82 コンサート 2 念願?
しばらくして また コンサートへいく。
また 会場へ行く途中、歩いているとばったり出会った。決して時間や、場所を打ち合わせた結果ではない。
《まあ 開場の時間や、駐車する場所、歩いていく方向が一緒なら、会う確率はずっと高くなるんだろうけど それにしてもばったり会うなんて ただの偶然ではないと思っていいよね》
前方に別の同級生も見えた。勿論顔見知りだが、一人だった。あ 俺と、そして淳子も、ここまでは 一人だけど。 苦笑した。
「一緒にいく?」
「いいよ」
と数週間前に、これだけの打ち合わせた結果だった。
「同級生が来てるから、離れて会場に行くね」
と いつもの他人のふりとして会場へ、俺は、あとから付いていく形になる。そうすることで、彼女の後ろ姿を、見ることが出来る。
ホールへ入り、知り合いがいなことを確認して、彼女にチケット代を渡し、当日券を購入してもらう。前回と同じパターンを踏襲して、席に向かうことに。
自分が先に歩き、二階席に向かい、これもやっぱり、客の少ない場所で、なるべく中央に座る。後ろに客がいなことも勿論考慮済みである。
当然、会場が暗転するまでは、一座席分間をおき離れて座る。
コンサートが幕開け、オープニング曲が始まってからも、まだ席は詰めないまま。
一曲終わると、挨拶と続いてトークが・・・
こんにちは
この街は二回目云々・・・
ところで この○○市でもやっぱり 不倫とかあるんでしょうね
と 唐突に笑いをとる。
自分は少々ドキッとする。
・・・俺たちのことか?・・・
自分は趣味で、バンドでジャズを少々演奏する。
昔は、なんどもコンサートや、ダンスパーティー、民謡、演歌歌手のバックバンドでステージに立つ経験がある。会場が暗くても、演奏中のステージから、会場はよく見えるのである。知り合いであれば、何処に座っているか、若いか、勿論性別も判断できる。
自分たち二人は、一回席に空きがあるにもかかわらず、二階席にいる。
その二階席には空席が多数あるが、一番前ではなく、周りに客がいない、空間。しかし、席を一つ空けた隣同士に座っている男女がいる。全くの他人であれば、これほどの空席がありながら、席一つ開けた隣には絶対座らないであろう。
それも決して若くない男女。いわゆる付き合っている恋人同士には絶対見えないだろう。
ステージから見ても、おそらく普通ではないと見えるのだろう。
会場がドッと湧いて二曲目に。
もういいかなと思い席を詰める。
彼女は、さも当たり前風に、顔はステージに向けたままで拒否はしなかった。
隣に座ることを拒否するのであれば、そもそも同列の席にも、二階席にも一緒に来ないだろう。
ヒットした耳馴染みのある曲が続き、彼女がぼそっと何かつぶやいた。
なにを話したがよく聞こえなくて、少し彼女の方に身を寄せた。拒むふうでもなく彼女はそのまま。
耳を少し顔に近づけると、肩が、彼女の二の腕に触れた。ごめんと言ってすぐ離れたが、触れたことについて咎められることもなく、なんでもないふうだった。
《俺は、これほど長い付き合いだったけど、体に触れるのは、初めてだったよね。意図的も、偶然でも。手ぐらい握っても、いや手をまず握りたくなる時期には握らせてくれなかったころからも。とっても柔らかい感触だったのが驚いたんだ。ほんとに。他の人に触ったこともないわけではない。でもこんな感触は、初めてだったんだ》
そうこうしているうちにコンサートも佳境に
俺は、中学時代から出来なかったことを、実行に移そうと考えた。というか彼女と会う時は常にだが。
近くには、観客はいない。ステージの演奏は続いていて、音も会場いっぱいに響いている。
俺は、そっと彼女の耳に寄って、
「手 握っても いい?」
と聞いた。
彼女の反応は
すぐにこちらを振り向き、「エー」 という 呆れたような、びっくりしたような、いまさら? というような表情を見せた。しかし嫌悪する表情では決してなく、その中に笑顔が少しあった。
当然、いいよ と返事が返ってくるとは思っていなかった。彼女はすぐに正面をみて、今の事はなかったような素振りを見せた。ほんとに握ってくるとは思わなかったのだろう。
もう引き下がれない。
ちょっと間をおいて、俺は、正面を見つつ、彼女の方に手を延ばして、手があるであろう方向に手をのばす。
彼女は、抵抗するように、差し出した手から逃げるように引いたり、わずかに上と下に動かしたが、すぐ諦めたのか、抵抗するしぐさをやめ、自分が、指を絡ませて全ての指を交互に組もうとすると、彼女も指を開き、俺の意図を理解したか、手を握り返してきた。少し汗ばんでいた感触を肌で感じた。その時間数秒か、数十秒か
彼女の手の感触を感じつつ、やっぱり、若くはないな という感触が残ったが、しっかりと握りしめた。
それで、何をするでもなく、握った手を太腿付近に置き、時間が立って、彼女は手の握りをゆるめて来たので、離したがっていると感じる間に、少し手を振って、握りを離してきた。
自分も、それに応じて、手を離し、もとの位置へ戻す。
改まって、会話をするでもなく、顔を見合わせるでもなく、そのままコンサートを聴き続ける。
コンサートの終了に合わせて、席を立つが、やはり時間を空けて出口からホールへ、自分が後を歩く形になる。
彼女について、車までいき、彼女が席に付いた形で立ち話。
これからお茶でも と誘うが、帰るという返事をもらい、そのまま別れた。
この後、同級会があるたび、
「手 つなご」
と 言っても もちろん、手を繋がせてはもらえなかった。当然 旧友の見える場所で、手をテーブルの上でだが・・・
それでも、笑顔でかぶりを振った。
後々の、ミニクラス会では、次の会場へ移動途中、俺は、彼女と並行して歩くときは、俺から彼女と腕を組み、数歩歩くと、手を下に下ろし、手を握った。拒否はなく、その手を俺の上着のポケットに入れて、中で、指を交互に絡めて握り合った。
うーん 後ろにも誰かいたか? しかし もう 男女が手を握り合っても、それが恋愛感情の表れと思うクラスメイトはいない年齢になっていた。
俺は、いまだに違うけどね。




