5.ビー、楽しく工作する。
ツンツン海ちゃんの登場です。
大地の独り言。
如月さんと飲みに行って以来、まともに話ができていない。
会社で目が会おうものならすぐに耳まで真っ赤になって俯いてしまうんやもんなあ。
結局、なにが聞きたかったのか分からんかった。でも、たぶん、あの転送の事が聞きたいんやと思う。
これはちょっと言えないなあ。
服装もいつもの地味な状態に戻ってしまっているので、夢か幻を見ていた様に感じてしまうしな。
ビーはなにやらストーカーがどうとか意味深な事を言っとったけど、あんな綺麗な人にならされてみたいものやな、現実は厳しい、どこかにいないかなあ。
空の独り言。
なんて言うことをしてしまったのかしら。
質問もせずそのまま逃げてしまうなんて。
調査進展どころか後退状態です。
あれ以来、水無月さんの顔が見れません。どうかしてしまったのでしょうか。
は、もしや、なにか精神的攻撃にあったのではないでしょうか。
そう、ヒュプノとかなんとか超能力者の影響力下にあるのかも。絶対そうです。
それしか、考えられませんわ。
なにか、対策を打たなければ。
ビーの独り言。
あれ以来なぜか同僚の女の方はなりを潜めていの。
なにかあったの?謎なの。
まあ、煩わしいことにならなくてよかったの。
猫さんと遊んでるうちに解決してしまったの。ふむ、まあ、よかったの。
あの計画を進めることにするの。大地くんびっくりすると思うの。
いつもの日常が再開されるかに見えたそんなある日。
朝、ビーが突然こんなことを言った。
「ビー、良いこと思いついちゃった。2~3日中に、驚くことあるから楽しみにしてて」
(驚く事ってなんだろう、ビーのやることなすこと全て驚くことだらけなんだけどなあ)
そんなことを思いながら会社に向かう大地。
電車の心地よい揺れに若干うとうとしながら
(ああ、転送してもらったらよかったなあ)
なんて思いながら会社に到着。
席に着くなり、空と目が会う、またもや、真っ赤になり俯く空。
(ああ、今日も真っ赤だなあ。逆によかったのかもしれんなあ。聞かれんでいいし、でもちょっと気まずいなあ)
昼飯を食べなんとなく眠たくなってうとうとしていた大地の横に胸の前で腕を組んだ一人の女性がやってきた。
どうも怒っているようだ。
(ああ、この人はだれだっけ、確か総務の・・・小草生月海さんやったかな)
背が低く大地の胸の高さまでしかない。
机の間を走りまわるすがたは小動物を思わせてちょっとかわいい。
髪型は俗に言うツインテールで背の低さもあって実際の年齢よりずっと幼なく見える。
目鼻だちは非常に整っており美人なのだが、ちょっと吊り眼な感じがきつそうな印象を与える。
「水無月さん、あなた、空になにやったの」
空はどこか昼飯でも食べに行っているのか席にはいない。
あまり女性に怒られた経験のない、そもそもあまりしゃべることすら無い大地は少々萎縮してしまっている。
「え、空って?」
「空よ、空。如月空。私の空にあなた、なにかやったんでしょう?」
組んだ腕の上で人差し指だけがトントントンっとせわしなく上下している。
「ちょっと前まで活き活きしてたのに、あなたと飲みに行った日からずっと塞ぎ込んだまま。あなたなにかやったんでしょう」
急に顔を真っ赤にして捲し立てる。
「ま、まさか、エ、エ、エッチなこと強要したとかじゃないでしょうね」
(手は握られたよな)
「・・・ないない、無いよ」
「今の間はなに?」
「・・・ナニモナイヨ」
「怪しい。とにかく今後、一切空には近かずかないでちょうだい」
バンッと両手で机を叩くなり嵐のように去っていった。
唖然と見送る大地。
(腹たつ、腹たつ、腹たつ~、え~い、忌々しい。なんで、私の空が塞ぎこまなきゃならないの、なにがあったかわからないけど、絶対あの水無月って男が原因だわ)
(そりゃ、童顔でちょっとはかわいいかもしれないけど、なんで、私の空があんな男の事で沈まなきゃならないの)
彼女は名を小草生月海と言い、空とは同期入社である。
大地の勤める会社では新入社員研修の一環で最初の半年間を寮で生活するが、その際、同室であったのが切っ掛けだ。
うまがあったのかそれ以来、親友と言っても憚れない関係である。
