてカッコよくて、私も他の皆も憧れてたのに、急に止めちゃうんだもん。桜花からだって特待生の誘い来てたでしょ?」

「…剣道が嫌いになったわけじゃないわよ。ただ、他にやりたいこともあるし、今は桃香の応援してるのが楽しいかなって…」

「やりたいことって……生徒会?」


 桃香の声が心なしか低くなった。見下ろせば少しむくれて唇を尖らせてる。……可愛いな。…なんで怒ってるのかはわかんないけど。


「なあに? ヤキモチかしら? …なーんて…」

「だってお姉ちゃんこの頃いつも生徒会だなんだって篠谷先輩と休み時間も一緒にいるし、今日もお昼休み教室に行ったらいなかったし、小林君は生徒会でお姉ちゃんがどうだっていっつも話してくるし、…なんかちょっと…寂しいなって……」


 ……ああ、なんでこの子はこんなに可愛いんだろう。我慢の限界を超えたので、ぎゅうっと小柄な体を抱きしめる。甘い桃のシャンプーの匂いがして、男が女の子のシャンプーの匂いにドキドキする気持ちが理解できてしまう。こりゃたまらんわ。姉妹なのだから自分も同じ匂いの筈だけど、桃香の方が何倍も甘い匂いのような気がする。


「桃香ったら、そんな可愛い事言ってくれちゃって………」

「お…お姉ちゃん…苦しい……」

「…………そう言えば…」


 抱きしめながら、ふと気づいたけど、この桃香のヤキモチって…まさか篠谷や小林と仲良くしている私へのヤキモチじゃないよね?! 私としたことがシェリムの動きが活発過ぎてそっちの可能性をすっかり忘れていたけど、篠谷と小林も十分要注意だった。

 篠谷はなんだかんだ私を送るついでに顔を合わせているし、新入生歓迎パーティーでは胡桃澤と一緒に来た桃香と多少会話もしていた。過去の話はしてないみたいだけど。

 小林は何と言っても同じクラスだし、私の知らないところで桃香に話しかけてるとか何それ許せない。


「…お姉ちゃんってば! 潰れちゃう!!」

「あ! ご、ごめんごめん。ついうっかり…そうね、今日は生徒会が終わったら迎えに行くから一緒に帰りましょう? 普段桃香がクラスでどんな話をしているのかとか、教えて頂戴」


 にっこり笑いかけると、桃香の顔がぱっと明るくなった。


「一緒に帰れるの!? わかった! 部活頑張るね!! あ、そうだ、今度他校と合同練習で練習試合に出ることになったから、お姉ちゃん時間があったら見に来て欲しいの」

「ええ、桃香の応援なら喜んで行くわ」


 津南見に会うのは気が引けるけど、桃香の雄姿は拝みたい。シェリムも何をするかわからないし、今後もできるだけ口実を作って剣道部の様子も見に行こう。




 桃香と別れて生徒会室に着いて、ドアの前で足が止まる。

 昼休みの篠谷しのやとの事を思い出してしまった。泣き顔そのものではないものの、泣いた後の顔を見られたことも、鼻が触れそうな距離で見つめられたことも、頬を意外と大きかった掌で撫でられたことも…。顔が熱くなって、慌てて首を振って意識から篠谷の存在を追い出す。

 あの行動に他意はないと分かっているものの、動揺を抑えることができない。このままでは篠谷とまともに顔を合わせられないじゃないか。


「平常心…平常心……アレは王子キャラ独特の悪戯。…惑わされてなるものか」

「な~にブツブツ言ってんの~~??」


 心を落ち着けようと自分に言い聞かせていたら、背後から肩に顎を乗せられた。吐息が耳にかかる。咄嗟に顎を乗せられた方の手で拳を握り、勢いをつけて振り上げる。


「うわッ!? っぶね!! 真梨まりセンパイ、いきなり裏拳とか酷くない?!」

「いきなり人の肩に顎を乗せるからでしょう? 驚くじゃないの」

「驚くなら普通に驚いてよ~。いきなり全開で攻撃態勢とか物騒すぎでしょ~」

「背後からいきなり襲われたら一切躊躇するなと教えられてるのよ」

「え、何それ怖い」


 余った袖をブラブラと振り回しながら抗議する小林こばやし檎宇ごうに呆れ交りに言い返す。毎度毎度注意しても全く懲りる様子のない小林に、最近では実力行使も辞さなくなってきていた。

