18 卒業
・・・卒業直前・・・
卒業式直前一週間前程度か、彼女は制服ではない、上着を学校に着て来た。全員が制服のなかで非常に奇異に見えた。
同級生仲間でも噂になったが、卒業式の前に、制服をクリーニングに出したのではなかろうかと推察した。 が、改まって聞くことはなかった。
卒業式は、高校入試の後に実施され、卒業式が終わってから合格発表。
卒業式当日、友人同士で写真を撮り合った。撮してくれるという同級生の申し出に、自分と彼女とは照れて1mも離れてカメラに収まった。自分は彼女に近づくのだが近づくたびにその分彼女は離れた。(万事彼女は周りに人がいると、決して交際中の素振りが、分かるような態度を見せなかった。このことが唯一私の不満だった)
・・・もう一つの卒業 手紙を託される・・・
ルリ子から手紙を託された。近所の
「先輩へ渡して」
という依頼だった。
それは、ハンカチで包んであり、糸で綴じてあった。糸を切れば、中身を見ることができるという誘惑もあった。
しなかったのは、信じてくれたルリ子の期待を裏切ることだった。いったい何が書いていたのか。つくづく手紙に縁がある と思ってしまう。
-------高校受験 3月7日 発表17日—もう少しあとか-----
・・・高校入試の当日も彼女との因縁向いたエピソードがある・・・
自分は中学校のブロック塀の中で、一緒に受験会場に行く友人の車を待っていたが、一台の車が通り過ぎていったのを、自分を見つけられなくて通りすぎて行ったと思い自宅に帰りタクシーを呼ぼうと歩いて行った。
途中彼女も受験会場へ行くため、だれかと待ち合わせていたらしく遠目に彼女が見えた。自分はこの時何を思ったか、途中の交差点を曲がり別の方向へ歩いた。普段の調子で、突然の出会いは苦手だった。どうしようと思案したが、行く先に車を持っている同級生の家があるのを思い出しお願いして受験会場に送って頂き事なきを得た。こんな大事な日にも、彼女のことを意識してしまう自分だった。
後日彼女からと、同行予定だった友人から事の成り行きを聞かれたのは言うまでもない。
もし受験に遅れていたら自分の人生が変わっていたと思うと冷汗ものである。
幸いに高校は合格した。発表は友人の正樹と、もう一人の三人で同行した。
合格を確認してからは、淳子が受験した高校も見に行った。帰り道の途中でもあった。
高校合格してからしばらく自分は、誰がどの高校合格したとか、不合格で私立を受験したなどの、噂話を聞いて、合格、不合格とかの印を同級生名簿につけたりしていた。
近所の女子先輩から
「あーこんなことみんな、よくやってるよねー」とからかわれたことが記憶にある。
そんな時期、電話で中学校体育館に呼ばれた。皆でフォークダンスをしているので来ないかとのルリ子からの誘いだった。
このフォークダンスは一週間くらい続いたか、高校入学直前まで、毎日だった。ダンスの曲は3曲程度だったのだが、飽きることもなく、午前中一杯は続くのだった。曲によっては、男女がかわるがわる手をつなげる曲があった。オクラホマミキサーかな?
しかし淳子と手を繋げる番になっても彼女は恥ずかしいという表情を浮かべ、身を捩り、自分と一緒に手を握って踊ってくれなかった。
自分は一緒に手を握って、踊りたくてしょうがなかったのだがこれも面と向かって言えず自分にも彼女にも腹立たしかった事を思い出す。
(最初は校内放送で曲を流していたが、当時ポータブルのプレイヤーを自分が持っていたため、それも持って来いとの誘いだった。)
(それが体育館で使用するには、音量が足りなかったため、自分で改造し、ラジオ電波で他のラジオに音を飛ばすよう改造したが、結局ダンスをしている時期に間にあわなかったような記憶がある。それとも、受信するための持ち運びできるラジオを持ちあわせていなかったので、結局使わなかったのかもしれない)
フォークダンスにも飽きて、みんなで近くの川べりに行って遊ぼうということになった。
今でも疑問なのだが、彼女は、なぜか急に無口になり、機嫌が悪くなった。
何とも不可解な彼女の行動に、自分は機嫌を直してもらうべく、彼女が好きだと言っていた、アイスクリームを買うため皆と少し道をはずれ、駄菓子屋で買おうとしたのだが、あいにく持ち合わせが少なく棒付きアイスを2本買った。
アイスを持って川岸まで行くと、彼女は、何故かまだ川岸に行かず、川の反対側堤防で自転車を押さえていて追いついた。皆は既に川岸に行っているのに。
気不味い雰囲気で不自然に、
「これ」
と言って差し出したアイスを彼女は、
「いらない」
と機嫌が悪い表情を隠そうともせず拒否した。差し出したものを あ そう と引っ込めるわけにもいかず どうしようか躊躇し、少し時間をおいて、さらに手に渡そうとしたが、自転車に手があたり、アイスを弾みで砂利路に落としてしまった。さらに気不味い雰囲気・・・
この時自分が言ったのは、
「受け取らないから落としてしまった」
彼女の返事は
「関係ない」
と一言。
そのまま自転車で帰って行った。機嫌を直すどころか火に油をそそぐ結果となってしまった。
残された自分は、ただ呆然と見送るだけで、何も出来なかった。焦心のままみんなに合流したが、気分は勿論晴れなかった。
今でもだけど、俺は修羅場に弱い。当然口論も。
見送ってから自分がしたことは、落としたアイスを拾い、自分の分と共に遠くに投げ捨てた。不機嫌の意味も解らず、自分の不甲斐ない行動にも腹が立ちアイスにいらだちをぶつけた。
「なんなんだよ いったい」
焦心のままみんなに合流したが、気分は勿論晴れなかった。
この後フォークダンスはなく、これが最後の中学生生活だった。
《もし機会があったら、貴女にぜひ聞きたい。何が貴女の機嫌を損ねたの? 自分はどんな地雷を踏んだの?》
《それこそ何か問題があったら、すぐ教えて欲しかったな。
当時の自分だったら、ほとんどのことはyesマンだったろう》
・・・友人正樹・・・
この当時、友人の正樹が頻繁に遊びに来て、淳子との仲をからかわれたことも
正樹もよく、離の自室に遊びに来てくれた。お互いの趣味であるラジオ工作談義の話で盛り上がったがなんの弾みか、彼女の話題になった。
交際している彼女がいることに少し優越感もあったのだが、
「淳子のことがなぜか好きなんだ」
というような、馴れ初めも少し、正樹に喋った。正樹は突然に、
「あ 外に淳子が来ている」
と言い始め、
「約束もしてないのに来るはずがない」
と答えても、
「いま木の影に隠れたので見えないが、来ている」
としつこく、外に出て見ることを勧めた。
そこまで言うならと自分はまんざらでもない気持ちで外にでて捜してみたが、彼女がいるはずもなく、からかわれたと気づいた時に正樹はしてやったりという顔で笑っていた。
半分本気にした自分が恥ずかしく、正樹は、淳子のことを話す自分を、自慢に聞こえて鼻持ちならなかったのだろう。
ルリ子から託された手紙の中身はずっとあとでルリ子に話させます




