26 福島と故郷と自分
この年は、頻繁に手紙が 福島と仙台と故郷を往復していた。
しかしそれは、一年と少しだけの熱い想いの交換だった。
46年3月 淳子からの手紙
今日福島に着いた。貴方の湿疹はどうなったか。二十歳になった時が心配です。
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・・・この手紙の内容は、よく思い出せない。3月であれば、福島へは下宿を捜しに行ったか、既に下宿が決まっていたのであれば、荷物でも運んで、整理でもしていたのだろうか。・・・
手紙の中の“今日福島についた”の記憶が正しければ、4月12日に自宅で自分宛に手紙を書き、14日に故郷を発ち、16日に再度自分宛に手紙を書いたことになる。
就任地で
46年4月8日 入社式
・・・この手紙の前に自分は彼女に手紙を書いていたと想像する。・・・
46年4月12日(月) 淳子からの手紙
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お手紙どうもありがとう
一二日に<手紙が>こちらに着きました。この手紙がそち
らに着くころは、故郷を離れていると思います。
十一日の日曜日に帰ってくるのではと、ちょっぴり
期待していたのですけど・・・・・・
あなたは入社式も終わり新入社員として
はりきっていることと思います。私は十四日に
岩手をたちます。近づくにつれて、家を離れ
るのが、いやになってきます。向こうに行ったら
夏休みまでは帰ってこられないでしょう。その点
あなたはいいですね。帰ろうと思えば、いつでも帰られ
るんですから。遠くに行かなくて良かったと思っている
んではありませんか。内心では・・・・・・
それからタイピン等ですが、安物ですから、御心配
なく。あれは三月の誕生石だそうですが、なにもあなたの誕生日をまちが
って選んだつもりはありません。
写真がほしいとのことでしたが、あまりいいものもありませんし
それに今手元にアルバムもありませんので向こうに行って
良いものがあっったら送ることにします。私にもあなたの
写真を送って下さい。
むこうの住所ですが、敬俊君から住所録が送られ
たことと思いますが、ここに書きます。
会津若松市・・・・・・・・・・・・
気が向いた時にはお手紙を下さい。お待ちしています。
最後に くれぐれもお体に気をつけて下さい。
では これで
さようなら。
淳子
南野 健太郎 様
四月一二日(月) 午後
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・・・ちょっぴり期待していたのですけど・・・・・・
《ごめんね 入社してから給料日前で小遣いもなくて帰れなかったんだよ。 電話もまだ教えてなかったよね でも福島へ行く日も教えられてなかったよね 貴方が旅立つときはいつもだったよね なぜ?》
・・・贈ったタイピンは3月の誕生石ですが誕生日を間違えたのではありません。・・・
ちなみに私の誕生日は6月、彼女は9月であり9から6を引いた数の誕生石をプレゼントしてくれたと今も思っている。自分と彼女の関係を、何かの形に表して残そうとしてくれたことがうれしかった。
ルビは 手紙の中で 消し線で修正されたことも表しています。




