91 千畳 一人
趣味の山登りも大分ご無沙汰していたが、自分の足腰の確認をしたくどこか山へ行きたくなる。
山岳会からの誘いだったか、当日は、市民登山で馴染みの山へ行くことは知っていた。但し、山岳会の市民登山は、年齢問わず、強硬な縦走することが多く、前回の登山でバテたことから今回の参加は躊躇した。
市民登山は参加しなかったが、一人で、独身時代の寮にいた当時の仲間と行ったことのある千畳ヶ原へ行って見ることに。
市民登山の登り口は、分からなかったが、同じ山塊であり登山道は、途中一緒になる箇所もあった。
もし市民登山に淳子が参加していれば、時間が合えばどこかであえるかもという たら、ればの一抹の希望的観測での単独山行だった。
10月の登山は、流石に寒い。しかし上り始めれば汗が吹き出す。上り下りを繰り返しつつ、見晴らしのよい場所に着くと、正に山一人状態で、すれ違う登山者もいない。
こんな所で、もし何か体調が悪くなったら、だれにも気付かれずに、彼の世ゆきだろうな、などと独り言を言いつつ寂しさを紛らわせ、それでも、景色を独り占め的な爽快な気持ちで足取りも軽い。
目指す千畳ヶ原は、かなり登山道を下らなければならず、ここをまた折り返すことを考えると気が重い。目的地に着くと、既に季節は初冬の赴きで、千畳ヶ原は、枯れ草に覆われて、若い頃に訪れた雰囲気とは、大分違っていた。
昼食の準備をしつつ、ビールを美味しく飲み、持参したつまみを食す。つまみは、いつも同じ物を準備する。缶詰、スライスハム、チーズである。毎回同じ物を用意するのは、忘れものがないようにするため。
でおにぎりと、カップ麺を食べようと、準備すると、お湯をわかす、やかんを忘れたことに気がついた。さてどうしよう。
確か、紙容器でもお湯は沸かすことが可能と知っていたが、紙コップすらない。直接カップ麺に水を注ぎ、沸かそうかとも考えたが、断熱材の容器では、先に溶けてしまうだろう。
諦めて、おにぎりだけで済ませようとして、気がついた。ビールの空き缶があるじゃないか。これなら十分お湯が沸くはず。 で 急ぎビールを飲み干して、中を洗い、水を注ぎガスコンロに掛けて、無事カップ麺を美味しく食す事ができた。
食事の場所は、登山道だったため、この登山で、初めて会ったグループの登山道を塞ぐ形になってしまい、慌てて少し場所を異動する。誰一人いない勝手気ままな登山だと思ったが、ちょっと反省。
さて、下山も、同じ道を引き返すのだが、途中、市民登山の一行が目指した山頂へ行く分岐がある。ここで小休止して、しばし考える。結果は、同じ登り口に着くのであるが、完全なピストン行程とするか、ここから、新たな登山道へ進むか。
新たな道を、目で追うと、小さな起伏が数箇所見える。ピストンであれば、下りのみ。
自分は、淳子と会えるかもしれない僅かな希望を捨てて、元の道を進むことを選んだ。
経験のある道であったことと、別の道は、持参した地図には、詳しく載っていなかった。楽な道を選択したのと、知らない道を進む危険を避けたのだった。
なんとか登り口まで、無事下山。結局、市民登山グループとも会えず、勿論淳子とも。
時間が違ったか、そもそもコースが違ったか。
まあ 単独登山で無事に下山出来てなにより。




