111.ビー、体を動かすことは楽しいね。
ギルドマスターに挑む大地とビー、まずは、ビーから。
「こっちだよ」
カウンター横の扉を抜けて建物の中庭にでる。そこはちょっとした広場になっていた。
「ここは、訓練場になっててねえ、少々の魔法などにもびくともしない構造になってるんだ。一応、結界が張ってあって、外には影響がでないようになってるんだが、あまり大きな魔法はよしとくれ」
そお言いながら、緑のローブを脱ぐと、丈夫そうな黒い布の服の上に皮の軽装鎧を身に付けた鍛えられ、所々大きな傷が残る冒険者の躰が現れた。
グミノは壁に掛かっていた木剣を取り、軽く素振りを始めている。
「ああ、あんたたちの得物はなんだい?剣や槍なら、そこの剣を使ってもらいたいんだけど」
(なかなか神とやれる機会はないからねえ、ちょっと楽しませてもらおうかねえ。さて、まだ若い神だから、どれほどのものか)
「まずは、そこのちっこいのからだ」
「ちっこいの?からだ?」
ビーは拳を握り締めている。
(おや?この言葉になんか問題でもあるのかねえ、やる気になったのはいいねえ)
「ビー、抑えるんや。別に、そんな意味で言うてる訳やないで・・・」
「そんな意味ってなに、ダイチくん」
大地はビーの目に怒りが込められてるような気がし、怯みながらもなんとか言葉を発する。
「そやから、胸のこととちゃうから・・・」
「胸?胸が小さいって、そういう事?ダイチくん、ねえ、小さいって・・・」
みんなからビーの表情は俯いてて読めなかった。
「・・・」
(やべ~、また、スイッチ入っちゃったようやな?)
ビーは訓練場の中央にゆっくっりと歩いていく。大地はその背中から、陽炎のように闘気が立ち登っているように感じた。
「ビー、気にし過ぎや。冷静に、冷静にな」
ビーの耳には大地の言葉は届いていなかった。
「では、やろうかねえ、小さいの。お前さん、無手なのかい。珍しいねえ。あたしゃ、この訓練用の剣を使わせてもらうとするよ。さて、いいかい?」
「あ~、また、小さいって言ったの~」
(お、うまい具合に怒っているようだねえ。手間が省けたようだね。さて、まずは、初撃だね)
グミノは上段に構える。唐突に初期動作も無しに、ブンッと剣を振り下ろしながら、半歩踏み込んだ。
ビーは、ふっと息吐きながら、グミノの方向に、同じように踏み込み軽く避け、そのまま手をグミノの剣を持つ手に添える。グミノの剣を奪おうとでも言うのだろうか。
ビーの前髪を僅かに揺らしながら、剣がすぐ傍を通過する刹那、ギュンと言う音とともにグミノの剣がビーの居る方向に検速も衰えず急旋回して襲いかかる。グミノは自身の持つ剣の腹を蹴り上げ強引に方向を変えたのだ。
剣に添えられた手はそのままに、上半身だけの回転で剣を避けるビー。軽く、ビーの蹴りがグミノの腰辺りを襲うが、牽制の為なのか、あまり勢いはない。
両者は、少しだけ距離をとった。
「やるね~、流石は、神といったところさね。あの一撃が避けられるとは恐れいったよ。だが、こんなものじゃないだろう?」
ニヤリと笑うグミノ。
「むむっ。剣奪えなかったの~、次はちょこっとだけ力入れるの~」
ビーは少し悔しそうに呟いている。
その二人の攻防に言葉も出ない大地とコッコ。
グミノの予想以上の攻撃にビーは少しだけ口元に笑みが広がっている。元々、体を動かすことが好きなのである。
グミノは、「せいっ」と一つ大きな掛け声をいれてから、ビーに斬撃を加える。縦に横に、斜めに、間髪入れずに打ち込む。その数12撃。
ビーは、そのことごとくを僅かな動きだけで躱す。ひらり、ひらり、と右に左に、時に仰け反り、姿勢を低くしたり。スカートの翻りにも気にしない。
