109.ビー、人類肥大胸抹殺計画発動なの。
ずいぶん間が開いてしまいました。
すいません。
大地とビーがコッコの家にお世話になるようになってから、5日ほどが過ぎた。
大地たちがコッコと出会ったのが、紫紺の神様に感謝を捧げる日で、紫の日と呼ばれる。あとに、緋色の日、青の日、銀の日、黒の日、常盤の日、黄金の日と続く。
大地の慣れ親しんだ曜日ではなく、7人の神様に因んだ名前が付けられ、それぞれの神様に感謝を捧げる日というものらしい。
その中で黒の日が安息日とされている。黒を纏う神様は漆黒の神と言い、死後を司っており、死を考える事により、生に感謝する日である。この日だけは皆働かないようだ。所謂日曜日のようなものだ。
コッコが出してくれるものは簡素ではあるが、非常に温かみのあるものばかりであった。だが、日が経つにつれて、目に見えてその質素さが増して行った。そのため、大地とビーは、お金を稼ぐことにしたのだ。
最初、ビーが、貨幣の複製を制作すると言いだしたのだが、大地があっさり却下、その為、今、二人はコッコに連れられ冒険者ギルドに向かうため、街の中を歩いているのだ。
大地とビーは、この街の生まれではないため、街の中に入るため、入門料を取られたわけだが、それも、コッコに借りている。ギルドに所属することで、そのお金は帰ってくるのだが、コッコの懐具合は非常に寂しい状況になっている。しかし、コッコはにこにこしており、大地たちはますますコッコに頭が上がらなくなって いた。
「本当にいいんですよ、ビー様、大地様に働いてもらわなくても・・・」
「いやいや、それはあかんで、正直な話、嬉しいけど、俺らもちゃんと働かなあかんわ」
「でも、冒険者は、危険なのですよ。あ、私はギルドにも入っているのですよ。兼任もできるのです、私は神官一筋で行きたいのですけどね。去年までは、神官見習いでしたけどね」
コッコは神官ではあるのだが、冒険者もしており、街の外で採集した薬草などをギルドで買い取ってもらっているということだった。神官だけでは、食べていけないのである。世知がないのである。
ビーは大地の服の端を摘んで、キョロキョロしながらついて行く。あまり道の整備ができてい ないのか、時たま、なにかに躓き、つんのめって大地の背中にボスンと突き当たっている。その都度「えへへ」と笑って誤魔化している。
大通り奥の方に城とは言えなくもないくらいの大きさの領主の住んでいる建物が見えている。その大通りから1本奥まった道筋に冒険者ギルドがあった。荒くれ者が多いため、大通りではなく、裏通りにある。
外観は、西部劇に出てきそうな酒場のような感じで、扉もスイングドアとなっていた。
中に入ると、酒場も併設しており、フロアの半分が、酒場となっており、柄の悪そうな男たちが、数人朝からテーブルを囲んでいた。
残り半分のスペースがギルドの窓口のスペースで、こちらは、酒場側と違って、どこかの役所にでも来たような感じだ。
窓口スペースの3分の1が依頼達成者の報告するスペースで素材の買取をしている。
窓口は、朝とは言え、すでに日は相当に登っているため、夜明けと共に動き出す冒険者たちは既に散っていったのか、がらがら状態であった。
コッコは、新規登録の為、カウンターに声を掛けた。
「すいませ~ん」
受付には誰も居なかったが、奥から、コッコより少しだけお姉さんの女の人が覗いていた。その女の人は、コッコを認めて、笑顔で出てくる。
「コッコちゃん。今日はどうしたの?少し遅めね」
「あ、コベニさん。おはようですの。今日は、ビー様、大地様のギルド登録に来たのですよ。あまり、早いと、窓口が混んでいるので、少し遅めに来たのですよ」
「助かるわ、ありがとうねえ、コッコちゃん。え~と、そちらの方が新規登録ですね。ちょっとまってくださいね、今、書類出しますからね」
あまり、新規登録するものが居ないのか、コベニは奥に書類を探して入っていった。
「今の女の人は、コベニ・マシさんです。美人さんでしょ」
「それは、同意やな」
「ダイチくん・・・」
少しビーの目が細められている。大地はそんなビーの表情に気が付いたのか、慌ててフォローを入れた。
「あー、俺にはビーが一番やけどな」
「そう」
ビーの反応は素っ気無く、くるりと、後ろを向く。大地はそんなビーの耳が真っ赤なことに気がついた。
(なんか最近、ビーの反応は早いと言うか、なんと言うか、気つかうなあ)
奥からはガタンゴトンと大きな音がしていた。急に静かになった後、ドンっとひとつ大きな音がしてから、もうもうとホコリが立ち上る中、コベニがにこにこしながら、2枚の紙を手に出てきた。
