88 続 山と花と本
市民登山から数週間後、数日後に専門学校引率登山をひかえていた。
事前に偵察登山で、登ったがまだ足の筋肉が痛い。
その日はたまたま、定時に会社から帰宅できることになり、会社から帰宅する乗車駅で電車待ちのホームで携帯に電話が入った。
電話に出ると、思いもつかない相手、淳子からだった。下車駅で待っているとのこと。
会社が終わって、最初に乗れる電車 17:40だったかな。地元の駅に着くと18:15分だったかな。
「もしもし 私」
「あ 暫くだね」
「いま どこ?」
「今 帰りの駅で、電車待ちだよ」
「あ そう こっちの駅で待ってるから」
電話を受けた時間が、乗車直前だったので、時間とか、調べた結果なのだろう。
一緒に山へは行ったが、携帯電話で、彼女から電話が入ることは一度もなかった。何事かと思いつつ、下車駅に着くまで、心が弾んだ。
駅に着くと彼女が待っていて、駅の表口で待っていてくれた。自分は、ひと目を気にして、先に行ってと、地下道をくぐり駅裏まで同行した。いったいなんの用事とも思ったが、
「これ あげる。 先日のお礼ね」
「山の花の本だよ」
と言う。
包を見ると、俺も知っている本屋の包装紙で包んである。
彼女は山の花が特集された本を渡してくれた。くれるという。花の名前を聞かれて困るということを気にかけてくれてのプレゼントだった。
お茶にでもと誘ったが、彼女は用があると車で去った。数少ない彼女の優しさの表現だった。
これがまだ交際中のことだったらと思うのは、俺の自然な気持ちだった。