(裏から手を回して、やっちょおうかしら。そうよ、そうだわ)
そう、彼女には別の顔がある。
銀河には大きく分けて2つの共同体がある。
人のように酸素を吸って活動を行う有機系生物による共同体、その名をカーボナー。
メタンなどを吸って活動を行う鉱物系生物による共同体、こちらは、コケトン。
それぞれの共同体は基盤となる世界があまりにも異なる為、今まで大きな争い事は起きなかった。
爆発的な増殖を続ける有機系生物の受け入れ先の惑星の枯渇によりメタン界への進出が始められており、小競り合いを生むようになってきいる。
地球のようになんの技術的手段無しに活動できる惑星は非常に貴重で一刻も早く共同体への組み込みは急務である。
彼女はそのカーボナーの一員なのである。
急務とは言うものの、同組織の根幹をなす種族は植物系生命体であるので、植物系生命体特有の長期スパンでの思考形態では、彼女の寿命内での能動的な動きは行われないと思われる。
彼女自身は地球からは出たことが無く地球生まれの地球育ちである。
両親がカーボナーに所属する異星人ってだけで、自分が異星人であるという自覚はない。
遺伝的に若干の差異があるものの外観からはその違いは分からないレベルである。
只、月に1度カーボナーに報告するだけで多額の活動資金が得られ、そして超科学の産物を自由に使用できることはラッキーと考えているにすぎない。
食事から帰ってきた空を捕まえて給湯器室に連れ出し尋問中の海。
「ねえ、なにがあったの」
流し台の中には来客でもあったのか、お茶が少しだけ入ったまだ洗われていない湯呑が二つ。
「なんにもないわ」
「嘘」
「なにもないったら」
ぴっちゃん、ぴっちゃん。
パッキンが緩んでいるのか蛇口から定期的に水滴が滴る。
「あの、水無月って男になにかされたんじゃないの」
「・・・違うわ。は~」
空は観念したかのようにひとつ深くため息をついた。
「海ちゃんは私の趣味って知ってるわよね」
「うん、宇宙人に解剖されたいってやつね」
「う・み・ちゃ・ん~」
腰に手を当てて怒っているがその仕草はなんともかわいい。
(私の空、怒った顔もかわいい)
「ごめんごめん。宇宙人とか超能力者とか超常現象が好きってやつね」
(宇宙人の私が傍にいるんだけどね)
「空ちゃんのその野暮ったい格好も宇宙人に目を付けられないように、なるべく目だたなくする為だもんね」
腕カバーや黒縁眼鏡は目立たなくするためだったようだ。しかし、その姿は今時では珍しい為、逆に目立っている。
(すでに、私に目を付けられている)
「そう、それでね、この前、遂に超常現象にあっちゃったの」
嬉しさを堪え切れないのか、両手を胸の前で揃えて、ぴょんぴょん飛ぶ空。
つられて一緒に飛ぶ海。
「この前の朝にね、自動販売機のとこの階段で彼にあったの」
「彼?」
「そう、水無月大地さん」
「彼がどうしたの」
「彼が、光の中から出てきたの。彼は絶対、宇宙人か超能力者なの、テレポーター?未来人かも」
テンションMAXの空。
(ええ~。宇宙人?私と同じなの?カーボナーかしら、カーボナーだったら私に連絡あるわよね)
若干ひきぎみの海。
「光って、カメラのフラッシュでも焚いたんじゃないの?」
「あれは、なにか常識では測れないとんでもない現象だと思うわ」
遠い目をする空。
「それでね、いろいろ調べてみたんだけど分からなかったの。だから、先週の金曜日にね、あたって砕けろって思って、大地さんを飲みに誘ったの。しっぽを掴めると思ったのよ。それでね、いろいろ話をしたんだけど、なかなかしっぽを掴ませてくれないじゃない。だから、単刀直入に聞いてみたの、それでね、手を捕まえてね」
「手を?」
「うん、逃げられると困るからね、手をぎゅっとね」
(あんの野郎、私の空の手を握るなんて、許せん。)
「そしたら、大地さん、急にね、目をまっすぐ見て私のこと綺麗だって・・・」
「!!!」
「だから、急に恥ずかしくなって逃げてきちゃったの」
「へ、それだけ」
(さすが空だわ、今どき純粋すぎる、やっぱり、私がついていなくちゃだめね)
「空ちゃん、あなたはず~とそのままでいてちょうだいね。それにしても、その男、気になるわね、私もちょっと調べてみるから」
