98 覚醒
《最後はつまらない話になってしまったね》
健太郎は、全てを淳子に告げたとおもった。もうこれ以上話をしても自分が惨めになるかもしれない。淳子にも重荷を負わせることになるかもしれないと思った。
安堵と、我が身がこれからどうなるのかという思いと、安心感の混じったため息とも、深呼吸とも違う小さく息を吐いた。 そのつもりだった。どうせ体は反応しないだろう、だれにも気付かれないだろうと。
しかし、淳子は、その息遣い見逃さなかった。健太郎からの想いを受け止めつつ、握っていた手を驚いて離そうとした。
ベッドで横たわる健太郎の手を握ってから、いくら時間が経過したか。
数秒か、数分か。しかし長い々い告白だったとも思ったが、しかし周りの雰囲気を感じ取るとあまり時間はかかってなかったようだと感じた。
健太郎は、全ての想いを伝えたと思った瞬間、淡い笑顔を浮かべ、眼を開けることが出来た。なんとも長い夢から覚めた心地だった。
淳子は、驚きの気持ちを言葉に表すこともできず、ただ健太郎の今さっき開いた眼を見つめ、笑顔を作ろうとして、少し引きつった。涙目になりつつ、握った手をゆっくり離すことができた。
健太郎と淳子は必然に眼が会った。
「ねえ 健太郎くん目が覚めたよ」
一緒に見舞いにきた同級生に伝えてから、他のだれにも聞こえない小声でつぶやく。
「・・・健太郎君の・・・気持ちはうれしかったけど、受け止められなくてゴメンネ」
「???」
健太郎は、今まで伝えた淳子への想いは、自分が見た夢だったと思いつつ、永い々い夢が、淳子に伝わっていたのか?と一瞬脳裏をかすめたが、ひとりごとのように、つぶやいた。
「まさかね」
ただ近くに淳子がいてくれたことが嬉しかった。




