56 桜の名所を
《桜を一緒に観に行ったのも大学時代だったかな? でも乗用車だったから、卒業後だと思うんだ。 この時もまだどこに就職したか知らなかったような気がするけど、もうお互いのことには関心がなくなっていたのかな。》
春、桜を見たいということで、二人で桜の名所を見にいった。車で30分程度の桜の名所で川沿の大きな公園になっている観光地である。
二人で桜並木を歩いた。二人はまだ、十分に交際しているという認識だった。少なくとも自分は。
彼女は、賑やかな場所では、やはり横に並んで自分と歩かなかった。やや後ろから付いて来るような感じだった。ここでも自分は、しっかり横に並んで、手を繋ぐとか、腕を組むとかをしたかったのだが、叶わなかった。しかし見た目は、嬉しそうであり、自分もウキウキした心地だった。
二人で歩いていると、正面から、数人の男が、こちらを見ていた。すれ違い間際に、こちらを冷やかす言葉を投げられた。自分は絡まれたら、どう彼女を守ってあげたらいいか、思案したが取り越し苦労になって安心した。
《一緒に桜を観に行ったよね。二人で歩いた並木は、桜吹雪で綺麗だったね。貴女の笑顔も嬉しそうだった。歩いている途中にすれ違った男たちのからかいの声は聞こえたかい。俺達は似あっていたんじゃないかな。絡まれたら本気で守って上げたかったんだよ。》