「すいませんねえ。滅多に新規登録方が来なくて、やっと見つけました。これ、登録用紙です。はい、これ、書けますか?」
コッコが慌てて用紙を受け取る。
「あ、大丈夫ですよ。私が代わりに書きます。えっと、・・・ビー様の職業欄どうしましょうか?」
ビーはクネクネと怪しい動きをする。
「ビーはねえ、武闘家なの」
その動きを見て、不思議そうな顔のコッコ。
コッコにしてみれば、正直に大精霊とは言わないまでも、魔法使いと言われた方がまだ納得できる。コッコはビーのことを大精霊と信じて疑っていないのだ。
「武闘家?ビー様がですか」
「そうや、ビーは強いんやで、俺はあかんけどな」
「ダイチくんは、勇者なの」
「勇者?おとぎ話に出てくるあの勇者でしょうか?」
コベニは、ぽかんとした表情だ。
「いやいや、俺はそんなんは無理やで」
「むう、ダイチくんはビーの勇者なのに~。でも、冒険者でもいいの、ビーも早く征服されたいの~」
「無理無理、無理やで」
「う~ん、俺ってなんやろ?」
ビーも一緒に考え込む表情をしていたが、上目使いで大地を見たあとぽつりと呟いた。
「ダイチくん・・・ひも? 」
「ひも!そりゃひどいわ、ビーに養ってもらってはいないんやけどなあ・・・」
「大地様は、ビー様の加護を頂いていると思っていたのですけど、魔法とかは使えないんですか?」
「魔法?魔法って、呪文唱えたりするあの魔法のことか?」
「ええ、紫紺の神様が伝えってくださったあの魔法ですよ。ビー様が昨日の戦いの時、無詠唱で、とんでもない魔法使っておられましたが、大地様も同じようなのが使えるのかなっと思ったのですが」
「この世界には魔法があるんやったなあ。ファンタジーやね。俺が使える魔法ゆうたら、あれしかないね」
「あれ、と申しますと?」
「やっても、良い?コッコさん」
「え?・・・いいですよ」
「さて 、コッコさんのお墨付きを貰ったので、ちょいとやっちゃおうかな」
大地の顔が急に真剣なものに変わった。
「むむむむ」
直ぐに笑顔に変わる。
コッコの目の前に、大地はぐいっと片手を差し出し、手のひらを上にして開くと、そこにはくしゃくしゃとなった小さな白い布が現れた。
コッコは始め、不思議そうな顔をしながら、その布をしげしげと見つめていたが、その布がなんであるのか判ったのか、急に顔が真っ赤に染まった。
確かめるように、自分の下半身に手をやっていたが、ひったくる様にして大地からその布を奪った。
「あ、それ、私の・・・、え、そんな、返してください~、大地様~」
コッコはそそくさと、物陰に隠れると、手にしたものを まじまじと見てから、ごそごそとしている。
「コッコちゃん、ど~したのかしら」
コベニは、怪訝そうな顔をしていたが、大地から声がかかったので、そちらに視線を向ける。
「コベニさんもやってみるか?」
「え、なにかしら」
(怒られるやろな~、でも怯まんで~。それが、男っちゅ~もんや)
大地はコベニにもコッコにしたように、右手を突き出す。
「あら、なにかしら。なにか、あるの?」
「これが、アポーツやで、むむむむ」
「アポーツ?」
大地が手を上を向けて開いていくと、そこには、白いレースの小さな布があった。
「あら、綺麗なレースねえ、ん?」
大地は、コベニと目を合わさず、あらぬ方向を見ている 。
コベニはなにかに気が付いたのか、じっと見ている。
「そ、それって、もしかしてなんですけど。う~ん、違うわね、でも・・・」
コベニもそっと、自分の下半身に手を伸ばして確認していたが、急に顔色が変わった。
「きゃ~、それって、私の、私の?え、え、なんでなの」
コベニは、大地の手ごと引っ張り白い布を引ったくり、奥の扉に消える。
大地は前のめりになりながら、なんとか体制をたもった。
「二人共、消えてもうた」
大地とビー二人だけになったあと、ビーが感情のこもらない目で、大地をじっと見ていた。
大地は背中に冷たい汗を感じていたが、そんなビーの目に晒されることに耐えられなくなった大地が口を開く。
「あのな、ビー」
突然、ビーはやけに低い声で大地の言葉を遮った。大地は、後に、ビーの背中に巨大なクマを見たと語る。
「ダイチくん。ちょっと話があります、裏に来なさい」
その声には、有無を言わせぬ迫力がある。
大地は背筋をピンと伸ばして、ビーに応える。
「イエス、マム」
ビーの後ろを小さくなりながら大地が付いて行く。
人気の無いギルドの裏側は、大地には処刑場に見えた。