「ふぇ?、う、うん」
いまひとつ理解できないのか、生返事で返す空。
そのころのビー、何故か楽しそうに歌うのでした。
「混ぜましょう、混ぜましょう~♪~。」
「塩基配列、私の配列付け加え~♪~」
歌うといっても何も無い白い空間に唯、歌が響いている。
良く見ると白い壁の中に人型をした物体が横たわりなにやら配管が繋がっている。
時折、良くわからない機械が突然転送され、作業を行った後消える。
空間にはビーが歌う他に、液体が管を流れるコポコポいう音が響いており、ビーの不穏な言葉があとに続く。
「骨格いろいろ強化して~♪~、常時リンク形成して、最悪考えてリンク断絶後は自立型、緊急時擬似人格よしなの~、亜空間形成機能付けて、わたしの支援機械群との接続開始、攻撃うけたら怖いので~、自動防御機能も有効にしてっと、本体の私が危機的状況になったら優先権をこちらに移してっと」
「えっと、あとは定着するまで待てばよい~♪~なの、これでいろいろなこと直に体験できるの。うふ、うふふふ。ちょっと楽しみなの~。早くできないかなの」
とんでもないものができそうである。
大地が海に問い詰められた日の夕方、大地のマンション近くの喫茶店内に海の姿があった。
空から話を聞いた海は善は急げとばかりにその日に行動を開始。
大地がマンションに入ったのを確認してから、なにやら得体の知れない機械を手に大地の部屋を見つめる。
海が手にするのはカーボナーの科学により作り出されたモジュール解析器。
これで、大抵のものは分析できる。
「これでわからないはずはないよね」
テーブルの下で機器を操作する海。
一見するとスマホをいじっているように見える。
テーブルの上にはこの店の名物ジャンボフルーツパフェがのっている。
機器の大きさはスマホより1周りほど大きく、タブレットPCのように見えなくも無い。
表面には実体を持った立体映像でボタン類がカラフルな光を発し瞬いている。
すこし離れた空間に大地のマンションの映像が投射されている。
しかし、大地の部屋だけ真っ黒の状態で反映されない。
ビーが施した撹乱装置の為、光学機器によるマンションの外部映像以外は全てカットされている。
当然内部の音声は聞こえてこない。
こんなことは海には初めてだった。どんな場所でも、それこそペンタゴンだろうが海の持つ機器を使えば容易く調べられるはずだった。
機器を操作する海に焦りがうかがえる。
どう操作しても大地の部屋だけがブラックアウト状態で表示されない。
故障ということは考えられない。
上下部屋はそれこそ塵の一つでも詳細に分析され表示されている。
故障だったらどんなに良かったことか、この現象は海の所属するカーボナーと同等、もしくはそれ以上の技術力を有するということだ。
幸い光学機器による記録は有効のようなので、窓から時折見え隠れする、小さなガラスのピラミッドのみ写してこの日は退散する。
「これは、ちょっと私の手に余るわね。お父さんと相談しないと」
現在、地球上にいるカーボナーは全部で10人程度、その時々で増減を繰り返す。
今後、共同体に所属する予定の星ではあるが、星系規模の政府があるわけではないので、カーボナーによる積極的な働きかけは見送られている。
そのため、駐在する人員の数もごく限られている。
地球を共同体に組み込む為の前準備としての活動は行っており、その為、主だった政府には一応の接触はなされている。
政治家にとってカーボナーからもたらされる技術は金を生み出す金の卵であり、また、一挙に政治形態を覆される恐れのあるもろ刃の剣でもある。
そんなカーボナーとの接触のある政治家のひとりが霜月幽
もともとアメリカで大統領補佐官のそれも次席補佐官をしていたという異色の経歴を持つ彼だ。
その補佐官時代にカーボナーとの接触をもち、日本に帰ってきてからもそのまま継続をしている。
その彼が今、ある民家の応接室でひとりの男と談笑しながらお茶を飲んでいる。
いつも絶やさない笑顔の下に時折見せる眼鏡のしたの鋭い眼光は、見る者に親しみやすさと恐れにも似た抗いがたいカリスマ性を含んでいることを伺わせる。
