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手紙から始まった交際・・・・だけど  作者: ロックハート
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58 完全な別れ

 49年8月、22才


 自分は組合の人集めの役員に任命され、会社近くのアパートに入った。責任上、組合行事には、最後まで残らなければならないとの責任感で、会社近くにアパートを借りたのだった。

 一時的に残業等が多くなり、十分アパート代を捻出できると考えたのだが、残業はやはり一時的で、残業分だけ給料が上がっただけで、数ヶ月で小遣いに不自由するはめになった。


 数ヶ月を過ごしたアパートを引き払い、同年 初冬10月か11月か 3度目の寮に入った。


 既にお互いの連絡はなかったし、アパートに入るときも彼女に何も知らせなかった。既に手紙のやり取りはなく、アパートには電話もなかったため、連絡しても交流の手段がなかった。


 しかし、アパート時代には、金曜日の退社後、車で自宅に帰る途中、偶然に彼女が帰宅するためバス停で待っているときに、会えたのだった。


《久しぶりに偶然逢えたことで、自分もそろそろ、結婚の申し込みを真剣に考え始めたんだ。

 家族と同居ではなく、どこにアパートを借りようか、とか 婚約指輪はいくらぐらいならいいのかなとか、収入の少なさは、二人で仕事をすればなんとかなるだろうとかね》


《アパートから貴女の待っているバス停に着く頃は、もう日が暮れていたけど、貴女がバス停に立っているのは、すぐにわかったよ。車を停めて声を掛けると、車には躊躇なく乗ってくれたよね。


「ここの近くが職場だったの なんていう会社?」

「うん ちょっと先にある、製薬会社の営業所」

「ふーん 何してるの?」

「普通の事務」


 会話はこれぐらいだったかな。久しぶりの会話だったけど、話は弾まなかったね。自分も結婚したいとか、今貴女が付き合っている人の話もなかったね。俺は偶然でもまた会えたことで、ほんとにこのときは、申しこめば何度もまた会うことが出来て、結婚もできると思っていたんだ》


 二回ほどバス停で待っている彼女を自宅まで、送った。帰郷して社会人として、働くことになったのだろうが、いつ、どこに入社したのかも知らず、この時に初めてバス停の近くの会社に務めていることを知った。もう偶然できしか会うこともなかった。


《偶然会えたことで、この時間に会社を出れば、また何度でも会えると思っていたよ。ドライブにとかこそ誘わなかったけど、サプライズで、結婚を申しこめば、きっと喜んでくれると思っていたよ。もう遅かったのかな。 ところで貴女はまだ車の免許は取ってなかったんだね。結婚後に再会したときは、運転してたけど》



 当然、会社を定時で出て、すぐアパートから出れば三度目もバス停で会えるものだと思っていた。

当然のことだが、彼女の口から婚約したことや、近々結婚の話はなかった。


 寮に入ると、同室の先輩に、退社後自宅に送ってほしいとのことで、何度か送った。偶然会えるかもしれない彼女のことを理由に断ることはできなく、彼女と会う機会は、またなくなってしまった。

 アパートで年を越した記憶はないため、年内だと思うが、彼女に3度目の、寮に入ったことを知らせようと彼女に電話をした。

 また電話で自由に連絡ができるとの期待もあったが、久しぶりの連絡で少々気が重かった。車で帰ってきて、地元の駅から、どう切り出したらいいか、何から話したらいいか思案しながら、彼女の家のダイヤルを回した。


 家族が電話にでて、彼女に替わってもらい、寮の住所と電話番号を告げたが返事もそぞろであった。メモを取る様子も伺えなかった。


「しばらくだね」

「うん」

「また寮に入ったから、電話番号と、住所を教えるよ」

「01・・ の99・・で住所は、◯◯◯◯」


「ふーん」


というような抑揚のない返事ばかりで、寮に入ったことなど、どうでもいいという雰囲気が聞いて取れた。


《期待した返事は、ちょっと待って、メモするから だったけど、何の感情もない返事だったね。一瞬どうしたかなとも思ったけど、なんか変だと正直思ったよ》


 同じ寮に入ったので、住所も電話番号も同じだから、メモを取る必要がないのだろうと思いたかったが、会話に感情がこもっていないことを察した。

 鈍感な自分でも、さすがに何か変だと思い


「随分そっけないね」


と言ったが彼女は


「ふっ」


と 返事とも、苦笑いとも、どちらかと言うと軽蔑に近いかもしれない、ため息のような返事をして何も答えてくれなかった。


《貴女は、この時の俺を、どう思ったのかな。まだ気が付かないのとか、やっと気がついたの?

とかだろうね》


 期待した返事ももらえず、がっかりした思いで電話を切った。


 彼女に何か変化が合ったであろうことは察しがついていたので、この後の再度の電話を掛けることなどできるはずもなく、為す術もないまま時間が過ぎていった。


《この時はもう結婚が決まっていたんだね。もう電話しないでくれる とかの返事がないだけまだ気遣ってくれたのかな? それともいくら鈍感な自分でも何かを感じるだろうということだったのかな》


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