50 交際やめようか
会津後 しかし 心にもないことを
47年5月11日(木)投函 淳子からの手紙
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その後いかがお過ごしですか。
六日の日、五色沼の方へ寄って行ったんですか。五・六日と(土、日)
あいにくの天候だったけど 七日は すごくよい天気でした。
日曜日だったんでバイトにでも行こうかと思ったんですが、
なんか非常に疲れてしまって午前中ブラブラし 午後から
買物に出かけ、なんか、わびしくなるような日曜日でした。
わざわざやってきてくれたのにどこも案内することができず申し
訳ありませんでした。五色沼に行って見ようと考えていたんですが、
なんかすごく疲れていた様子だったので、無理強いするのも
気の毒だと思って黙っていました。せっかく来てくれても
なんにも出来ずゴメンナサイネ。
又こんな事言い始めたら、気を悪くする
かもしれないけど、書かすには いられないないので、
書きますが、どうぞ最後まで読んで下さい。
最近 就職は、地元にして 卒業したら、
家に帰ろうと思うようになりました。今まで
は、家を離れることばかり考えていたんですけど
いざとなると やはりだめですね。 家に帰ればなんとか
なるのではないかと思うと、あれこれ、考えをめぐらすのもめんどうで
いっその事 家に帰ろう などと 自分をあまやかしてしまいます。
以前は、なんかやってみたいと思っていましたが、このごろでは、ごく
平凡でもいいのではないかと思ったりもします。 こんな事を考えるとていたら
いったい私たちは何なんだろうとかわからなくなってしまいました。
ここ数年来、ただなんとなく、会って話をし(ろくに話しもしなかったけど)
遊び、 何か問題が起こっても、少しも変わるところがなく、ただ
なんとなくもとに おさまっていて、何事もなかったようにしている。
今までにも何度か、このような事を話題にしたが、そのたびに
うやむやになってしまい、このごろでは、単に、惰性で、行動
しているように思われて仕方がない。合、
帰ることに決めた、今、私は、これからの事を
考えるとたまらなくなってしまう。健太郎君、いったい
あなたは何を考えているのでしょう。私には、まったく
と言っていいほど、あなたの考えが、分かりません。
私の考えとしては、良き友として今後もつきあって
くれたらいなあと思っています。ちょっと変化もしれないけど、
現在の偽らざる心境です。 私は常に一人相撲をとって ああ
でもない こうでもないと、考える質なので、又 今度も、そんな
みじめな気持ちになりたくないので是非とも 考えを聞かせて下さい。
ちょっと感じたんだけど、 私の思い過ごしならいいのですが、 先日、
私が電話をかけたことで、家の人と何かあったのではありませんか。
あくまでも私の感ですから、間違っていたら ごめんなさい。私自身
家にいるときは、別として、こちらにおいては、全くの自由な、身です
から、なんの、干渉も受けずにすむので、気が楽なのですが、あなたの
方はいったいどうなんでしょうか。いつもはっきり言ってくれないので、
今度こそは、教えてください。
思うにまかせて、筆を走らせたので、わからない
文になってしまいました。申し訳ありません。
十三日には、佐渡に行く予定です。何もかも忘れて
楽しんでこようかと思っています。勝手なことばかり
言って申し訳ありませんでした。でもいろな事
書いたけどよろしくお願いします。
そんなに遅くもないないのに ねむくなってしまいました。
きょうはこれで失礼します。
淳子より
五月八日
健太郎 君へ
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最後の自分の名前が大きな文字で書かれていた。
何か想いを込めて書かれた大きな名前だったのだろうか?
《この旅行では五色沼の写真があるけど、貴女のこの手紙によれば一緒だったのは、5日だけだったかな でもどこに泊まったかはもう思い出せないし、どのように別れたかも思い出せないんだ。会津に会いに行ったの二回目だからあんまりうれしくなかったのかな》
“なんかすごく疲れていた様子”
《疲れていたのは、寝不足だけど、その心遣いはうれしい。でも疲れていてもできるだけ貴女と会っていたかったのは、気づいてくれなかったね。》
“ろくに話しもしなかったけど 何か問題が起こっても”
《そうだったね 本当に心を通じた話はなかったかもしれないね。中学、高校時代の話とか、世間話とかだったかもしれない。
でも貴女は、俺にとって一番大事な人だったんだよ。何度も言ったけど、俺は、貴女といると何も話せなくなってしまっていたんだ。 貴方がいう何を考えているのでしょう とは どんな回答を求めていたんだい。俺達は、もうすぐ20歳になるけど、結婚したかったけど、まだ十分時間はあったはずだよね。 何か問題ってなに? いつも問題にするのは、貴方ではなかったの? 俺は貴方が問題にすることが何のことかさっぱり解らなかったよ 中学最後の堤防で怒りだしたことも、会津でのことも後にしこりが残るようなことはなかったと思っていたけど 俺が気づいてあげられなかったの?》
“みじめな気持ちになりたくないの”
《みじめな気持ちって? なに? 俺が貴方をみじめにするって 本心を言わなかったことかな?
貴女のいう 本心って 貴女が俺に何度も 遠回しに求婚して欲しいと何度も投げかけたのに、なにも応えてもらえなかったってことかな? 》
俺は彼女が何を求めているのか分からなかった。俺は彼女と結婚してもよい、当然結婚できると考えていたのだが自分の収入ではとてもやっていける自信がなく言い出せなかったのである。当然これからも交際を続けて行くつもりであった。
“私が電話をかけたことで”
《貴女から電話を貰ったから何かあったのではありません。何度も、手紙を出すことも気にかけることはないと返事をし、自宅からも電話を掛けているのにどうしてそんなに気に掛けるのか自分には不思議な思えるほどだった。貴女が迷惑を掛けたくないと思う心を書いてくれたかもしれないけど、俺はその気持が、俺にとって迷惑だったよ。家族のいる俺の家に突然来てくれたり、だれもいない貴女の家に誘ってくれたりした貴女の積極的な行動はいったいどこへいった? その行動が俺には嬉しくドキドキしてたのに》
“家に帰ればなんとかなるのではないか”
《何がなんとかなるの? これから仕事に着くことの心配とかに掛けて、遠回しに俺たちの交際がなんとかなるとと表現したかったのかな。 “平凡”ってなに? 俺が貴女に 求婚してそのままゴールインとか? 中学の時に、手紙をくれて、呼び出して交際を申し込まれて もう十分平凡じゃなかったような気がするけど》
彼女が書いた、何かあったのでは は、確かになにかあった。けれどそれが何だったかは、思い出せない。親からの転職の勧めだったか、会社の年収が低いことを詰られたことだったか?
それとも、夏休みには、沖縄への旅行を計画していて、成人式に出席しないことを反対されたことだったか。
・・・しかし女の感は鋭い。・・・