 問題は実力行使をしても本人が少し嬉しそうにしていることだ。……被虐趣味マゾヒストとか言わないよな、この子。

 そんなやり取りをするうちに緊張が何となくほぐれた気がする。こいつの事だから別にそんなつもりはなくいつもの悪ふざけではあったのだろうけれど、気持ちが楽になったのは確かだ。


「いきなり殴ろうとしたことは謝るわ。ごめんなさい。…今日もお仕事よろしくね」


 お礼を言うのもおかしい気がして、そう言うと、小林は一瞬きょとんとした顔をして、ふわりと微笑んだ。照れたような、嬉しそうな笑みにこっちがびっくりしてしまう。そんなたいそうな事を言ったつもりはないんだけど…。


「えへへ~、俺、頑張る~」


 やる気になってくれてるなら、まあ、いいか。


 生徒会室に入ると、肝心の篠谷の姿が無かった。くるりと見回して、入り口横の会計席に座っていた加賀谷かがたにに尋ねてみる。加賀谷は電卓をたたいていた手を止めてこちらを見上げて、首を傾げるようにして答えた。


「会長は?」

木田川きたがわ先生に呼ばれて職員室です。何か急ぎですか?」

「あ、いえ、大丈夫よ」


 その返事の思わずホッとする。戻ってくるまでに心の準備をしておこう。加賀谷に礼を言って席に着こうとすると、なぜか小林が加賀谷の頭に手を置いてぎゅうぎゅう体重を乗せ始めた。


「加賀谷あざとい~。そんな加賀谷は縮んじゃえ~~!!」

「ちょっ! やめろ!! 重い!! 小林、いきなり何をするんだ!! 本当に縮んだらどうする!!」


 同学年同士仲が良いのかな…? 加賀谷がため口を聞いてるのって胡桃澤くるみざわ以外では初めて見る様な…。胡桃澤の場合は幼馴染で婚約者だしな…。同学年と言えば…。


「小林君、桃香に聞いたのだけれど、よくクラスで私の話をしているそうだけれど?」


 桃香に余計なこと言ってないだろうな? という怨念も込めて話を振ってみた。私の話はともかく、小林がクラスで桃香とどういう話をしているのかはものすごく気になる。

 脅す気満々で話しかけたのに、なぜか嬉しそうな顔で駆け寄って来られた。私が座ったデスクの正面にしゃがみ込んでへばりつくように顎をデスクに乗せてこてん、と首を傾げて見せる。…加賀谷にあざといとかどの口が言うかな。


「ええ~? 何々? 俺の事気になるの~??」

「ええ、すごく気になってるわ。(桃香との関係が)」

「え……!?」


 素直に答えると、小林の頬がカアッと赤く染まった。やっぱり桃香と何かあったのだろうか…予想外の小林の反応に、血の気が引く音がする。

 まさか本当に桃香にクラスで言い寄っているのか?! どうしよう、桃香を小林の魔の手から守るにはクラス替えからか…? それとも私が留年して桃香と同じクラスになるか…ってどっちにしろ不可能だ。


「……あの…仕事してください」


 赤くなる小林と青くなる私に、冷静かつ的確な加賀谷のツッコミが入った。困り顔の加賀谷の手には副会長決裁の書類の束と、昨年までの行事予算の記録などの資料ファイルの山があった。

 …はい、すみません。真面目にやります。

 すっかりしっかり者になってしまったマッシュルーム小僧に素直に謝って仕事に手を付け始めた。小林も何やらブツブツ言いながら自分の作業の為に資料室へ入っていく。

 …小林のクラスでの様子は桃香と、暇なときにでも香川かがわさんに聞くか…。



 しばらくは作業に集中する。手元の書類の半分が片付くころ、篠谷が戻ってきた。


「お疲れ様です。真梨香まりかさん、こちら、僕の分ですよね? いただきますね」


 私のデスクから、副会長決裁が終わって会長決裁の分類をしていた山を手に取り、自分のデスクへ戻っていく。その様子は全くいつも通りで昼休みに人を赤面させた色気魔人が幻だったんじゃないかと思わせるほどだった。

