81 少しは、真剣だったプロポーズ
一応書いてみる
まだ、若かった。
社内で気になっていた女性二人。当然時系列は、違うが・・・・
どちらも、山登りでの付き合いで、それぞれ違うグループで一緒だった。
その1
ひとつ年上先輩の女性。どこか天然ぽい。
俺は、そのしぐさや、話す内容に、可愛さを感じて、何かしら声をかけていた。
会社の仕事でも何かと付き合いのある職場だった。普段の仕事は、別の部屋だったが。
寮でも、仕事場でも好意があることを隠すことはなかったが、もちろん直接的な言葉は発しなかった。山の誘いや、仕事上の電話、一緒の仕事上での会話や、態度の端々に出たであろう好意を見られていたか、応援してくれる先輩もいた。
一人で、飲みに行くと、彼女と先輩同僚も同じ店で飲んでいる所に遭遇。
俺が好意があることは、知っているはずで、口説く好機と判断し、言い寄ってみる。となりの先輩女子も適当に和んでくれている。
「結婚しようよ」
「うーん それは」
「大事にするから、優しくするから」
「それは解っているけど・・・」
自分には珍しく、直接的な言葉で、何度も繰り返す。アルコールの勢いか。しかし 幸せにする とは言えない俺。こんな所を見透かされていたか?
今晩決めないと、もうこんな機会はないと判断し、店のママに頼んで、スクリュウドライバーを作ってもらい、彼女に勧める。
その間にも、誘いの言葉をかける。スクリュードライバー一杯目。
まあ飲みやすいから、こっちの思惑通り。
そして二杯目。
もう そろそろ酔っ払ってもいい頃と感じる頃、
「どうも ごちそうさま」
の 挨拶で、電車の時間だからと店を出た。だれだ スクリュードライバーは女性を口説くときに最適と教えたのは。全然酔わないじゃないか。
その2
その人の決定的な印象は、休日に会社の近くを歩いている時だった。社内ではほとんど仕事が一緒になることはなく、こんな人がいる程度の認識だった。
遠くから見る彼女は、知的で、清楚に見えた。
休日に、でかけてたまたま、会社の周囲にある坂を登る自分。上から彼女が歩いてきたのが見える。さて 確か会社の人だが俺を知っているのか、否か。
挨拶しても知らない人から挨拶されたと思われるのも、こちらが迷惑と考えているうちに
「こんにちは」
と 先に挨拶されて笑顔を向けてくれた。
その笑顔は、自分にとってとびきりの笑顔に見えた。
・・・あ この人はこんな笑顔をするんだ。 なんて かわいい笑顔なんだ・・・
これが 俺の、彼女への改めての第一印象だった。
すぐ 寮で、彼女の名前を聞き出して連呼することになる。
「かっちゃん かっちゃん 好きだ 好きだ」
寮の同室の住人が、彼女と同じ職場だった。名前を聞き出し、下宿さきも。
寮での俺の行動は、その住人から彼女に筒抜けだったらしい。そして彼女も登山をするらしいことを教えてくれた。
その 彼女と二回ほど山へ行ったか。其時、彼女の友人も紹介してくれた。全く畑違いの勤め先で、一緒に行った自分の同僚と 彼女の交友関係の広さに感心したものだった。
初対面でも、みな笑顔で会話してくれて、山での話題にも事欠かなかった。写真を撮すときのポーズにも気安く応じてくれて、和やかな登山だった。
下山後、一緒に登山をした友人宅で休憩。お茶を出してくれた友人宅で、彼女がお茶を入れてくれた。その作法の丁寧さも俺の関心を引いた。当たり前かもしれなかったが、湯のみを、一端お湯で温めてから、注いでくれるお茶は、自宅ではしない飲み方だった。
友人は、時々席を外し、彼女と自分を二人にしてくれた。勿論友人も寮で、俺が彼女に好意を持っていることは承知。友人の心遣いに感謝だった。
社内で友人と彼女の事について交わした言葉は、
「彼女が三十歳になるまでに結婚したいな」
だった。 彼女は自分より、三才年上。
季節は、初冬に近く、夕方すぐに暗くなり、彼女と二人、自分の車で送って行くことに。
二人の車内での会話は、当たり障りのないものだったが、俺の好意をにじませつつ、はっきりと 付き合って欲しいとは言えずじまいだった。
数週間後、その友人から伝えられた言葉は、
「かっちゃんから電話があってな どうもお前との付き合いは、断られたようだぜ」
だった。
「え? ようだぜ って? どうゆうこと。詳しい理由は?」
と、食い下がるがどうもはっきりしない。さらに食い下がると、俺は、電話を受けたとき、晩酌中で少々酔っ払っていて、よく思い出せないんだよ ということだった。
俺は、もっと 俺の何が気に入らないのかを聞きたかったが、それ以上聞くことは諦めた。彼女に聞くこともなかった。
わざわざ友人に電話をしてきたということは、最低限、俺の好意は伝わったのだろうと。そしてその上で、断られたのだろうと。
俺の押しの弱さか、諦めの早さか、振られ慣れている故か。
そして友人は、ほんとに酔っていて、忘れたのか、俺に、断りの言葉をはっきり伝えるのを躊躇したのか。
それから一年後か 仕事中に、彼女が工場へ現れた。既に事務系の業務に移動していた彼女が工場へ来ることは、まずありえないことだったが。
俺のそばへ来て、第一声は、
「今度結婚することになりまして、退職します」
だった。
え 突然の挨拶に、聞けたことは・・・
「嫁ぎ先は青森です お世話になりました」
だった。そして握手して別れた。
もう二度と会えない距離で、実際 会うことは、なかった。




