95 山で嫉妬かよ 2
足を投げ出して、自らマッサージしている彼女を、流石に疲れたんだと考えつつ見ていると。
知らない人間が近づいてきた。
そして 足がつかれんたんですね。マッサージしてあげる。
というと、彼女の了解を得るか得ないうちに、すぐマッサージを始めた。
彼女はというと、マッサージが相当痛かったらしく
「痛い痛いです やめて下さい」
と告げるもマッサージをやめず、時間にして一分もなかっただろうが俺は、
・・・なんて事をするんだ。痛いと言ってるじゃないか。まして俺も触ったことがない足をこんなに簡単に触ってしまうとは。それがたとえ足の凝りを和らげるためのマッサージとはいえ、ふくらはぎを両手で上下に何度も往復さえして・・・
いったいこいつは何者か、彼女が拒否しなかったのは、知り合いか?
と思いつつ、俺は、何気なくマッサージ出来る行動を羨ましく、そして嫉妬した。俺も、何の理由でもいい、彼女に触れたかった。心は穏やかではなかった。しかし、また俺がマッサージを申し出ても明らかに不穏な心を見透かされそうで出来るはずもない。
いったいあいつは誰なんだという疑問のみを残しつつ、帰りのバスに乗車する。別に行きと帰りの座席が同じでなくてはならないというルールがあるわけではないのだが、帰りのバスも席を同じに出来なかった。
出発地の駐車場について、別れ際、約束した お茶の誘いを再度聞いてみる。
「茶でもこれから行く?」
季節は秋も中盤から、晩秋近く、日暮れは早く、既に夕暮れも近かったため、再度聞いてみた。もしかしたら、断られるかもしれないという予想で再確認だった。
「もう帰る」
山行中に聞いた時の、うん と返事をしたことなど、全く無かったような軽い響きの回答だった。
そしてそれは、淳子の予想通りの、返事だった。そして俺のがっかりする心情。
予想した通りの返事にもめげず、事前に用意した、海外旅行の土産を渡した。
何度も海外に出かけているという、彼女にすれば、特別高価でも、珍しい物ではないことを知りつつ、
「高価な物ではないけど、石は本物。ま いらなかったら捨ててもいい」
「ありがとう」
という返事はもらったが、表情はあまり嬉しそうではないことが見て取れた。俺のセンスで選んだネックレスの石。もし身につけてくれたとしても、彼女にはふさわしくなかったかもしれない。
「元気なかったね。体調悪かったの?」
と 山中での疑問を聞いてみた。
「うん 調子が悪くて。お昼も食べたくなかったんだ。でもカレー味のカップ麺は美味しかった」
山中の不機嫌そうな、元気がなかった原因はわかった。でも そうなら話してくれれば、何かと世話ができたかもしれないのに と思うも既に遅し。一緒に昼食をしてくれなかった事も、気持ちが晴れない。
下山した時に、お互いに写した写真は、職場のパソコンの待ち受け画面に貼り付けたのはせめてもの収穫か?