 ……まあ、私は篠谷の本命じゃないから、奴にとっては昼のあの程度の接触は大した問題じゃないんだろうし、それこそ犬猫を軽く撫でた程度の認識なんだろうけど…。振り回されているのは自分だけかと思うと少し腹立たしい。


「…少し休憩にしましょうか? お茶を淹れてくるわ」


 篠谷のお茶だけうんと渋くなるように淹れてやろう。冗談とも本気ともつかない気分でそう言って立ち上がる。生徒会室から程近い給湯室でお湯を沸かしていると、加賀谷が手伝いますと言ってやってきた。


「お茶請けにと思って、クッキーを買ってきていたんです。先輩は甘いものお好きですか?」


 ちょこまかと動く加賀谷少年は少女めいた風貌と相まって可愛らしい。思わず頭を撫でたくなるけど、我慢。年頃の男の子を小動物扱いしては彼の矜持に関わるだろう。


「ええ、桃香と一緒に作ったりもするわよ」

「そうなんですか? それならきっと嘉穂かほとも気が合うと思います。あいつもお菓子作り、好きなんです」


 胡桃澤のお菓子ね…。ゲーム中では使用人に作らせたお菓子を自作だと詐称していたけど、今の胡桃澤の場合はどうなんだろう。


「そう、今度食べてみたいわ」

「はい、ちょっと個性的な味がしますが、悪くはないですよ」


 ……どうやら本人が頑張って作っているらしい。食べるときは心して食べよう。他愛もない会話をしながらお茶の準備をしていると、加賀谷が言うかどうしようかを少し迷うような表情をした後、何やら決死の表情で尋ねてきた。


「あの……篠谷会長と何かあったんですか?」

「…いきなりどうしたの?」


 我ながら動揺を表情に出さずに済んだのを褒めたい。加賀谷少年よ、いつからそんな勘の鋭いキャラになったのだ。先輩はもっと鈍感で朴念仁な君でいてほしいです。

 困惑を包み隠しつつ問い返す。


「いえ…生徒会室に戻ってきた会長が先輩の事を見て…何て言うか、ホッとした顔をしたので……喧嘩でもして顔を合わせづらかったんじゃないかと思って…」


 加賀谷の言葉に今度こそ動揺を隠せず固まってしまう。篠谷が何を見てホッとしたって? 恐る恐る聞き返そうとしたとき、給湯室の入り口から、篠谷本人の底冷えするような声が聞こえて、加賀谷共々固まってしまった。


「遅いなと思ってきてみれば…。何の話をしているんですか?」

「あ…篠谷会長、すみません、お茶でしたらもうすぐ…」

そう、先ほど提出してもらった見積もり、数字がどこかでずれていたみたいで合計が合わないので確認し直してもらえますか? …できれば急ぎでお願いします」


 篠谷の事を話していましたとは言えずに何とか話を変えようとした加賀谷少年に篠谷は更に別の話題をいきなり振ってきた。あからさまな先に戻ってろトークの隙に脱出できないかとお茶の準備を急いでみたが、加賀谷少年はさっさと篠谷に言われた通りに生徒会室に駆け戻ってしまった。裏切り者ー!

 かくして篠谷と二人になってしまった状況で、陰で話題にしていた気まずさと、昼休みの事の相乗効果で更に気まずい沈黙が給湯室に満ちている。


「あ…お茶だったら一人で運べるから…先に加賀谷君のクッキー、持って行ってくれる?」

「……もう、大丈夫なんですか?」


 気遣うような言葉に肩が揺れる。あの時、津南見の前でみっともなく涙を流してしまった事は、頭が冷えた今となっては忘却の彼方へ放り投げたい黒歴史以外の何物でもない。こうやって気を使われると否が応にも思い出してしまうじゃないか。


「…訊かないって、言った癖に……」

「すみません…。先ほど見た時、まだ少し元気が無いように見えて…つい」


 つい拗ねたような口調で詰ってしまった私に、困ったように眉を下げる表情には、言葉ほどの申し訳なさは宿っていない。どちらかというと、楽しそう…?


