表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
手紙から始まった交際・・・・だけど  作者: ロックハート
59/109

59 二人から告げられる

なんという因縁か と言うふうになってしまいました

 昭和50年 1月 22才


 関東方面に就職した友人が正月に帰省していた時期、、その友人と街で遊んでいると、路子と偶然出会い、三人で喫茶店に入った。

路子は、やおら


「淳子さん結婚するんだよ」


と教えてくれた。その時の返事は


「あそう」 


と無関心を装ったが あの時の電話でそっけなかったのはこのことだったのかと納得した。


 いつ?だれと? と よほど聞きたかったが、潔しとしない気持ちと、女々しさを悟られるかと思い、確かめることはあえてしなかった。


 しかし 本心は穏やかではなく、この後の二人とのつきあいは気もそぞろだった。

早速、次の日曜日、淳子に会って欲しいと電話をした。


 これも気が重い電話であったが、なんとしても掛けなければならない電話だった。恥の上塗りのようで、何を今更とか、アッサリ断られるかと思っていたが、以外にも会うことには同意してくれた。別れを告げる恰好の機会とでも思ったのだろうか?


 待ち合わせて街を歩いた。待ち合わせ場所から、どこか喫茶店を探したが、彼女は周りの眼を気にして外を歩きたがらなかった・


「どこへ行く?」

「少し歩く?」


「外は歩きたくない」


 そのとおりだろう、結婚を控えた身で、他の男と街を歩いて目立つようなことはしたくないはずである。

 彼女は、数歩下がってついてきた。最初に見つけた喫茶店に入り、タバコを数本吸って、しばらく沈黙のあと、


「俺も結婚を考えていた」


とやっとこれだけ言った。



「あなたには、私よりも若い、良い人がいると思う」


との返事だった。


 女から別れる時の常套句だなと心でつぶやくとともに、もうダメだとも思った。あきらめることしか出来なかった。


「俺と結婚してくれ」

と言えなかったのは、もう既にあきらめの気持ちではあったが、

「他のやつと結婚しないで、俺と結婚してくれ」 

と言えなかった自分が情けない。


<中学から>

「付き合って10年だよ」


とも言った。


 精一杯の抵抗であり引き止めの言葉のつもりだったが、こうなっては何の意味も持たない、引き止めの言葉であった。

 既に、これ以上何を言っても無駄だろうとも思った。待ち合わせた時間はまだ明るかったが、楽しい話などできるはずもなく、お互いに下を向いたまま、沈黙だけで、時間だけが過ぎていき、これ以上一緒にいることは無駄だった。


 車で送ることになり、見送る時間帯は既に夕暮れ近くだった。


 車で自宅へ送ったが、もうだまって見送る以外に自分には何も出来なかった。彼女を送る途中からは、それまで晴れていた空から、大粒の雪が舞って道路も雪に覆われた。車が通過した道路は、雪煙が舞っていた。


 彼女の自宅前まで送るつもりだったが、手前の曲がり角までで彼女は下ろしてくれることを希望した。


「そこの角でおろして」

「家まで送るよ」

「いいから そこの角で降りるから」

「・・・・・」


 希望通りの場所で車から降ろして、彼女が角を曲がり見えなくなるまで、車を降りて見送った。

 降りるときも彼女から さようならの言葉もなく、彼女は無言だった。


 彼女は振り返ることもなく、自分は追いかけることも出来ず、降りしきる雪が、街灯の明かりに照らされて白く輝き、自分は歩く背中が霞む彼女の後ろ姿をずっと見送るだけだった。


 傷心の自分はそのまま、家に帰り、二階の自室で号泣した。ベッドに上がり、顔を布団に押し付け、声が洩れないようにして、思い切り声をあげて泣いた。


 自分の不甲斐なさを責め、後悔しても後悔しきれない涙だった。

もう自分には何も出来なこと、どうしようもないこと、時間がもどらないことを精一杯、自分で

できる唯一の行動で悔みながら、それを事実として受け入れるしかなかった。

そう 今はもう何もできないことを・・・・


《何度もチャンスはあったのだろう でも

 なぜ 俺は 好きだ 結婚してくれ と言えなかったのか 言わなかったのか どれほど貴女を好きだったのか、今にしてやっと理解したような気がしたんだ。貴女が 本当のことを って何度も聞いてきたのは、俺を待っていてくれたのかな。 でも全部無視してしまったよね。 俺はいつでも貴女と会えると思っていて、結婚したいと言えば はい と答えてくれると思っていたけど違ったんだね。 付き合いが長過ぎたのかな 俺の意気地がなかっただけかな》



 そして泣きはらした目で酒を煽った。


《ずーっと後だけど・・・・

貴女の実家と同じ地区にある母親の実家に用事で行くとき、貴女の家の近くに人だかりがあったんだ。記憶ではゴールデンウィーク前の頃だったかな。

 何かなと思いつつ、作業の服装であったため、そのまま通り過ぎたけど・・・

 田舎だから、個人宅の近くに人が集まるのは、誰かが亡くなった時か、結婚式で、近所のオバサン連中が花嫁の見送りをするときだよね。貴女の結婚式は、この時だったのかな。さらに後で実家に行く時に思い出したけど、この時に止まって見てなくてよかった。》


《病院でこんな格好になってしまったけど、何か言ってくれないかな。声は聞こえるよ》 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