「ねえ、ダイチくん、ビーが何を言いたいのかわかるよね」
「えっと」
「ダイチくん、そこに座りなさい。それで、どお言う事か、言ってみて」
大地は素直にビーの言葉に従い正座している。
「え~、 私こと大地は、え~、ビーと言うとても良い娘がいながら」
ビーの目は笑っていない。
「うん、それで?」
「お世話になっている、コッコさんとギルドの受付のコベニさんに不埒な行いを行いました」
「そうだよね~、ダイチくん。それだけじゃないんだよね~、わかるでしょう?それとも、判らないのかな?この中にはなにが入っているのかな?」
ビーは大地の前に立ち、つんつんと指で大地の頭を啄いている。
「脳味噌です」
「うん、お味噌汁の味噌じゃないんだよね。で、その味噌で考えたら解るよね、ビーが言いたいこと」
「えっと、その」
「ん、解らないのかな?しょう~がないなあ」
ビーは腕を組んでいる。
「ダイチくんは、ビーのパートナーなのよねえ、解ってるのかな。パートナーよ、パートナー。ビーはねえ、ダイチくんの為なら、なんだってするし、なんだって、できちゃうの。」
「はい」
(ああ、ビー相当に怒っとるなあ)
「それと同じことをダイチくんには求めないけど、でもね、ああいうことは、まず、ビーにするべきことと思うの」
「え?」
「パートナーである、ビーになら思う存分しても構わない、いえ、寧ろ、推奨すべきことだと思うの。なのに、ダイチくんはパートナーである、ビーにはしなくて、あの二人にはした。それって、なに、やっぱり、胸、胸なの?。胸なのね。そう、胸・・・、許すまじ」
「あの、ビーさん?」
「ん?ああ、ダイチくんは、悪くないのよ。世の中に、大きな胸があるからダメなの」
ビーは大地をみつめていたが、途中から目の焦点があっていない。
「・・・年齢ごとの大きさの限界値を決めて、それを越えるものの抹殺・・・、いえ、年齢は関係ないわね、幼くても大きいものは悪だもの・・・、どうすれば・・・、ひとり一人選別は面倒ね、ウィルスが簡単かしら、大きくなったら感染する・・・、蚊で媒介するのが簡単ね、蠅でもいいかな。今居るひとはそれでいいかしら。将来は、遺伝子操作で、そもそも大きな子ができなくしちゃう?・・・ああ、一緒にしちゃえばいいのね」
ビーはじぶんの世界に入っていて、時折、なにやら物騒なことをつぶやいている。
大地は冷汗が止まらなかった。
「ごめん、これからは、心を入れ替えます」
大地は両手を地面に付いて頭を下げている。所謂、土下座というやつだ。顔からは滝の様な汗が滴り落ちている。
「いいの、いいの。ダイチくんは、な~んにも悪くないのよ」
慈愛に満ちた笑顔のビーが怖い。
「いや。俺が悪かった。みんな俺が悪いんや。ビーの胸がないのも俺が悪いんや、許して~」
また、ビーの顔から表情が消える。
「胸?」
一言多い大地。
「あ、いや、みんな俺が・・・」
そこには、一瞬前まで笑顔だったのだが、今は、全ての表情を消したビーが立っていた。
「今、胸って言った?ねえ、ダイチくん、ねえねえ、今・・・」
無表情で大地に迫る様は鬼気迫るものがある。思わず後づさる大地、それを追いかけるビー。
「そう、やっぱりそうなのね。ふふふ、・・・人類肥大胸抹殺計画を早急に進めないといけないようね。今から、遺伝子操作すれば、5日くらいで出来るかな」
(あかん、このままでは、俺のせいで、つるぺた~んの世界が実現してしまう。ん?それはそれで・・・、いや、なんとかせなあかん)
「ビー」
ダイチは後ろから優しく肩を掴む。
「なに、ダイチくん」
怪訝そうなビー、それでも、大地に肩を触れられて嬉しそうだ。
「なあ、ビー、俺の大好きなビーがそんなこと言ったらあかんわ、抹殺計画なんて」
「え、え、でも・・・」
「俺のビーはそんな事、せ~へん。さっきのは冗談なんやろ」
大地は背後から前に腕を回し、優しく抱きしめている。
「ん、そう、さっきのは冗談なの~」
「そうやと思とったわ、俺のビーがそんな怖いことやるはずないもんなあ」
「そう、そうなの、やだ~ダイチくん、あれは冗談なの。本気にしたらだめなの~」
(お、なんとか上手いこと行きそうや)
「・・・でもね、ダイチくん」
ビーは大地の腕をかいくぐり、くるりと回転して大地の正面に立ち、見上げた。
「また、あんな事したら・・・、ダイチくん、判っているよね」
ビーはにっこりと微笑んでいる。
「イエス、マム」
大地の汗は止まることはなかった。
読んで頂いてありがとうございます。