「お気遣いはありがたいんですけど、その…もう大丈夫です。気持ちも落ち着きましたし…ですから、お昼の事はできれば忘れて頂けると…その……」


 篠谷にしてみれば私が下手に出るなんて、一生モノのからかいネタを仕入れたようなものだろうけれど、この際、『泣いた後の顔』を忘れてもらう代わりに『下手に出る私』でからかわれる方がまだいつもの口喧嘩で終わらせられる分マシな気がした。

 そう思って、手を合わせてお願いしてみたところ、篠谷は一瞬言葉に詰まって、目を逸らしながらも承諾してくれた。


「い…いいでしょう。他ならない真梨香さんのお願いですし…この話はもう話題にはしません。…でも、本当に、何かあったら相談してくださいね?」


 心なしか顔が赤い気がするけど、相談に乗るとか、私相手に気を遣おうとしたことへの照れ隠しだろう。


「ありがとう…その時はお願いするわ」


 ホッとした気持ちと、純粋に気遣いが嬉しかった気持ちとで、緩んだ気持ちそのままにお礼を言ったら、なぜか息を呑んだ篠谷が、壁に向かって盛大な溜息をついた。


「篠谷君……??」

「………いえ、大丈夫です。お茶のお盆は僕が持つので、あなたはクッキーの皿を持ってきてください」


 さりげなく重たい方のお盆をさっさと掴んで歩き始めた紳士な男の様子に一瞬疑問符が飛び回ったが、気にしないことにして、クッキーの皿を手に追いかけた。



 生徒会室で休憩のクッキーとお茶に舌鼓を打っていると、ポケットの携帯が震えた。取り出してみると、菅原先輩からのメールだった。

 そう言えばシェリムを送ってもらったお礼も言っておかないと…。そう思いながらメールを開いた私の手から、クッキーがポトリと落ちた。


『なんか、津南見と王子が試合するって話になってる』


 まだ今日は入部初日で、津南見には昼休みにあれほどシェリムにやることはスルーしてくれとお願いもしに行って、結果泣く羽目にもなって、篠谷にそれを見られて、それもこれも、イベント回避の為だったというのに……それなのにこんな………。

 携帯を握り締めて震える私の様子に、周りの皆が何事かと顔を見合わせる。


「葛城さん…? あの…どうかしたの…?」

「ごめんなさい、ちょっと抜けさせてください!!」


 そっと声をかけてきた梧桐あおぎり君に一言そう叫んで、私は生徒会室を飛び出した。


「(展開が予定より速すぎるでしょ~~~!!!)」


 声には出せない叫びが校舎を走り抜ける私の脳内で響いた。



 ゲーム序盤、剣道部に桃香を追って入部したものの、目的が目的だけに、練習態度は不真面目、サボり癖もあり、隙あらば女子部の桃香にちょっかいを出そうとするシェリムに、度々注意をしていた津南見が堪忍袋の緒が切れて根性を叩きなおしてやる! と挑みかかる。

 シェリムもまた、堅物で恋愛に対して否定的な言動ばかりする津南見にうんざりして、『剣道なんて所詮子供のお遊戯』と挑発して、勝負を受ける。

 その結果、シェリムの国の実践剣術に敗れて挫折を味わう津南見と、勝った後、桃香に叱られて、反省と桃香の凛とした態度に益々惹かれて追い掛け回すようになる、というのが、私の覚えているゲームの流れだった筈だ。

 なのに、初日から試合とはどういうことなのだ! とにかく、シェリムが津南見を倒しちゃっても奴に余計なお説教をしないよう桃香を止めないと…!!!


 そう思いながら駆け込んだ武道場では、予想だにしない光景が広がっていた。


「……え………?!」


 面や防具をつけた二人のうち、床に膝をついて呆然としているのは、シェリムの方だったのだ。

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