「嘘だろ」
グミノから焦りにもにた呟きが漏れる。
「さて、そろそろいいかな。反撃するの~」
ビーの口からでた言葉に、少しだけ眉を寄せるグミノ。
「ぐぐ」
ビーは,今のところ、体術のみで対応している。
「まさか、魔法を使う気かい。これから更に組み合わされたんじゃあ、お手上げかね」
口からは、弱音とも思える言葉を吐いているグミノであったが、その目の光はまだまだ消えてはいない。まだ、なにか、考えがあるのか、仕掛けようとする気配に満ちていた。
1段階ギアを高速に入れたビーの攻撃が始まった。先ほどまでの速度と段違いの変化に目を丸くするグミノ。
グミノは、ビーに易易と懐に飛び込まれてしまった。
グミノの持つ剣に軽く手を沿え、とんっと背中を押す。グミノは剣に添えられたビーの手を支点にぐるんと一回転。次の瞬間、グミノは、天井を見ている事に気が付く。剣も、いつの間にか、ビーの手にあった。
ビーは2、3度軽く剣を振ってから、少しだけ顔を顰めながら、グミノのに向かってポイッと、投げた。グミノは慌てて剣を掴み、構えをとる。
「ははは、軽くやるつもりが、軽くやられたようだね、流石は神。あたしも、まだまだ修行がたりないようだね。しかし。このままではなんとも冴えない話だねえ。でも、もう少し付き合ってもらうよ」
「まだやるのかよ、バトルマニアか?」
大地がボソリと呟く。
ビーは途中、楽しくなっていたのだが、ギヤを1段階上げた途端に、あっさりと、自分に付いてこれなくなったグミノに少々残念に感じていた。
「さて、それじゃあ、行かしてもらうよ」
(奥の手を使うことになるとは、流石は神だ。さて、これが通じる相手ならいいんだけどねえ)
グミノは手を天に突き出し、高らかに唱えた
「我は望む、時の束縛より我を解き放ち給え、時の監獄の断罪
グミノの体が消えたと知ったビーも一テンポ遅れて姿が消える。後には、ポカンとした表情の大地とコッコが残された。
時たま、ダンッ、グキッという音とともにグミノとビーが組み合った状態で現れるが、直ぐに消える。
(流石は神だねえ。私の速さに間髪入れずについてくるとは・・・、もう一段二段上げてみようか)
「神体化!、神体融合」
剣を振り上げるグミノの速さに合いも変わらず追従するビーの姿があった。
(二段階上げても、付いてくるようだねえ。こりゃお手上げだ。しかも、魔法を唱えた気配がないね。もともとの地力が違うのか、もう笑うしかないね)
フッと、それまでの雰囲気が突然変わって、若干苦笑の入り混じった顔のグミノが現れた。
「降参だ。降参。もう十分判った。お前さんは十分に強いよ。あたしゃ、これでも、このギルドを預かるギルドマスターさ。それを、手玉に取るとは恐れ言ったよ」
剣を持たない方の手を上げたグミノがにこにことしながら立っていた。
「ん、もう終わりなの?」
少し不満顔のビー。
「ビーなら大丈夫なの。これからなのに~」
「いやいや。もう手一杯さ。これ以上やっても、あたしが空を見上げてひっくり返っている姿ばかりになるだけさ。お前さんは強いよ。これ以上やると、あたしの体力が続かない。そっちの坊やの相手もしなくてはならないからね」
「え、俺?」
ちょっと驚いた顔の大地。
「そうさ。この後はお前さんとやるんだよ」
「ああ、これって、俺らの力を見るんやったな。そうか、忘れとったわ」
とととととっと、ビーは大地の脇まで歩いて来て、ストンッと、座り込んだ。
「次はダイチくんの番だって。がんばってね」
ビーはニコリとしてダイチに微笑む。
「・・・」
大きな技も出せず、小技ばかりで、ちょっと冴えない戦闘シーンですいません。