相対するソファーに座る男の印象は逆に今まで笑うことがあったのだろうかと思われるほど眉間にしわを寄せこちらも眼光鋭くどんなことでも見過ごしがないであろう力を感じさせる雰囲気を放つ男だった。
そんな二人のもとに騒々しい音を立てながら玄関から飛び込んでくる女性。海である。
「大変大変、お父さん、大変なのよ」
ダダダダダダダー、ガン、ドスン、ガチャン。
応接間に繋がる扉の外で大きな音がした。
「いた~い」
どうも、玄関に置いてある花瓶にぶつかって割ってしまったようだ。
左足をやや引きずりながら扉から入ってくる海。手にはあの構造解析器を持っている。
「いつまでも騒々しい娘ですいません」
「いや、若いうちは元気なほうがいいですよ。とくに高校生ぐらいならなおさら元気いっぱいのほうがいい」
「あと数年で30です」
「・・・」
歳は知らなかったようだが、前々から面識はあるようで海が気安く挨拶をする。
「もう、歳はいわないで、お父さん。それに30までまだ4年あるわ。いらっしゃい霜月さん、また、ややこしい政治のはなし?それとも経済?今のところ不干渉が前提だからあまりややこしいのは持ってこないでね」
「ははは、いや、今日は、たまたま近くまで来たのでよっただけなんですよ」
笑いながら軽く返す霜月。
「それより、これ見て。お父さん」
目の前にずんとばかりにつきだす海。
霜月も其の機械について知っているのか、あまり興味ないとばかりにお茶に手を伸ばして飲んでいる。
「これが、どーした。また、おまえはこんな機械持ち出して」
「ま、いいから、これ見て」
海が2~3のボタンを操作する。
映し出されたのは大地のマンションの解析結果だった。
当然、大地の部屋だけなんのデーターも表示されていない。
「ある人の部屋をスキャンしたらその部屋だけ解析できなかったの、光学写真は何枚かあるんだけど」
続いて写真を何枚か表示させる。
当然、部屋の外からの画像だ。画像を何枚かみてい行くうちに1枚の画像で手の操作が止まった。
映っていたのは少々画像は荒いがビーのドローンであった。
見る間に表情が硬くなり、引き締まった口から少々震える声で
「こ、これは、ダッド、直ちに地球上で活動しているカーボナーに非常召集を。これないものは映像にて参加、今から1時間後だ」
天井の隅の方から返事が返ってくる。
「わかりました。唯今、全カーボナーに連絡します」
ダッドというのは海の住む家の地下に隠されてある多目的支援船の有機コンピューターである。
そこで、あらためて霜月がいるのに気が付いたのか、ばつが悪そうに声をかける。
「申し訳ない霜月さん。今日はここまでにしてもらえないだろうか」
「なにやら、大変なことが起ったようですね、全員に招集かけるなんてただ事ではない様子。また、後日、説明をおねがいしますよ」
そお言いながら席を立つ。
「できる範囲で説明する。ありがとう」
そんな様子を眺めながら少々青ざめている海。
自分が持ってきた写真にあらためて目を向ける。
「お父さん。なにが・・・」
「お前も会議に参加してもらうぞ、1時間後だ」
そお言い、こちらも席を立つ。
部屋にぽつんと残される海。
1時間後、各地に散らばっていたカーボナーが海の家の地下の一室に集まってくる。
もちろん、各々持っている支援艦に設置してある転送装置を使用してやってくるのであるが、中にはこれない者もいて、そんな彼らは実体を持った映像で参加している。
何年も会っていない者たちが多く、さながら、同窓会の様である。
そんな彼らの目には一様に不安な様子がうかがえる。なにしろ、過去に一度も緊急招集など無かったのだから。
ホールには男女合わせて7人のカーボナーが集まっている。
その集団の後ろの出入り口からから少々しかめっ面した海の父と、ににこにした女性、海の母が入ってくる。
その横に海が居心地悪そうにしながらもちょこちょこ付いていく。
海の母も種族的なものであろうか、海と同じように非常に幼く見え一見すると二十歳前後と言っても問題ない。
見る者によっては高校生としても通用するだろう。
落ち着いた感じでいつもにこにこしており、思わずこちらも笑ってしまう雰囲気を醸し出している。
海と並ぶと姉妹の様にもみえる。
「みんな、招集に応じてくれてありがとう。早速だが状況を説明する。まずは、その辺に掛けてくれ」
ホール中央には形が教卓に似たガラスでできたテーブルがあり、それを囲う様に見た目は大理石で触ると弾力のある不思議な素材でできたベンチが配置されており思い思いの場所に座った。
海達3人は腰の位置に支えるようにT字型の弾力のあるものが壁からせり出しており、そこに体重を預ける形で立っていた。
手元のコンソールを操作し中央の壁一杯のスクリーンに海が取ってきたデーターを表示させる。
「これは、私の娘、海が取っ手きたデーターだ。中央部分のデーターがない部分に注目してほしい」
ブラックアウトした部分が大写しになる。
「これは、モジュール解析器で採取したデータだが簡易型ではあるがこの装置で分析できないものは地球上に存在しない。筈だった」
次にスクリーンが画像に切り替わる。
「これは件の部屋を光学装置により撮影したものだ」
窓の端に隠れて全体が見えないがビーのドローンが大写しになる。
「おお、こ、これは」
「!!!」
「か、観察者か?」
何人かはこの画像について心当たりがあるようだ。
「そう、わかっている者もいるようだが、これは、観察者のドローンだ」
一同、急に静かになる。
「この地球に観察者が来たのだ。既にこの部屋の住民と接触しており構造解析装置でもわからない手段で遮断されている」
観察者という言葉を初耳の海は、なにが起っているのか解らないようで目を白黒させている。
「お父さん、観察者ってなに?」
黙って聞いていることに耐えられなくなったのか海が質問を発する。
同意を求めるように一同を見渡す海。
「若いものの中には観察者という言葉を初めて聞くものがいるだろう、直接には私も初めて目にする。この写真に写されているのは観察者のドローンと呼ばれるもので観察者の一部だ。彼女達は我々に様々なものを与えてくれた。今の科学技術も彼女達が今の水準まで引き上げてくれたものといっても過言ではない」
「例えば、転送装置も彼女達が使用しているものの劣化コピーにすぎん。船の有機コンピューターにしても然りだ」
「中には、彼女達を死神だというものもいる。文明の終焉に彼女達が現れる」
知識を収集し始めると文明の終焉まで居るため終焉に現れると思われているようだ。
「彼女達を怒らせてはならない、怒らせてしまえばその文明は終焉を迎えるからだ。神にも等しい、いや神といっても過言ではない力を持っている。逆に彼女達に気に入られれば、繁栄は約束されたものと言えよう。彼女達の姿は千差万別で同じ姿をとることはないといわれている。」
海がおずおずと手を上げながら質問をする。
「先ほどから、観察者を彼女達とよんでるけど、女性なの?」
「そう、有史以来、女性型としかわれわれは遭遇していない」
「あの~、質問、いいでしょうか」
40歳ぐらいに見える男性が手を挙げた。
「どうぞ」
「我々はなぜ終焉を迎えていないのでしょうか。記録があると言うことは我々も彼女達と以前会ったのでしょうから、我々も滅んでいて当然ではないでしょうか。」
「幸運なのか残念なのか分からないが、ここに居る者たちの種族は彼女達に会っていない。カーボナーに属する別の種族が会ったのだ。その種族は今はもうない。3500年前の記録だけが残されている」
「どこから来るのか、どこに行くのかは分からない、一説によると別の銀河や、はたまた別の次元から来るのだと言う者もいる。一切解っていないのだ。只、怒らせてはならないと言うことだけは記録されている」
突然海に言葉が掛けられた。どこかうわの空で聞いていた海は若干の焦りは感じつつも、居住まいを正し目を向けた。
「海、お前に観察者との接触の任務を与える。お前の会社の関係者から接触し、できる限り情報の入手をすること。可能なら、観察者に接触しても良い。ただし、観察者を怒らせてはならない。怒らせれば破滅を意味するのだから。わかったか」
「・・・はい」
もうすでに、観察者と接触している住民であると言われている大地に怒鳴り込んでしまっている海は内心大焦りだ。
(ど~しよ~)
お読みいただきありがとうございます。
稚拙な文章ですみません。